町工場発のこだわり雑貨「鯔背家」~製品ではなく商品~(前編)
こんにちは、ものづくり経革広場の渡部です。
以前に株式会社山崎製作所の取材で、「大社の杜 みしま」の鯔背家(いなせや)という町工場発のこだわりの雑貨屋で販売を始めたという事を書かせて頂いたのを覚えている方はいらっしゃいますでしょうか?
女性目線の商品開発、精密板金加工で和のテイストを~株式会社山崎製作所~
https://keikakuhiroba-mfi.com/archives/7709
実はあの後、その取り組みが気になり、どんな方がやっているんだろう?製造業の方なのかな?と思って、店主のプロフィールを拝見したら、
「こんにちは、鯔背家(いなせや)店主の山本豊と申します。実は私の本業は伊豆のわさび屋なんです。」
えっ!?わさび屋さん?
何と地元三島の食品会社の社長がこの雑貨屋を経営されているというのです。
という訳で、今回は鯔背家店主であり、株式会社山本食品の代表取締役社長である山本豊様に取材をさせて頂きましたので、その内容をお届します。
きっかけは異業種交流会から
ー食品会社の社長が店主とお伺いして意外だったのですが、はじまりは何だったんでしょうか?
某金融機関の若手の異業種交流会からです。食品会社を営んでいますが、40歳過ぎて何か地元でも商売をしたいと感じていたころ、声がかかったんです。しかも会長やってくれって。
ーいきなり会長ですか?
最初はあまり乗り気ではなかったんですが、やるなら本気でやろうと思って。それで、会長やるからと二つ条件をつけたんです。一つは、会長の自分の好きにやらしてもらう事。もう一つは、予算を飲み代には使わない事。飲み会はやるけど全部自腹。異業種交流会っていろいろありますけど、結局飲み会だけの会って多いじゃないですか。やるからには何か形に残るものをしたかったんです。
ー確かにそういう会って多いですよね。でも会の中で反発って多かったんじゃないですか?
そりゃ多かったですよ。というより、いなくなっちゃいましたね。1回目の集まりは60人ぐらいいたんですけど、2回目には20人にまで減っちゃって。
ー20人って、1/3じゃないですか。
でもその分、本気で何か形を残したいって思っている人が残ってくれて、結果良かったかなって思います。
予算のつかない中での活動
ーその異業種交流会の中で鯔背家が結成されたんですか?
実際に始まったのはもう少し後のことです。最初はセミナーの講師を呼んだりして、活動をしていたんですけど、ある時、2期目を結成するから、この会はもう終わりねって言われたんです。
ーえ!?そんな・・・。
でも、本当に良い会で、それで終わりにしたくなかったから、自分達で資金を出し合って活動を続けていたんです。でも予算もそんなに無いから、大した活動は出来ない。そんな中で製造業の方もいらっしゃったので、工場見学会を始めたんです。そんな中サンプル品を見て思ったんです。こんな素晴らしい技術を持っているんだから、商品にしたら売れるんじゃないか?って。
最初に作ったのは、ボルトをワイヤーカットで切っただけの物
ー何を作られたんですか?
私が最初に製造業の方にお願いをして作ったのが、このカード立てです。
ワイヤー放電加工切り出しカード立て(1500円)
ワイヤー放電加工切り出しカード立て(展開時)(1500円)
ーこ、これってボルトをワイヤーカットで切っただけですよね?
そうです。でも、ワイヤーカットの精密な加工技術が無ければこの商品は成立しない。普通に一般の人が切ろうとしたら、切るのも大変だし、切れたとしても、切り子が出すぎてカード立てには隙間が広すぎる。ワイヤーカットでしかできない商品なんです。
ーそうですけど、う、売れたんですか?
加工を依頼した製造業の方も同じ様なことを言ってましたよ。「こんなもの、本当に売れるのか?」って。幸い観光業に近い事をやっているので、経営している店舗に置いたら、それはもう売れましたよ。男性ってこういう工業系の物をデスクに置くのって結構好きじゃないですか。
ー確かに!私もこういうものがデスクにあると楽しいです。
私も商人としてずっとやってますから、勘は鋭いんですよ。
快進撃を続ける鯔背家。更なる製品の販売のエピソードと商売の本質とは何かについて。山本社長からの製造業の方々へのメッセージは次回にお届けします。
大社の杜 みしま
http://taishanomori.jp/
鯔背家
http://www.yamamotofoods.co.jp/inaseya/
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