~日本の美しい工業製品を身近なものに~松村鋼機の自社製品開発ヒストリー
製造業経革広場の井上です。
中小製造業の自社製品開発の取り組みについて、神奈川県綾瀬市の松村鋼機様を取材させて頂きましたのでご紹介致します。
同社は自動車関係の止め輪の生産会社として事業を始め、現在は長年培ったコイリング技術を応用し、スクロウエイブスプリング(波形圧縮バネ)の製造販売をしている会社です。今回「ウェーブクリップ」というデザイン性と機能性に非常に優れたクリップを自社新製品として開発、販売をはじめました。
製品開発に至る過程から開発後の販売手法まで代表の松村様と、開発・営業責任者の斉藤様にお話を伺いました。
この記事の目次
Q- 開発のきっかけはなんだったんでしょうか??
松村社長:リーマンショックの影響が一番大きかったと思います。それまで右肩あがりだった売り上げが急激に落ち込み、なんとか取り戻しつつも毎年コスト低減に協力し続ける日々、このままいったらどうなるものかという不安が非常に大きかったのを憶えています。将来にわたって利益を出せる商品を何とか作っていかなければという思いが一番のきっかけです。
Q- どのようにしてこの商品は生み出されたんでしょうか?
松村社長:自社新製品を作りたいということで、製品開発会議を社内でおこないました。機械部品をばらしてみたりして、色々話しあったんですが、なかなか案が出てこないんですよ(笑)。みんな受注生産の体制に慣れてしまっているから、お客さんの欲しい商品を考えるということとは全く逆の立ち位置ですからね。 しかも、大きな設備投資はしない条件もつけていましたから。つまり、既存の設備で出来る新製品を考えろと。
四苦八苦している中で展示会に出展した際に、美大生がうちの波形圧縮ばねの造形がきれいと言ってくれたんですね。これはバネの機能性ではなく、デザイン面についてを考えると面白いなと思いました。
弊社の圧縮バネは従来の半分の自由長で同じ荷重が実現できる製品でした。ついその機能性に目がいってしまっていたのですが、一般の方はそんな情報は必要なかったんです。
Q- その後の製品の販売まではいかがでしたか??
担当斉藤様:いや~大変でしたよ、なんとかモノは出来たんですがどうやって売ればよいかわからない状態です。宣伝や営業に走りまわりました。色々やりましたよ。
①下北沢で雑貨屋さんへ飛び込みをやってみたり・・・
出来た製品を持って直接飛び込みました。良く言われたのが「問屋さん通すといくらなの?」です。工業部品メーカーですので商品の流通の仕組みがわかってませんでした。自社の販売価格を伝えても意味がないんです。利用している問屋さんを紹介してもらい、そこからのルートを作らないといけないことを学びました。
②東急ハンズで店頭販売をさせて頂いたり・・・
製品と一緒に販売員を置いて売りました。成果としては良かったんです。また、自分たちが一から作った製品を買ってくれたことが嬉しかったです。でも言われたことは、「人を置かないと売れない商品は置くことは出来ないよ」と。確かに、ずっと人がつかなければいけないとしたら無理ですよね。もっとわかりやすく使い方をイメージ出来るようにしなければと、改良を加えました。具体的には、まだ武骨なイメージだったため、金属だけで作られていたのですが底の部分に黒い樹脂の底板をはめました。また、製品を入れるための箱もデザインし、説明書も作成しました。そこまでしてやっと製品になってきたかなと。
③テレビ等の取材へのアプローチ
最初は「トレたま」さんでしたね。応募フォームがあったためそちらから自ら応募し採用されました。そこから、他の色々な取材も自然に来て頂けるようになりました。新聞に載った時は飛ぶように注文が来るのではと構えたこともありましたが、そんなに甘いものではありませんでしたね(笑)
色々なことに取り組むことで勉強しながら、細々ですがなんとか定期的な売り上げにつながるようになってきたかなと。
井上:すごいですね。作ってからのその営業力が一番のポイントですね。なかなか真似出来ないと思います。
担当斉藤様:うちの会社は失敗を恐れずチャレンジできるところが良いところだと思います。成果ばかり求められると、動くにしてもリスクを考えてしまい動けなくなってしまいます。そこを考えずに挑戦しろという体制があるからこそなんでも出来るのだと思います。
Q- 何か製品開発により社内で変わったことはありますか??
松村社長:現場の人間が少し嬉しそうでした。普段、作っている製品はコストカット・効率化を求める製品で、1個数銭~数円程度なんですよ。それを製品にして1,000円とかで売ろうとしたものですから、最初はそんな値段で誰が買うんだという雰囲気でした。それが1個1,000円とかで売れるものだから社内では驚きとともに少しずつ協力的になってきたかなと思います。ユーザーに直接使ってもらえる商品を作っているというのもモチベーションにつながりますね。
Q- 今後の取り組みのご予定は??
松村社長:もう色々やってますよ。4月から産学連携で進めている案件があります。
また、新製品で自転車用のサスペンションも開発し販売しています。従来の樹脂のものにくらべ、耐久性とデザインに非常に優れたものとの評価を受けています。
こだわる人には大人気ですよ!!
Q- 最後に自社製品を作ろうとしている方にアドバイスがあれば・・・
松村社長:すぐに成果を求めないことだと思います。
10年15年先の商売のタネを育てているようなイメージです。目先の損得ばかりに目がいってしまうと、営業や宣伝にかかる経費すら出せなくなり費用は抑えられても、目的を果たせなくなると考えています。ただ、そのためにはあくまで本業でしっかりと利益を確保する必要があり、製品開発に頼り過ぎないバランスが必要だと思います。
まとめ
作ってからが勝負!!未経験だからこそ、失敗から様々なことを学び独自に販路を切り開いていく、柔軟な製品改良から販売促進に、かける思いと行動に情熱を感じる会社様でした。今後のさらなる活躍を期待します。松村社長、斉藤様、ご協力ありがとうございました。
ウェーブクリップがが気になる方へ
http://www.waveclip.net/
ウェーブクリップ 使い方動画
https://www.youtube.com/watch?v=JH6Fzx5NaYU
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