製造業のクラウドファンディング活用事例15選

【執筆者紹介】小林(井上) 正道
この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
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製造業とクラウドファンディングは非常に相性が良く、受注生産や下請けに頼ってきた中小製造業においても、自社開発の新製品に挑戦する動きが活発化しています。

今回は、資金調達やプロモーションなど、様々なメリットが期待できる製造業のクラウドファンディングについて、活用事例を15選ご紹介します。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、Crowd(群衆)とFunding(資金調達)を組み合わせた造語で、インターネット上で個人や法人が製品・サービスなどのプロジェクトを公開し、不特定多数の支援者から資金を調達することです。

クラウドファンディングは資金調達以外にも新製品の市場調査やプロモーションなど様々な目的で利用される手法であり、その市場は年々拡大しています。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングの形式としては、支援者に対してモノや体験といったリターンをお返しする「購入型」がよく知られますが、他にもいくつかの種類が存在します。

購入型

法人・個人を問わずにすべての人が支援可能であり、リターンとして商品やサービスなどが贈られます。起案者が提供するリターンを購入する感覚で支援することが可能であり、最もポピュラーなクラウドファンディングの形式といえます。

寄付型

プロジェクトに対して支援者が資金を寄付する仕組みで、基本的にリターンは発生しません。環境保全や被災地支援など、社会貢献性の高いプロジェクトが多く、支援者は寄付金控除などの税制優遇が受けられます。

融資型

融資型は金融機関からの借入と同様に、複数の支援者から集めた資金を起案者に対して融資する仕組みです。購入型や寄付型と違い、支援者は金利という形で金銭によるリターンを受け取ります。

株式投資型

個人ではなく、株式会社が資金調達の一環として行う手法。支援者は資金を投資する見返りとして、起案企業の非公開株式を得ることができます。投資における金額制限があり、借り手企業側は年間1億円未満、支援者側は1社につき50万円までとなっています。

クラウドファンディングを行うメリット

企業がクラウドファンディングを利用するメリットは、資金調達だけではなく、製品に関する市場調査とプロモーションを同時に行うことができる点です。ここでは、それぞれについて簡単に解説します。

市場調査

社内でどんなに期待された製品であっても、市場ではまったく販売が伸びないケースもあります。中小製造業のように販売規模が小さい中で市場ニーズを正確に把握することは難しく、限られたノウハウ・リソースでヒット商品を創り出すのは至難の業です。

しかし、クラウドファンディングでは、開発段階のプロジェクトに対して、支援者から様々な意見が得られるため、直ちに製品開発に反映していくことができます。従って、事業としての方針変更を常に視野に入れつつ、リスクを抑えた製品開発を行うことが可能です。

プロモーション

プロジェクト進行中は、クラウドファンディング事業者が積極的にプロモーション活動を行うため、企業(起案者)もSNSなどを通じて製品情報を発信することで大きく認知を広げることができます。

また、このようなプロモーションを開発段階から継続的に行うことで、製品リリース時に多くの顧客(支援者)を獲得できている点もクラウドファンディングの大きなメリットです。

中小製造業とクラウドファンディングは相性が良い

クラウドファンディングと中小製造業は相性が良いと言えます。なぜなら、クラウドファンディングは共感を呼ぶことが重要な成功要因だからです。「町工場が作る、匠の技の〇〇製品」「メイドインジャパンの品質にこだわった〇〇製品」など、「町工場」や「メイドインジャパン」などのキーワードは好かれやすいキーワードです。

クラウドファンディング取り組み事例15選

ここからは、実際に成果をあげた製造業のクラウドファンディング取り組み事例15選をご紹介します。

1.株式会社シマワ

東京都千代田区にて機械部品の加工・製造を行っているシマワでは、ジュラルミン削り出しによるスマートフォン用スピーカー「oto」をクラウドファンディングにて販売しました。

ジュラルミンは軽量で丈夫、腐食しにくいといった優れた性質を持ち、航空機部品に使用されている素材です。削り出しによる洗練されたデザインと美しいフォルムが特徴で、自宅はもちろん、キャンプ・アウトドアシーンなどに最適な1台です。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/oto/

企業公式サイト

https://shimawa.co.jp

2.株式会社石井精工

東京都墨田区、葛飾区でゴム用金型の設計・製造を行っている石井精工では、アルミニウム削り出しのボタン型ピンズ「ALMA(アルーマ)」をクラウドファンディングにてリリースしました。

熟練工の手作業により、細部に至るまで一つ一つをアルミニウムの塊から削り出しており、ピンズに香りを付加するという新たなアプローチにも挑戦しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/alma/

企業公式サイト

http://ishiiseikou.com

3.株式会社小沢製作所

東京都青梅市にて高精度な組立て板金加工を行っている小沢製作所では、ステンレス鋼焚き火台「MOSS(燃す)」を販売しました。

パズルのように変形可能な本製品は、独自のスリット穴設計や設置柔軟性など、どんなアウトドアシーンにも対応可能。ピラミッド型やフラワー型といった形状を採用することで、足元まで美しい炎を演出しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/moss/

企業公式サイト

http://www.kk-ozawa.co.jp

4.株式会社武杉製作所

横浜市鶴見区にて精密鋳造をはじめとする各種金属加工を行っている武杉製作所では、チタン製タンブラーをクラウドファンディングにて開発・販売しました。

軽い、強い、錆びにくい、人体に優しいといった特徴を持つチタンは、真空二層構造によって高い保温性も実現。また、チタン表面の酸化被膜をナノレベルに調整することで鮮やかな色彩を表現しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/takesugi-titantumbler/

企業公式サイト

https://www.takesugi.co.jp

5.Knot

カスタマイズウォッチのパイオニアとして知られるKnotでは、時計の修理製造技術の専門学校「ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」と共同で文字盤意匠コンテストを開催し、優秀作品をクラウドファンディング限定商品としてリリースしました。

本プロジェクトでは、関わる運営費や開発費、製造原価、手数料などを差し引いた支援額の全額を、日本の未来の時計製造業への投資として寄付しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/knot03/

企業公式サイト

https://knot-designs.com

6.株式会社ニットー

ニットーは、横浜市金沢区にてプレス金型を中心とした下請け製品の製作を行っている会社です。同社では、新たな試みとしてヌンチャク系 iPhoneケース「iPhone Trick Cover」を自社開発しクラウドファンディングにて販売しました。

下請けに頼る経営方針からの脱却という、中小製造業全体の課題に対して、町工場が新たな一歩を踏み出した事例です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/309

企業公式サイト

http://nitto-i.com

7.株式会社田中金属製作所

田中金属製作所は真鍮部品加工に特化しながらも、オリジナル商品の自社開発を積極的に行っており、キャンプやアウトドアシーンに最適な真鍮削り出し火吹き棒「火樂〜KAGURA〜」をクラウドファンディングにてリリースしました。

高精度・高強度な真鍮削り出しや、熱気の逆流を防ぎ周囲の空気を引き込むことで燃焼を促進する画期的な構造など、金属加工業ならではの卓越した技術が詰まっています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/bonfire_stick_kagura/

企業公式サイト

https://www.tanakakinzoku.com

8.KOTOBUKI Medical株式会社

KOTOBUKI Medicalは町工場から生まれた医療系ベンチャー企業で、医療スキル向上に貢献する手術トレーニング用模擬臓器「VTT(Versatile Training Tissue)」をクラウドファンディングにてリリースしました。

食品を原材料とすることで、衛生面や倫理面、コスト面など様々な課題をクリアできる新素材として注目が集まっています。

クラウドファンディングページ

https://fundinno.com/projects/70

企業公式サイト

https://kotobukimedical.com

9.株式会社日翔工業

日翔工業はメッキ加工で知られる静岡県島田市の町工場です。近年ではブランド「PROGRESS」を立ち上げ、グラス内面にナノレベルのチタンメッキを施したジュエリーグラスなど、独創的な自社製品をリリースしています。

クラウドファンディングではブランド直営店に挑戦するためのオープン資金を募集、270%の達成率を記録しており、支援金額に応じて限定のジュエリーグラスなど様々なリターンが用意されています。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/238603/activities/217908

企業公式サイト

http://nissho-kogyo.jp/wordpress/

10.株式会社エムアイモルデ

エムアイモルデは静岡県富士市にある金型設計・製造メーカーで、3Dデジタルデータや3Dプリンタを活用したホビー業界への参入にも注力しています。

同社は、オリジナル作品をプラキットとして商品化する新ブランド「cavico」を立ち上げ、完全オリジナルのインジェクションプラキットを製品化するプロジェクトをクラウドファンディングにて公開しました。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/52915/activities/54087

企業公式サイト

https://mimolde.mystrikingly.com

11.株式会社キャステム

キャステムは広島県福山市にて医療機器や航空産業、宇宙産業など、あらゆる分野に使用される精密金属部品の製造・販売を行っています。

金属加工をはじめとした精密技術を新たな商品展開に活かすべく発足した新事業部「アイアンファクトリー」では、クラウドファンディングにて「アタッシュケース型コインケース」を公開・販売しました。

アルミにシルバーのアルマイトを施し、軽量で洗練されたデザインが特徴の本製品は、映画やドラマのアタッシュケースのイメージそのままに、ミニチュア化したポケットサイズを実現しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/castem-01/

企業公式サイト

https://www.castem.co.jp

12.株式会社山崎製作所

静岡県清水市にて精密板金加工全般を営む山崎製作所では、ファミリーキャンプブランド「shiromani」が手がけるステンレス製のオリジナルドリップバッグスタンド「ポタリス」の製造を担当しました。

クラウドファンディングにて目標達成率760%という驚異的な数字を記録している本製品は、ステンレス製のため丈夫で軽量、さらに一瞬で厚さ7mmに折り畳むことができるため、気軽に持ち運べてアウトドアシーンにも最適です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/535293

企業公式サイト

https://www.yamazaki-metal.co.jp/

13.株式会社極東窒化研究所

神奈川県秦野市にて金属表面硬化・熱処理を行う極東窒化研究所では、クラウドファンディングにて一生使える焼き網「chicca mesh(チッカ メッシュ)」を公開・販売しました。

スチール製の焼き網に「窒化処理」といわれる表面処理を施すことで、錆びや歪みといった弱点を解消し、手入れも非常に容易です。キャンプやバーベキューはもちろん、自宅のオーブントースターや魚焼きグリルで使用することもできます。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/chikka_mesh/

企業公式サイト

https://kyokutou-tikka.com

14.株式会社タシロ

神奈川県平塚市にて精密板金加工、精密機械加工を行うタシロでは、ピザ窯、燻製機、焚火台と3つの機能が備わった「3WAYコンパクトピザ窯」をクラウドファンディングにて公開しました。

創業50年を超える金属加工技術が凝縮された本製品は、組み立てや手入れも容易であり、自宅での使用はもちろん、キャンプやアウトドアなどあらゆるレジャーシーンに最適です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/447026

企業公式サイト

http://www.tasiro.co.jp

15.株式会社増田

東京都台東区にてハンドバッグなど革製品の製造・販売を行う増田では、2022年よりアウトドア部門を設立し、革製品とアウトドアの融合を追求しています。

クラウドファンディングでは、ハイクオリティな牛革を贅沢に使用した究極のレザーチェアーを販売し、大きな注目を集めています。創業100年を誇る職人の技術によって丁寧に縫い上げられたレザーチェアーは、あらゆるアウトドアシーンに最適です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/591686

企業公式サイト

https://www.masuda-c.co.jp

以上、製造業のクラウドファンディングについて事例を紹介しました。

参考にしていただければ幸いです。

この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
小林(井上) 正道 が執筆した他の記事をみる

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