Quirky(クァーキー)倒産から学ぶ製品開発の落とし穴

先日、クラウドソーシングを活用した製品開発手法を先駆けて取り入れ、様々なアイディア製品を開発・販売していたQuirky(クァーキー)という会社が倒産したというニュースが入ってきました。
以前に同社の成功要因についてブログを執筆していただけにとても衝撃的なニュースでした(Quirkyについて知らない方は是非下記のブログをご覧下さい)。

Quirky(クァーキー)の成功要因と日本での可能性について考える(前編)
Quirky(クァーキー)の成功要因と日本での可能性について考える(後編)

このようなブログを執筆しておきながらで恐縮ですが、今回のQuirky倒産からいくつか製品開発の落とし穴が見えてきたような気がしたので、再びQuirkyに関してのブログを執筆したいと思います。

今回のブログ執筆に当たり、きびだんごさんが書いていた下記の記事も参考にさせていただきました。

米Quirkyが倒産・現代版モノづくり1.0の終焉?

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【執筆者紹介】徳山 正康
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徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から一部上場のメーカーまで、累計1,000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

【寄稿実績】
間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(MONOist)
精密板金企業が「Webでの引き合い」を売上につなげることができた、たった一つの理由(ビジネス+IT)
製造業のSEO対策を基礎から解説、「加工事例」が超重要なワケとは(ビジネス+IT)
製造業の「技術マーケティング」戦略、事例で読み解く自社技術の可能性を広げる方法(ビジネス+IT)
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本気度を持った支援者(ファン)を集める

Quirkyでは製品化の可否をユーザーの人気投票により見極めていました。これはインターネットを使うことで素早く消費者の声を集め製品化に反映させる、といった意味で画期的な手法だと思います。しかし、これらのユーザがどれほど本気度を持って投票していたか、ということが問題になったのだと思います。

昨今、様々な企業がアンケート調査などをおこない、売れる製品を開発しようと必死になっていますが、顕在化したニーズに対する製品は世の中に溢れており、従来の顧客調査手法ではなかなか潜在的なニーズにまでリーチすることが難しくなったと言われています。そのような環境下、Quirkyの仕組みの中で本気度の高い支援者からの真摯な声を集めることは難しかったのかも知れません。

そういった意味では購入することを前提に支援(投票)するクラウドファンディングのような仕組みの方が、テストマーケティングという意味ではより高い機能を果たすのだと思います。

薄利多売でなく、少数で高付加価値な製品開発を

次に開発した製品と販売チャネルの問題です。インターネットからアイディアを募り作られるような製品は、ニッチな市場を狙うからこそ面白いのではないかと、私は思っています。わざわざ投稿してくるような尖ったアイディアは、面白いけど万人受けしないものが集まりやすいと思うからです。

巨大なマーケットを狙うのは大手企業の仕事で、Quirkyのような仕組みから生まれる商品は、ほんの一部の人に支持されるような高付加価値なものの方が向いているし、ベンチャー企業が主戦場とすべき市場ではないでしょうか。

Quirkyの場合、ウォルマートのような大手小売店を販売チャネルに使っていたようですが、アイディアをクラウドソーシングで集め、アイディア発案者とプロフィットシェアした上で全ての製品開発を自社内で行うQuirkyにとって薄利多売なビジネスを行うのは収支構造上無理があったのでしょう。

たくさんの投資家から資金を集め、早期事業拡大を迫られていたと考えられるQuirkyにはこの道を選ぶしかなかったのでしょうか。生産工場まで自社内で所有したことが同社の大きな強みでありましたが、製品が想定よりも売れなかった場合のリスクが共存していたことは言うまでもありません。

情緒的価値を訴えられる製品づくり

ブランド価値を向上させる上で勝負するポイントを誤っている可能性もあるのではないかと感じました。インターネットから募ったアイディアはおそらく言語化できるものばかりだったはずです。
“言語化できるアイディアで勝負する”=”機能的価値で勝負する”、ということになるかと思いますが、日本で売れているベンチャー企業の家電製品などは機能以上にデザインなど情緒的な価値に訴えかけるような製品が多いように思います。

ブランド価値でいえば機能的価値よりも情緒的価値の方が高いと言われているので、より高い利益率で商品を販売していくことができます。情緒的価値は「○○で△△だから購入する」といったロジカルな思考(自身の購買行動を正確に説明できるもの)ではなく、何となくカッコいいから、何となく共感できるからといった自身でも説明できない感覚的な場合が多いはずです。それをインターネットという限定的なコミュニケーションしかできない場でどのように拾いブラッシュアップしていくかはとても難しい問題だと思います。

 

今回のケースは「インターネットという便利なツールを活用した製品開発」に関心を持つ方々にとって、とても考えさせられるものだったと思います。私もその中の一人として、今後製品開発を行う方へ少しでも役立つ情報が提供できればと思いブログを執筆しました。少しでも役に立てば幸いです。

この記事の執筆者
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徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から一部上場のメーカーまで、累計1,000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

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