クラウドソーシングを活用した新時代のイノベーションの起こし方①
昨年の3月に「中小製造業の技術ブランディングを支援し、海外で戦える企業を増やす」ことを目的にブランディング研究会を立ち上げ、丸一年が経とうとしています。その経験から得た知見をもとにブログを何本か連載してみようと思います。
研究会では中小製造業のブランディング支援を行いながら、ブランディングを行う上で必要なものは何かを考えて参りました。その中で、中小製造業は競争優位性の高い要素技術を持ちながら、用途開発(その技術を使ってどのような製品開発ができるのか)が十分にできていないケースが多く、それが自社製品開発時の大きな課題となっていることが分かりました。
今まで多くの中小製造業が大手メーカーの下請けの仕事を行っており、頼まれたものを忠実に作り上げることを得意としてきましたが、自ら何かを生み出すという活動を行った経験などないのですから、用途開発が苦手とするのはしょうがないことなのかもしれません。
そういった経験の中から、技術ブランディングを行う上で必要な要素はいくつかあることが分かってまいりました。
技術ブランディングに必要な3要素
我々は過去の活動の中からブランディングに必要な3要素というものを提唱しています。
・用途の幅広さ
幅広い用途を持つ技術は様々な製品を生み出すことができ、結果ブランド認知を高めることにつながります。
・技術の優位性
競争優位性の高い技術であるかどうかです。中小企業の場合、ニッチな領域でも良いのでナンバーワンの技術を持つことが重要です。
・プロモーションの卓越さ
良い製品であってもプロモーションが杜撰だとブランドを広めることができません。
・ブランドシンボル
ブランディングというとロゴやキャッチコピーの作成をすることと語られることも多いのですが、ここでは上記3要素の潤滑油的な役割であると考えています。
大手企業は巨大な資本力を使い、この3要素を満たしてきました。
多額の研究開発費を使い技術開発を行い、大規模な市場調査により用途開発を行う。そして、マスメディア広告を使って幅広い顧客へプロモーションを行います。
このようにブランディングには多額の資金を要する、という認識が一般的で、中小企業が真似をするのは少しハードルが高すぎました。
ところが、多くの便利なツールの登場により、小コストでブランディング活動を行うことができるようになったと感じています。
Webサイト、ソーシャルメディア、動画などの活用により、最低限のコストでプロモーション活動に成功している中小企業の事例は数多くなってきました。
しかし、これだけではブランディング活動の一部分である”プロモーション”しか担うことができません。
そこで登場するのがクラウドソーシング
クラウドソーシングとは、不特定多数の人の寄与を募り、必要とするサービス、アイデア、またはコンテンツを取得するプロセスのことです(出典:Wikipedia)。
クラウドソーシングの活用によって、残り2つの要素を補填できる可能性が非常に高いのです。クラウドソーシングでオープンイノベーション的な使い方ををすることで、最小限のコストかつ最大のスピードで技術の用途開発や新たな製品開発のネタを集めることができます。
中小企業のような少人数組織では、社内の人的リソースだけで製品開発アイディアを考えるのは非常に難しいことです。そうなると社外のネットワークを活用することになるのですが、自社技術をもとにした製品開発アイディアを持つ人とたまたま出会うことは確率的に言うと非常に低いはずです。しかし、多種多様な製品が溢れる世の中で、自社内よりも社外にイノベーションの種は転がっているものです。
多種多様なバックグラウンドを持ったユーザから製品開発に繋がるアイディアをブレーンストーミングしてもらえる機会は、クラウドソーシングのような仕組みがなければ簡単に創り出せるものではありませんでした。
ブランディング研究会では、クラウドソーシングを製品開発やブランディングに活用するための活動をいち早く行って参りました。
その結果、中小企業の強みを活かし、弱みを補填する存在であることが分かってきました。新しい時代でイノベーションを生む手段としてクラウドソーシングを活用したオープンイノベーションは欠かすことのできない手段です。
知的財産戦略との葛藤でなかなかオープンイノベーションに踏み出せない大手企業に比べ、中小企業であれば経営者の判断一つで取り組むことができます。
次回のブログではクラウドソーシングを使って用途開発を行った具体事例をお話したいと思います。