【メーカー】Webマーケティングで競合に勝つための差別化方法(素材・部品・完成品)

【執筆者紹介】廣常 絵梨奈
この記事の執筆者
廣常 絵梨奈
会社名:テクノポート株式会社(大阪オフィス)

表立つことは少なくとも、社会を大きく下支えしているBtoB製造業の技術・製品の奥深さ、ニッチさに強く惹かれテクノポートへ入社。
金属・樹脂加工等のサプライヤー企業から、自社製品を販売するメーカーまで幅広く支援。
商材の強み・商流の理解に特に重きを置き、顧客視点に立った施策を提案。

【経歴】
新卒で入社後、大阪オフィス責任者として近畿圏の製造業Webマーケティングを支援。
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テクノポートの廣常です。今回は、メーカーがWebサイトを経由して顧客を獲得するために重要な、集客の切り口や他社と差別化する上でのポイントをご紹介します。こうしたWebマーケティング戦略は、各メーカーの取り扱う商材(素材・部品・完成品)によって傾向が異なるため、商材の種類別に分けて解説します。

※本記事では「メーカー」=部材や製品を自社で製造・販売している会社として定義しています。

メーカーのWebマーケティングの流れ

メーカーは、取り扱っている商材別に以下の3つに分類することができます。

  • 素材メーカー
  • 部品メーカー
  • 最終製品メーカー

どのメーカーにおいても、大元となるWebマーケティングの手順自体は共通しています。その手順は以下の通りです。

<Webマーケティングの手順>

問い合わせ獲得後、受注に至るかどうかは各会社の営業活動や問い合わせの条件による部分が大きいため、Webサイト上で対策できる範囲としては「集客 → 訴求 → 問合せ獲得」までとなります。

この範囲の中で要となる「集客」「訴求」の2ステップを掘り下げて紹介します。

集客:検索キーワードの選定が重要

ここでの集客とは「自社のWebサイトへアクセスを集めること」としますが、この集客工程において重要なのは検索キーワードの選定です。その理由を以下に説明します。

まず、製造業系企業が自社のWebサイトへアクセスを集めるために、よく行われる施策は以下の2点です。

  • SEO対策:特定のキーワードで検索された際、自然検索のエリアに自社サイトを上位に表示させる(無料)
  • リスティング広告:特定のキーワードで検索された際、広告欄のエリアに自社サイトの広告を表示させる(有料)

どちらの手段にも共通しているのは「検索キーワード」の存在です。

皆さんもWeb上で何か情報を探す場合、必ずと言っていいほどGoogleやYahoo!等の検索エンジンを使用するかと思います。
これは企業がメーカーを検索する場合も同様です。
技術者や購買担当者が課題や製品に関する検索キーワードを打ち込み、メーカーを探し出します。

そのため、いったい自社製品がどのようなキーワードで検索されるのかを考え、顧客がそれを求めて検索した際に自社のWebサイトを露出させる(見つけてもらう)必要があります。

※今回の記事では、自社に当てはまる検索キーワードを具体的にイメージいただけるよう、メーカー種別に想定されるキーワードを列挙していきます。ですが、より漏れなく検討していくには顧客の購買フローに基づいて整理することをおすすめします。


情報収集から発注にいたるまでの顧客の状況、意図などを想像し、そこから検索キーワードを考えていくという流れです。

購買フローに基づくキーワードの探し方は以下に詳しく記載していますのでこちらもご覧ください。

「そもそもSEO対策・リスティング広告について詳細を知りたい」という方は、こちらをご覧ください。
■ SEO対策

■ リスティング広告

訴求:自社の差別化ポイントを明示する

集客活動によって獲得できたサイト訪問者に対して、次に必要なのが「訴求」です。

せっかく自社サイトを見に来てもらっても、内容に惹かれずにそのまま離脱されてしまうようでは意味がありません。この訴求工程でしっかりと自社の特長を伝え、問い合わせ獲得へとつなげていきます。

購買担当者や技術者は、Web上であらゆる媒体や企業Webサイトを閲覧し、自社の課題や要望を解決できる製品が無いかを探し出します。限られた時間と、膨大な情報量の中から自社に目を留めてもらうには、競合他社とは差別化された特長をWeb上で伝えていくことが重要です。

差別化を図る前に見直すべきこと

ここで、「では自社で差別化できる要素は何か?」と考える前に見直しておきたいのが自社製品の販売戦略です。

そもそも自社の戦う土俵が適切でなければ、いくら競合に勝とうとして差別化要素を考えても無駄に終わってしまいます。

現状思うように売上につながっていない製品も、狙いとする市場や顧客を変えて戦略を練り直せば成果を生み出せるケースも十分にあります。
自社製品を改めて見直し、Web上でどのように売り出していくかを再検討してみましょう。

市場

  • 既存製品を展開できそうな新規市場は無いか?

顧客

  • 没個性化を防ぐため、多業界でなく特定の業界に特化させた製品にできないか?
  • 既存顧客よりも大規模 or 小規模企業向けに発信するのはどうか?

顧客の再検討で効果があった事例(アコースティック・アドバンス)

弊社のお客様のなかで、自社が狙いとする顧客を再検討したことで売上につながったアコースティック・アドバンス様の実例を紹介します。

株式会社アコースティックアドバンスは、室内の反響音対策などに使われる吸音パネルの開発・販売を行っています。
多用途で活用でき、競合商品も溢れかえる中で、「保育園・幼稚園」に優先してターゲットを絞り、訴求していくことでWebサイトからの引き合い獲得に成功しました。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

メーカーにおける差別化の方向性

前述のように戦略を見直した後に、Webマーケティング上での自社の差別化ポイントを策定していきます。

差別化の方向性としては、大きく下記の3つが考えられます。

1. 製品での差別化

独自の機能性を有している、特許を取得しているなど、既に製品として大きな強みがある場合は差別化が容易です。その強みを軸に、サイトに訪れた技術者に対して伝わりやすい訴求をしていきましょう。

例 アベル株式会社

出典:アベル株式会社

事業内容:表面処理素材販売・ステンレス表面処理加工
自社素材である黒いステンレス材“アベルブラック”の優れた機能性、意匠性を、写真やイラストを用いてわかりやすく表現しています。

2. 生産能力やサービス面での差別化

自社の生産能力や製品購入後のサポート、アフターフォローといったサービス面で差別化するのも一つです。顧客がメーカーを検討する際の懸念や心理的なハードルを下げ、問い合わせへとつなげます。

例 三甲株式会社

出典:三甲株式会社

事業内容:プラスチック物流機器メーカー
自社グループの営業所、工場拠点の豊富さをTOPや企業情報にて訴求し、広いネットワークによる対応力を効果的に伝えています。

3. 訴求方法での差別化

規格品製造がメインの場合、同じ部品を扱っている会社と製品面で差をつけにくい場合があります。その場合は、Webサイト上での見せ方(デザイン・仕様)を工夫するのも効果的です。整然としたデザインや、製品検索機能などの追加によりユーザーに適切な情報を届けます。

例 有限会社井筒製作所

出典:有限会社井筒製作所

事業内容:ニッケル合金・チタン・ステンレスなどの製作・販売
TOPや取扱製品のページでは、六角ホースニップルをはじめとしたあらゆる部品が一覧でまとめられています。取り扱いサイズの豊富さや、品番の詳細がひと目でわかる構成となっています。

商材別に見るメーカーの集客・差別化方法

Webマーケティングにおける検索キーワードの選定、自社の差別化ポイントを明示することの重要性をおさえた上で、次は取り扱う商材の種類別に詳細の集客・差別化方法を見ていきます。

素材メーカーのWebマーケティング

ゴムやガラス、化学素材、紙などといった素材を製造する素材メーカー。素材は製品を形成するための大元であるため、汎用性が高く、想定されるターゲットも様々です。自社で想定しきれていない用途もあるかもしれません。

集客キーワード

素材が持つ広い可能性を活かし、あらゆる切り口から集客できるようにキーワードを検討していきます。

ターゲットが使うと想定されるキーワードの種類

  • 素材名
  • 基礎知識系
  • 機能性
  • 用途
  • 他素材との比較
  • メーカー探索

例:PEEK樹脂のメーカーを探している場合

  • 素材名:PEEK
  • 基礎知識系:樹脂 種類、PEEKとは
  • 機能性:高耐熱性 素材
  • 用途:ギヤ 樹脂 材料
  • 他素材との比較:PEEK PEKK 違い
  • メーカー探索:エンプラ メーカー、PEEK樹脂 メーカー

自社の製品名を認知していない方にも情報が届くよう、上記のように様々な観点のキーワードで自社サイトを露出させることが大切です。

差別化内容(特異な素材の場合)

独自の機能性を有している、特許を取得しているなど、既に素材として大きな強みがある場合は差別化が容易です。その強みを軸に、サイトに訪れた技術者に対して伝わりやすい訴求をしていきましょう。

差別化のためにサイトに掲載したい内容

<素材関連>

  • 素材の特長
  • グレード、提供可能な形状の種類
  • 類似素材との比較実験データ
  • 想定用途、採用事例

<素材以外>

  • サンプル品の提供(特異な素材を扱うことへのハードルを下げるため)
  • 研究体制

差別化内容(一般的な素材の場合)

一方、他社でも多く取り扱いがあるような、一般的な素材の場合は差別化が難しい場合があります。その際には自社のサービスや取引実績など他の面を訴求し、強みを補強します。

差別化のためにサイトに掲載したい内容

<素材関連>

  • グレード、提供可能な形状の種類
  • 異素材との比較実験データ(同素材と戦うのは厳しいため、異素材を例に挙げて代替提案をする)
  • 想定用途、採用事例

<素材以外>

  • 取引実績
  • 品質管理体制(検査体制、トレーサビリティなど)
  • 納品形態(追加工、組み立てなど)

※化学メーカーのWebマーケティングについては、下記により詳細の記事を用意しております。こちらもご覧ください。

部品メーカーのWebマーケティング

電子部品・樹脂部品など、製品を形づくる部品を製造する部品メーカー。素材よりも用途が限られてくるため、自社のターゲットを想定しやすいという特徴があります。

集客キーワード

部品となると材質や機能性のほか、製品としての精度も問われるようになります。顧客がどういった課題を抱えているか想像しながら、キーワードを検討していきます。

ターゲットが使うと想定されるキーワードの種類

  • 部品名
  • 材質
  • 機能性
  • 精度
  • 形状
  • 用途
  • メーカー探索

例:ギヤメーカーを探している場合

  • 部品名:ギヤ
  • 材質:ギヤ 樹脂
  • 機能性:ギヤ 耐久性
  • 精度:ギヤ m0.2
  • 形状:ギヤ インボリュート
  • 用途:自動車用 ギヤ
  • メーカー探索:ギヤ メーカー

差別化内容(特注製造がメインの場合)

特注製造がメインの場合、「どんな製品を製造できるか」といった生産能力に関する訴求が必要となります。

差別化のためにサイトに掲載したい内容

<部品関連>

  • 対応可能な加工精度、材質、サイズ、ロット数
  • 加工技術
  • 製造事例

<部品以外>

  • 納期、コストメリット
  • VAVE提案事例
  • 取引実績
  • 品質管理体制(検査体制、トレーサビリティなど)

差別化内容(規格品製造がメインの場合)

規格品製造がメインの場合、同じ部品を扱っている会社と機能性や仕様で差を付けられず、差別化が難しい場合があります。この場合には部品スペック以外の自社の特徴を掲載し、強みを補強します。

差別化のためにサイトに掲載したい内容

<部品関連>

  • 取り扱い製品のラインナップ
  • 対応可能なロット数
  • 製造事例

<部品以外>

  • 納期、コストメリット
  • VAVE提案事例
  • 取引実績
  • 品質管理体制(検査体制、トレーサビリティなど)

最終製品メーカーのWebマーケティング

自動車、電子機器、工作機械など完成品を製造する最終製品メーカー。素材や部品と比べて、最も用途が明確でターゲットが定まっているため、そのターゲットに向けて適切に内容を伝えることが重要です。

集客キーワード

最終製品に対し、ユーザーが抱える課題や要望は多岐に渡ります。想定されるキーワードの種類も様々です。

ターゲットが使うと想定されるキーワードの種類

  • 製品名
  • 用途
  • 機能性
  • 形状
  • 比較
  • メーカー探索

例:ディスプレイメーカーを探している場合

  • 製品名:ディスプレイ
  • 用途:車載用 ディスプレイ
  • 機能性:ディスプレイ 耐熱
  • 形状:ディスプレイ 薄型
  • 比較:ディスプレイ TN VA 違い
  • メーカー探索:ディスプレイ メーカー

差別化内容

最終製品となると、問い合わせが来るのは以下の2タイプが考えられます。

  • 実際にその製品を使用したいユーザー
  • その製品を活かし、協業や新製品の開発を考えているパートナー企業

製品を使うことでユーザーが得られる価値や、購入前の懸念を払拭するような内容、あるいは自社の製品企画・開発能力などを押し出していき、訴求していきましょう。

<製品関連>

  • 製品スペック
  • 課題解決事例

<製品以外>

  • 生産体制(設備、拠点数等)
  • アフターフォロー(定期メンテナンス等)
  • 品質管理体制(検査体制、トレーサビリティなど)
  • デモ機等貸出サービス(購入へのハードルを下げるため)
  • 企画、開発能力

まとめ

商材別(素材・部品・完成品)に、メーカーのWebマーケティングにおいて重要な「集客」と「訴求」の工程を掘り下げて紹介いたしました。Webサイトを通じた顧客獲得を狙う際の参考となれば幸いです。

この記事の執筆者
廣常 絵梨奈
会社名:テクノポート株式会社(大阪オフィス)

表立つことは少なくとも、社会を大きく下支えしているBtoB製造業の技術・製品の奥深さ、ニッチさに強く惹かれテクノポートへ入社。
金属・樹脂加工等のサプライヤー企業から、自社製品を販売するメーカーまで幅広く支援。
商材の強み・商流の理解に特に重きを置き、顧客視点に立った施策を提案。

【経歴】
新卒で入社後、大阪オフィス責任者として近畿圏の製造業Webマーケティングを支援。
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