クラウドソーシングを活用した新時代のイノベーションの起こし方②

ものづくり経革広場の徳山です。

かなり間が空いてしまいましたが、前回取上げた「クラウドソーシングを活用した製品開発・ブランディング」について、事例がいくつか出来上がって参りましたので、ご紹介できればと思います。

【執筆者紹介】徳山 正康
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徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から一部上場のメーカーまで、累計1,000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

【寄稿実績】
間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(MONOist)
精密板金企業が「Webでの引き合い」を売上につなげることができた、たった一つの理由(ビジネス+IT)
製造業のSEO対策を基礎から解説、「加工事例」が超重要なワケとは(ビジネス+IT)
製造業の「技術マーケティング」戦略、事例で読み解く自社技術の可能性を広げる方法(ビジネス+IT)
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中小企業のイノベーションとは

事例をご紹介する前に「中小企業にとってのイノベーション」とはどのようなものかを考えたいと思います。少し古い情報ですが、2003年の中小企業白書によれば、中小企業のイノベーションの特徴として下記3つがあるそうです。

〔1〕 経営者が、方針策定から現場での創意工夫まで、リーダーシップをとって取り組んでいること。
〔2〕 日常生活でひらめいたアイディアの商品化や、現場での創意工夫による生産工程の改善など、継続的な研究開発活動以外の創意工夫等の役割が大きい。
〔3〕 ニッチ市場におけるイノベーションの担い手となっていること。

それに対し、外部環境はどのように変化してきているでしょうか。

〔1〕世の中の変化が早くなり、スピード経営(迅速な意思決定)が不可欠。
〔2〕消費者ニーズが細分化し、ニッチ市場が多く生まれてきている。
〔3〕ソーシャルメディアなどの普及によって、ニッチ市場へのアプローチ(マーケティング)が容易になった。

上記特徴と外部環境の変化を見比べると、中小企業がイノベーションを起すのに有利な環境が整いつつあるように感じます。大きなイノベーションを求める大企業よりも、中小企業の方がイノベーションを起しやすい環境になってきているのではないでしょうか。

中小企業の経営者に、新製品の開発を行う際に一番不安なことは何か聞いてみると「販路がないからどれぐらい売れるか分からない」というものが多いように感じます。その不安に対し、今までは失敗は付き物だしやってみなきゃ分からない!で押し通してきましたが、リスクは低いにこしたことはありません。

リスクを抑える方法として「売れる見込のある顧客を販売前にどれだけ確保できるか」ということが考えられます。今回のクラウドソーシングによる製品アイディア募集を行った結果、リスク低減につながる糸口を掴めたような気がしたので、いくつかご紹介したいと思います。

事例① ダイヤモンド鍍金技術の用途開発

スクリーンショット 2015-04-12 10.08.58【クライアント情報】
会社名:ジャスト株式会社
住所:山形県上山市
事業内容:各種めっき加工

 

 

【クライアントが抱えていた課題】
・当技術はエンドミルや医療器具で使われているが、メーカーとの共同開発品のため、同社の名前を出すことは許されない。
・当技術に「UDC PLATING」というブランドネームを付けて、ブランディング確立を行いたいと考えており、その中で自社製品展開は必須。
・自社製品を開発し展開していくためには、上述した製品以外の開発品が必要。しかし、なかなか用途開発の為のアイディアが思い浮かばない状況が続いていた…

上記課題解決を目的にクラウドワークスで下記募集を行いました。
めっき技術を活用した製品開発アイディアを募集します!

【その結果】
・募集期間2週間で全153件の用途開発アイディアを獲得することに成功しました。
・A評価12件(8%)、B評価25件(16%)、C評価115件(76%)という評価。
※A→即実践可能なアイディア、本格的に取り組んでいきたい B→実現可能性がありそう、もう少しアイディアを煮詰めたい  C→実現不可能
・具体的な開発案件を持っている方とのマッチング(優秀者)ができました。

【所感】
・BtoBでしか使われていない技術のアイディア募集だったため、的外れな提案が多かった。研究開発特化型のクラウドソーシングサービスが出てくるのに期待したい。
・その中でもメーカー従事者と思われる方からの提案がいくつかあり、BtoBの開発案件に繋がるものがあった。
・既に用途開発されている分野の提案も少なくなかった。用途が開発されていない新しい技術を題材とした方が更なる効果が期待できそう。
・相手に技術の内容を分かりやすく伝える手法(ライティング、画像、動画…)がとても重要。限られた手段の中で、いかに相手の発想力を広げられるか。

といった感じでした。今回はBtoB寄りの技術すぎたということで、次回は一般の方でも答えやすい題材を用意しようということになり、下記の「アクリル転写ブロック技術」でアイディア募集することにしました。

大田区の町工場の挑戦!アクリル転写ブロック技術の製品化

こちらはまた次回のブログでご紹介したいと思います。

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徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から一部上場のメーカーまで、累計1,000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

【寄稿実績】
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