製造業ホームページ|デザインより前に見直すべき6つの項目(大手・中小企業別)

【執筆者紹介】廣常 絵梨奈
この記事の執筆者
廣常 絵梨奈
会社名:テクノポート株式会社(大阪オフィス)

表立つことは少なくとも、社会を大きく下支えしているBtoB製造業の技術・製品の奥深さ、ニッチさに強く惹かれテクノポートへ入社。
金属・樹脂加工等のサプライヤー企業から、自社製品を販売するメーカーまで幅広く支援。
商材の強み・商流の理解に特に重きを置き、顧客視点に立った施策を提案。

【経歴】
新卒で入社後、大阪オフィス責任者として近畿圏の製造業Webマーケティングを支援。
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テクノポートの廣常です。自社のホームページを見直す際に、「デザインが古くなってきたから新しく作り替えよう」などと、デザインを起点にリニューアルを考えることがあるかと思います。

ですが、ここでデザインを考える前に見直していただきたい項目がいくつか存在します。当記事ではこれらの項目を、製造業の企業規模別(大手・中小)に掘り下げてご紹介します。現在、自社ホームページのデザイン見直しを考えている方向けのチェックリストとして活用いただければ幸いです。

「まずデザインを変える」は間違い

「訪問者数を増やしたいから、現状の古いデザインを変えよう」
「問い合わせが来ないのはホームページの見た目が古いからだろうか?」

自社のホームページを見直す際、このようにデザインベースで考えたことはないでしょうか?

デザインは直感的に取りかかりやすく、目が向きがちです。しかし、一番最初に考えるのは避けるべきだと考えます。これは製造業のホームページ上での課題(訪問者数が増えない、問い合わせが来ないなど)が、デザイン以外の側面によることが多いためです。

「訪問者数を増やしたいから、現状の古いデザインを変えよう」

→ デザインを変え、新しくサイトを制作すればおのずとアクセス数が増えると捉えている方もたまにいらっしゃるようなのですが、ここに直接的な関係はありません。

アクセスを増やすには、検索時に上位表示させる、広告を出すなど、別途集客対策を行う必要があります。

「問い合わせが来ないのはホームページの見た目が古いからだろうか?」

→ 極端な話をすれば、デザインがいくら古いままでも、発注者が必要とする情報が掲載されており、加工条件などが合いさえすれば問い合わせは獲得可能です。

アクセスがあるのに問い合わせが来ず悩んでいる場合は、「発注者が求めている情報を十分に掲載できているか」「問い合わせまでの導線が分かりやすいか」などを見直し、改善する必要があります。

デザインより前に見直すべき項目

では、自社のホームページを改善するためにデザインより前に何を見直すべきか、以下に大きく6つにまとめました。
これらを見直すことで、まず改善すべきなのがデザインなのか、それ以外の要素なのかを判断することができます。

ホームページの方向性

  • 目的 ホームページを運営する目的は何か
  • ターゲット どういった人に訪問してもらいたいか

ホームページの導線

  • 集客方法 ホームページに集客させる仕組みが構築されているか(SEO・広告など)
  • 訴求内容 訪問者が欲しい情報、自社の強みを伝えられているか

制作・運営面

  • 更新内容 どんな内容で更新(情報発信)をしていくか
  • 制作・運営体制 内製か、外注か

これらの6つの項目をまず見直すことで、現ホームページの課題や、どこを優先的に改善する必要があるかが見えてくるかと思います。

個々の項目については企業規模(大手・中小)によって傾向が異なります。以下に、企業規模別に各項目について触れていきます。

大手製造業の場合

大手製造業の場合、ブランディングをホームページの目的とするケースが多く見られます。ホームページには自社の顧客だけでなく、株主や一般消費者など幅広い層の訪問者が想定されるため、各ユーザーに沿った内容を配信する必要があります。

事例1 クボタ

出典:株式会社クボタ

食料・水・環境に関する社会課題を解決していく姿勢を、画像やキャッチコピーなどを活用して効果的に表現。コーポレートサイトの他、企業理念をより深掘りしたスペシャルサイトや、製品用サイトを別に構築しています。

事例2 ライオン

出典:ライオン株式会社

「新しい⽇常の習慣を、もっとさりげなく、楽しく、前向きなものへ。」と消費者へ寄り添ったイメージを与えながら、製品情報や研究開発体制に関する情報を展開。投資家情報にはイラストやグラフが用いられ、分かりやすく解説しています。

ホームページの方向性

目的

まず、ホームページ運営の「目的」から見直していきます。大手製造業の場合、既に知名度が高く、顧客もコンスタントに獲得できている場合が多いため、下記のようにイメージ形成に関する目的がよく挙げられます。

  • ブランディング
  • 社会貢献性のアピール
  • 企業としての印象アップ

ターゲット

目的にあわせ、誰にホームページを見てほしいか、ターゲットを検討します。ホームページに訪問するターゲット層が幅広いのも大手製造業の特徴です。

  • 自社顧客
  • 株主・投資家 ※上場企業の場合
  • 一般消費者

ホームページの導線

集客方法

自社のターゲットをホームページへたどり着かせるには、そのための仕組みを構築する必要があります。幅広いターゲットが想定されるため、入口もさまざまです。

集客方法 概要
SEO 特定の検索キーワードで自社のページを上位表示
オンライン広告 リスティング、ディスプレイ広告などの出稿
SNS Twitter, Instagram, Facebookなどの運営
メールマガジン ホームページでの更新情報などを発信
セミナー、展示会 来場者をホームページへ誘導

訴求内容

ターゲットによって訴求内容も異なるため、ホームページの見せ方に工夫が問われます。訪問者がTOPページから必要な情報に飛べるようバナーやボタンなどで分かりやすく誘導したり、ターゲットごとに専用のサイトを立ち上げるのも一つの手立てです。

ターゲット 訴求内容
自社顧客 研究開発・イノベーション関連情報、顧客インタビュー、社会貢献や環境問題に関するコラム記事 など
株主・投資家 IR資料、財務情報、企業理念・特徴・業績、経営計画 など
一般消費者 エンドユーザーへの姿勢、メッセージ など

制作・運営体制

更新内容

どのような内容で更新(情報発信)をしていくかを考えます。ブランディングを目的とする場合、TOPページや会社紹介など主軸となるページを頻繁に更新することは少なく、新着情報や、投稿式のコンテンツ(インタビュー、コラム記事など)の更新が主となるでしょう。自社からのお知らせやイベント等をすぐに告知できるよう、動的に情報をアップできる箇所を設けることをおすすめします。

制作・運営体制

前述の全ての項目を踏まえた上で、ホームページ制作・運営を内製するのか、外注するのかを検討していきます。自社で更新作業を行う場合は、WordPressなどのCMSを導入することで専門用語の知識がなくとも気軽に更新することが可能です。上記で考えた「どのような内容で更新していくか」という面とあわせて、運営体制(方法)を考えていきます。

中小製造業の場合

中小製造業の場合、新規顧客開拓をホームページの目的とするケースが多く見られます。問い合わせ獲得につなげられるよう、ホームページでは自社が何の会社なのか、顧客の課題をいかに解決できるかといった特徴を明確に訴求する必要があります。

事例1 協友製作所

出典:株式会社協友製作所

摩擦攪拌接合という希少な加工をアピールするため、加工時の写真や、それによって提供できる価値をキャッチコピーで表現。その他、加工製品の事例や納品までの流れなど、顧客を問い合わせへ導くための訴求コンテンツを掲載しています。

事例2 昭和電器

出典:昭和電器株式会社

幅広い樹脂材の中でも、技術難度が非常に高い「PPS(ポリフェニルスチレン)」の成形にターゲットを絞り、TOPページで効果的に訴求。PPS樹脂とは?いった基礎知識を紹介するコラムやコストダウンの提案など、発注者側に合わせたコンテンツを提供しています。

ホームページの方向性

目的

まず、ホームページ運営の「目的」から見直していきます。中小製造業の場合は、ブランディングなどのイメージ形成よりも、もっぱら新規顧客開拓を目的とするケースが多く見受けられます。

ターゲット

目的にあわせ、誰にホームページを見てほしいか、ターゲットを検討します。上記のように顧客開拓・セールス目的の場合、どのようなユーザーに自社の技術・製品を売りたいかを考え、そのユーザーの属性まで想像していきます。

属性:「企業規模」「業種」「役職/役割」「課題/ニーズ」

ホームページの導線

集客方法

自社のターゲットをホームページへたどり着かせるには、そのための仕組みを別に構築する必要があります。加工・製造先を探しているユーザーはWeb上での検索や、展示会での情報収集がほとんどであるため、下記のような手段で優先的に対策していきます。

集客方法 概要
SEO 特定の検索キーワードで自社のページを上位表示
オンライン広告 リスティング、ディスプレイ広告などの出稿
セミナー、展示会 来場者をホームページへ誘導

訴求内容

自社の強みばかりでなく、発注者が求めている情報が何かを第一に考え発信する必要があります。発注者(顧客)観点で自社の特徴を考え直した上で、見せ方を工夫してみてはいかがでしょうか。

TOPページ
ホームページを開いて一番初めに目に入るエリア(ファーストビュー)で、自社が何の会社なのか、どういった価値を提供できるかを明記。

製品・加工事例
自社の対応範囲をイメージしてもらいやすいよう、製品や加工事例を掲載。事例内には顧客が抱えていた課題、要望に対して自社がどのように応えたかも記載。

技術解説
他工法との比較や、加工後の物性値データ、よくある質問など、自社技術を選定してもらうためにあらゆる切り口で訴求。

品質管理・納期・コスト
発注者側が気にするQDC面について、検査体制、短納期実績、コストダウン事例など、根拠とともに訴求。

以下の記事において、技術者や購買調達の担当者が製造業ホームページのどのような情報を見ているかをより詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。


制作・運営体制

更新内容

どのような内容で更新(情報発信)をしていくかを考えます。よく「新着情報や社内ブログだけ更新していればよい」と考える方もいらっしゃいます。しかし、そうした更新だけではホームページが動いている印象は与えられるものの、顧客開拓・売上拡大には大きくつながりません。検索流入を意識したページ作成や、訪問者に沿った訴求内容で定期的に更新をしていくことが重要です。

また、事業体制等の見直しにより、拡販していきたい製品や技術が変わる場合もあるかと思います。その場合には、TOPでの訴求内容やキャッチコピーを変えるなどの大きな改修も必要となります。

制作・運営体制

前述の項目を踏まえた上で、ホームページ制作・運営を内製するのか、外注するのかを検討していきます。特に中小製造業の場合は、別の業務と兼任でホームページを担当しているなど、リソースの確保が厳しい場合も多いかと思います。ホームページの運営を丸ごと任せる、一部のコンテンツ制作のみ外注する、アップロード作業のみ外注する……など、外注企業との付き合い方はさまざまです。その点も踏まえて、自社にあった手法を検討することをおすすめします。

まとめ

以上、6つの見直すべき項目をご紹介しました。

これらの項目を見直した上でデザインの雰囲気、内容を考えることをおすすめします。「誰に・何を・どのように伝えるか」を明確にしているため、ゼロからデザインの方向性を考えるよりもイメージがより湧きやすくなるでしょう。デザインを検討される方は、製造業ホームページのデザイン事例に関する記事もございますので、こちらもご覧ください。

この記事の執筆者
廣常 絵梨奈
会社名:テクノポート株式会社(大阪オフィス)

表立つことは少なくとも、社会を大きく下支えしているBtoB製造業の技術・製品の奥深さ、ニッチさに強く惹かれテクノポートへ入社。
金属・樹脂加工等のサプライヤー企業から、自社製品を販売するメーカーまで幅広く支援。
商材の強み・商流の理解に特に重きを置き、顧客視点に立った施策を提案。

【経歴】
新卒で入社後、大阪オフィス責任者として近畿圏の製造業Webマーケティングを支援。
廣常 絵梨奈 が執筆した他の記事をみる

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