中小製造業のためのWebマーケティング(ブランディング)
今回は中小製造業のWebマーケティング(ブランディング)の話をしたいと思います。
Webマーケティングというと、SEOだとかリスティング広告だとかアクセスアップの手法が中心になりがちですが、もっと根本的な部分から考える必要があります。
Web戦略は経営戦略と密接な関係がありますので、私はWeb制作の打ち合わせには必ず経営者の方に担当となってもらえるよう、お願いしています。
私のお客様を例にとって話を進めます。八王子市で「ノビナイト」という特殊材(低熱膨張材)の加工を行なっているティケイワイプロダクツさんの例で話をします。
http://www.tky-products.co.jp/
サイトをご覧頂いた通り、こちらの会社さんでは特殊技術であるノビナイト加工だけでなく、アルミの精密加工や旋盤加工も行なっており、売上の比率で言うと後者の方が大きいです。
WebサイトでPRするに当たり、ここで3つの選択肢が存在しますが、どれが正しいPR法でしょうか?
1、自社でできる全ての技術を満遍なくPRする
2、売上の多くを占める本業の技術を中心にPRする
3、特殊な技術を中心にPRする
もちろん市場調査をきちんと行なってから結論を出すべきですが、いつも私が勧めるのは3です。
理由を図示すると下記の通りとなります。
中小製造業のWebマーケティングでは、上記の図で言う「特殊分野市場」と「ニッチ市場」で戦うべきだと考えています。厳密に言うと、特殊分野市場を攻められるような恵まれた会社は少なく、ニッチ市場を見つける作業をお手伝いするケースが多いかと思います。
もちろん特殊過ぎる技術で全く世の中のニーズが無い場合は別ですが、中小企業のWebマーケティングの大原則として競合性の高い市場を攻めるのはNGと考えています。
競合性の高い市場で戦っているとどうしても競合と比較検討される可能性が高くなってきます。そうすると交渉する時間や交渉力が必要となってきて、営業リソースの不足する中小企業はどうしても不利になります。
逆に競合性の低い市場だと、競合と比較検討されにくいので受注率が高まりますし、価格競争に巻き込まれないので、利益率の高い仕事を獲得できる、というメリットがあります。
ボリュームゾーンをターゲットにするのは精神的には楽ですが、「何でもできます」というWeb戦略で成功した例を今までに一度も見たことはありません。敢えて特定の分野にターゲットをとことん絞るのがWeb戦略を成功させる大きなポイントと言えます。
そういった考え方により、ティケイワイプロダクツさんでは「ノビナイト加工」をイチオシにしたWeb戦略を実施することにしました。
ノビナイト自体は非常にニッチなキーワードで月間200~300件ほどのボリュームしかありませんが、下記のように「ノビナイト加工」で検索した際に、上位の大部分を独占しています。
ティケイワイプロダクツさんでは、自社ホームページの他にFacebookページや業界特化型サイトへの登録(NCネットワーク、イプロス)も行なっており、そのすべてで「ノビナイト加工」をキーワード対策の中心に使っています。
検索結果のクリック率は1位であれば23%近くありますが、2位6.48%、3位4.63%と下がり、10位で1.63%という結果があり、2ページ目以降はほとんど見られなくなります。
よって、1ページ目の上位を独占することは競合サイトとほとんど争うことがなく、「○○といえばこの会社」というブランディングが確立します。競争を避ける事こそ中小企業が採用すべき一番のWeb戦略と言えます。
このようにWebブランディングを成功させている中小製造業はたくさんいらっしゃいます。
チタン加工の西村製作所さん、メッキ加工の三和メッキ工業さん、アルミ微細加工の中田製作所さんなどが有名で、いずれの会社さんも特定のキーワードで上位を独占できています。
中小製造業のWeb戦略をまとめると下記のような感じでしょうか。
・どんなに狭い分野でも一番になることが大事
・需要の大小以上に競合の大小を基準にターゲットとする市場を決める
・自社ホームページだけでなく、Facebookページや業界特化型サイトなども活用し検索結果の占有比率を高める
ここまで書いて改めて思うのが、Web戦略と経営戦略を考えるときの考え方は非常によく似ています。自社の強みや経営資源の認識、競合会社の把握と差別化要素の考案、顧客のニーズとKBF(Key Buying Factor)の把握など、いわゆる3Cの考え方が非常に重要となります。
私もWebマーケティングの仕事を行う上で、経営学を学ぶことが必須であると日々感じております。なので、Web戦略を考えるのは間違いなく経営者の仕事なのです。
私も若輩者ながら一人の経営者ですので、他社のWeb戦略を考えることは非常に良い勉強になります。日々精進しながらさらに見識を深めていきたいと思います。