良いものづくりに必要な力とは?プロスカイダイバーと製造業社長を両立する久保安宏氏に聞いてきた
製造業で輝いて働いていらっしゃる方々をご紹介していく、この新企画。記念すべき第1回目を飾るのは、株式会社クボプラの久保安宏社長です!
プラスチック加工会社社長の他に、なんとプロのスカイダイバーでもあるという、異色の経歴をお持ちなのです。一見、全く別ものだと思われる2つの職業ですが、両方に共通して久保社長の「良いものづくりへの情熱」が生きているのでした。
社会人歴が浅い私、鈴木も、今後仕事をしていくうえで非常に大切なことを学ばせていただきました…!
この記事の目次
結果を残すのに必要なのは「マネジメント力」
―20歳からスカイダイビングを始められ、その後、27歳で社長を継がれることになったそうですが、全く違う環境はやはり大変でしたか?
継ぐ気もなかったから、最初1年くらいは苦しんだね。全く1度も踏み入れたことのない会社だったから、人の会社をどうしたらいいんだ、って。だけど1年くらいたった時に思ったんだよね。
「そんな風に考えていると俺の人生は人のものになっちゃうな」って。俺の人生だから俺のやりたい風にやっていいんじゃないか、って。
もともと営業の仕事を経験していて、お金を稼ぐことはすごく得意だったし。会社を経営するためのマネジメント力はスカイダイビングでやってたことと、けっこう共通した力だからさ。
―スカイダイバーとしてのマネジメント力は、どのような場面に発揮されるのですか?
俺が初めて世界選手権に日本チームを連れて行ったんだけど、どうすれば世界へ行けるかっていう過程を築いていけるかどうか。世界選手権に出るためには、まず練習が必要。さらに練習にはお金が必要。お金はどうするか?練習内容はどうするか?って、すごく考えてた。何でも、「できませんでした」って言ったら終わりじゃない。それじゃ意味ないし、どうすれば実現できるかが大事。
若い時代からリーダーとしてやってこれたのは、技が得意っていうのもあったけど、他の人に比べてマネジメント力が長けていたと思う。
ギネス記録を2つお持ちの久保社長。3000mの上空から先にパラシュートを空中に投げ落とし、それを追いかけて空中で捕まえて装着し開く。これを50秒で成し遂げ、最速記録として認定。もう1つは400人が同時にダイビングして手をつなぎ、史上最高人数として認定された。
―「やりたい風にやればいい」と発想の転換をされたとのことでしたが、どんな会社を目指されているのでしょうか?
うちの会社は若い人が多いのね。まだ20代がいるから、少なくともあと30年は続かないとダメってことじゃない。だからある程度、会社は大きさよりも続けられてなんぼだと思ってる。
会社は経営者が1人でやっていける時代じゃないから、うまくコミュニケーションをとりながら社員1人1人の才能・実力を発揮していけたら企業が輝いて、これからも続けていける。言いたいことがあったら言うし、逆に何かあったら言ってくれっていつも話してる。
あと、大切なのは社長が社員を信じること。やっぱり自分だけでやってちゃだめだし、社員に託したうえで、どういう根拠でそういう売上が挙げられるのかという話し合いの場をもつことが大切だと思うわけ。社員も自主性を持てるようになるし、自信がついてくるから人が育つ。
そうすると成果がでるから人間関係としても、お金としても、対価をあげられるから、会社が良いふうに回転していくんだと思うんだよね
展示会での久保社長。スカイダイバーの時と雰囲気が全くちがいます。
地球上で最も過酷な環境での挑戦
―スカイダイビングでは最近はどんな挑戦をされたのですか?
フィリップスのシェーバーのCM企画で、「地球上で最も過酷な環境でシェービングをする」という挑戦があって、ベースジャンプをしながらヒゲを剃る撮影をしてきました。
スカイダイビングは高度数千メートル上空から飛び降りるんだけど、ベースジャンプは身近な建物や断崖から体ひとつで足から飛び降りるの。高さがなく建物とかが見えて落ちているのがよくわかるから、よりスリリングな映像が撮れるんだよね。
ビルの上から飛び降りながらヒゲを剃るなんて、間違いなく世界初だからわくわくしたよ。
「地球上で最も過酷な環境でシェービングをするチャレンジャー達のアツイ戦い」というコンセプトで撮られた映像が以下でご覧になれます!どのチャレンジャーがより過酷な環境で髭剃りをしているか…?というネットでの一般投票の対決で、久保社長は見事予選を突破し、決勝戦に進出しました!決勝の投票期間は1月中旬まで。毎日投票が可能ですので、応援よろしくお願いします!
http://www.japan.philips.co.jp/shaver/featured/9000series/extreme/shaving/final
簡単に撮れないから面白い
―スカイダイビングと製造業の社長業で共通していることってありますか?
うちのプラスチックの加工の仕事もスカイダイビングの仕事も同じなんだけど、みんな、プロとしてやらなくちゃいけないから、それだけ洗練させた新しいものを求められる。分野が全然違うのであろうと、結局は同じだよね。
―「洗練された、新しいもの」をつくる秘訣とは何ですか?
いいものをつくろうと思ったら、やる前の構成やブレインストーミングとかがすごく大切。
どんな風にやろうか。こういう部分をどうしようかとか…実際やる前に、時間をかけて考えて、ちゃんと想像して、かたちにできたものはそれだけ良いものができるし、みんなにうける。
会社でよく言うのは、新しいことを持っていなくていいけど、新しいことを知っておけってこと。うちの技術の全てはこの世の中の新しいモノをつくるための中の部品として組み込まれているパーツだから、新しいものができることによってわれわれは生活ができているわけ。絶えず我々も新しいものを知って、新しいものをつくっていかないといつか食えなくなる時がくる。
新しい材料や、難しい材料に対しての加工に挑戦していくことで、できる範囲が広がってくる。同じことをやっていたら終わっちゃうよね。
―フィリップスのCMもそうやってつくられたのですか?
そうだね。今までたくさんのスカイダイビングに関するTV企画を作ってきたんだけど、TVってすごくたくさんの素材を取った中で、ほんの一部を使うんだよね。そうすると、その素材の中で密度の濃い、良いものが選べるじゃない?これがすごく大切で、カメラ位置から何まで全て考え尽くされてできているの。
フィリップスのCMだったら、シェーバーの軽さを表現するための手のショットとか。パフォーマンスの新しさとか。
逆に、簡単にできちゃいけないんだよね。簡単に撮れないからこそ、面白いわけじゃん。
生きていくために大切なのは「新しさ」
―久保社長のお話を伺って、常に新しいものを追い求められている姿勢が印象的です。
ずっと同じことをやっていると飽きられちゃうんだよね。スカイダイビングの技術も製造業の技術もいつまでも同じだとだめで。だから思い切ったキャリアチェンジや投資も必要になってきたりする。常に時代に合ったものを求めていかないといけないよね。
今でも自分が新しく何ができるか考えてるんだよ。
―最近、できるようになったことってありますか?
49歳から50歳までの1年間、利き手と逆の、左手で生活をしたら両利きになった。箸の持ち方がどうにもこうにも、ずっと下手だったから左手なら正常に持てるんじゃないかって思って。全てを左でやってきたらいつの間にか左の方がいろいろ上手くなってきて、右手でも箸が普通に持てるようになった。今は両方つかえるの。苦労とも思わなかったね。今じゃ当たり前だから。当たり前ってことはすごく便利ってことだから、いつになってもそういうのは作れるってことだよね。
―1年間も左利きで過ごすなんて…!(驚)公私共にチャレンジャーですね!
良いものづくりに大切なのは、絶えず新しいことに挑戦すること。良い会社づくりや結果を残すために必要なのはマネジメント力、と語ってくださった久保社長。常に成長し続けることを目指すその姿は、非常に輝いていました。
久保安宏 社長:プロフィール
20歳でスカイダイビングを始めて以来、32年間で1万2000回以上のジャンプを重ねているレジェンド。多くの世界大会で優勝を収めたほか、ギネス記録も多数持つ。同時に27歳からプラスチック加工会社の株式会社クボプラの社長も務め、まさに二足のわらじを履いてプロスカイダイバーとしても、製造業の社長としても新しい挑戦をし続けている。
公式ページ
スカイダイバーKubo Yasuhiro: http://www.skydiving.jp/
株式会社クボプラ: http://www.kubopura.com/