中小企業はDtoCをやるべき? BtoCとの違いや事例、成功ポイントを解説

マーコム・サポーターの椎名です。中小企業や個人事業主のマーケティング活動をサポートする傍ら、ライティング活動も行っています。今回はこの数年で日本でもかなり浸透してきたDtoCをテーマにお話しします。中小企業でも取り組む企業が増えていますが、メリットはどのくらいあるのか、BtoCなど他の手法との違いや事例、成功するために何をすればいいのかについて解説していきます。

【執筆者紹介】椎名真弓
この記事の執筆者
椎名真弓
フリーランス・マーコム・サポーター
執筆テーマ:IT、製造にかかわるマーケティング全般

【経歴】
20年超にわたり、半導体・ディスプレイ関連のマーケティング業務に従事。市場分析から戦略立案、販売促進まで幅広い業務に携わった経験がある。現在はフリーランスにて中小企業や個人事業主のマーケティング活動をサポートする傍ら、ライティング活動も行っている。
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DtoCとは

DtoC(Direct-to-Consumer)とは、自社で開発・製造した商品を直接消費者へ届けるビジネスモデルのことです。Shopifyなどのデジタルプラットフォームサービスの開始を契機に、2010年ごろ、米国からビジネスが浸透しました。日本でもここ数年で急速に普及しており、食品、雑貨、衣料、化粧品などの日用品を中心に広がっています。「売れるネット広告社」によると、2025年には日本国内で3兆円の市場規模が期待されているとのことです。

BtoCとDtoCの違い

DtoCは自社商品を直接消費者に届けるものですが、従来からあるBtoC(Business to Consumer)やEC/通販と何が異なるのでしょうか?

BtoCは企業と消費者間の取引のことで、通常、商品が消費者へ渡る流通過程でメーカー、卸売業者、小売店と複数の業者が介在します。一方、DtoCは、メーカーが「直接」消費者とつながるビジネスモデルです。流通過程で業者が介在するかどうかがその違いとなります。

また、DtoCはEC/通販とも異なります。よくある疑問として、「DtoCはオンライン通販のことではないのか?」があり、何が違うのかよくわからない方も少なくないようです。EC/通販との違いは、情報発信に関するものです。DtoCでは、企業が自ら情報発信する媒体をもっていますが、EC/通販ではそれがありません。

例えばAmazonや楽天などのECモールでは、自社の商品ページがあり、その中で情報を発信することはできますが、各モールの規定がありその制約を受けてしまいます。DtoCはその点、自社の思う通りに伝えることができるのです。

DtoCは、リアル店舗でダイレクトに消費者とつながるSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)とも混同されがちですが、これも異なるものです。DtoCはオンラインを媒体とします。

なお、DtoCの発展形として、DNVB(Digitally Native Vertical Brand)があります。DNVBも企業と消費者を直接つなぐビジネスモデルですが、サービス提供やサプライチェーンまでを統合しています。このモデルを展開できている企業は日本ではまだ少数派といわれています。

中小企業がDtoCをやるべき理由

DtoCはコロナ禍を機にオンラインによる消費が加速したことで、一段と注目されるようになりました。一方、大企業と違い、潤沢な資金やリソースがない中小企業が安易に手を出すべきなのでしょうか? ここでは、DtoCが注目される背景やメリット・デメリットについて解説します。

DtoCが中小企業で注目される背景

DtoCが注目される背景として、まず、SNSの普及で個人でもブランドづくりが可能になったことがあげられます。また、安価なデジタルプラットフォームが普及し、経験知識が浅くても着手しやすくなったこともあるでしょう。クラウドファンディングによる資金調達もより身近なものとなりました。

このように、従来に比べ、事業化のハードルが下がったことで中小企業でも検討しやすくなっています。また、中小企業庁による「JAPANブランド育成支援等事業」や、各地方自治体による助成プログラム、民間のマーケティング会社により、サポート環境も整備されつつあることも追い風となっています。

DtoCのメリット・デメリット

注目度が高く、気軽に着手しやすい環境となったDtoCですが、実際にどの程度会社に利益をもたらすものでしょうか?DtoCを実施するメリット・デメリットを見てみましょう。

DtoCを実施するメリット・デメリットは以下のようなものがあります。

メリット

  • コスト削減が可能
  • 商品のコンセプトやビジョンを伝えやすい
  • 顧客との関係強化が図れる
  • 幅広いマーケティングが行える(顧客情報の収集が可能)

デメリット

  • 初期の環境構築にコストがかかる
  • 認知喚起・集客に時間がかかる、ノウハウも必要
  • 生産管理・カスタマーサポートなどの業務で体制強化とノウハウ蓄積が必要
  • ブランド乱立:DtoCが市場浸透し、似た領域で複数のブランドがでてしまい、競争激化

DtoCでは、他社にはないユニークな商品展開と、ユーザー体験の提供によりある特定のターゲットが欲しいものを届けられます。大量生産・大量消費のモデルではないため、中小企業でも付加価値がつけやすいです。

一方、Web環境や物流販売システムなど、環境構築にかかる初期コストとリソースは中小企業にとって大きな負担です。マーケティングノウハウなどは大手企業に比べると弱い部分は否めません。

自社ブランドをゼロから立ち上げる場合、認知を得るまでの道のりが長く途中で資金が尽きて挫折するリスクも考えられます。最近はブランドが乱立して、テーマによってはレッドオーシャンになっている領域もあり、一定の認知を得ていない状態で立ち上げが難しいという声もあります。

顧客と直接つながることで、顧客の生の声が届くメリットは大きいです。顧客の声を製品に反映し、共創の世界を確立できたDtoCブランドもいろいろあります。しかしその反面、従来小売店が引き受けていたクレーム対応などに自社で対応しなければならないというリスクもあります。

このように、DtoCでは様々な側面で大きなメリットが得られますが、それがデメリットにつながる危険性もあわせもっているのです。

DtoCの事例

ここでは、国内・海外の代表的なDtoCの事例をご紹介します。いずれも中小・スタートアップの成功事例として参考になるものばかりです。

国内事例

バルクオム(化粧品)

バルクオムは、20代~30代の男性をターゲットに高品質なメンズ化粧品を扱っています。「最も優れた化粧品は何か?」という疑問が、出発点となり2013年に事業化されました。「メンズスキンケア」という新ジャンルを確立させたDtoCのパイオニア的存在です。

パッケージは、従来のメンズスキンケアのイメージを変えるハイセンスなデザイン性の高いもの。Webメディアもそれに合わせ統一感のあるビジュアルとなっており、「男たちの本気のスキンケア」をキャッチフレーズにしています。2020年に木村拓哉の起用で話題となったTV CMの映像を全面に出した演出となっています。

初回70%以上の高い割引に各種特典を付け、定期コースを促す施策を採用。LINE、Facebook、Instagramといった幅広い媒体を活用、デジタル広告とSEOで接点を増やし、チャットサービスなどと組み合わせて醸成を図っています。

COHINA(衣料品)

COHINAは2017に女性2人で立ち上げた衣料品を扱うDtoC。創業者自身の悩みをもとに、「150cm前後の小柄な女性にあう洋服」をコンセプトとして起業したということです。

主な発信媒体はInstagramでフォロワー数23万人。Instagram上で日々ライブ配信を行い、ユーザーとのコミュニケーションが活性化されています。ユーザーの立場である小柄な一般女性を起用し、モデルだけでなく企画から参画させているのが特徴的です。ターゲットであるユーザー自身が自分自身の魅力を発信する内容となっており、それがよい顧客体験の場につながっている模様。初めての購入は送料無料、友達紹介で3,000円割引のクーポンが発行されます。

バルミューダ(家電)

バルミューダは空調やキッチン家電を手掛けている。DCモーター搭載の扇風機やスチームトースターなど、機能性とデザイン性を兼ね備えた製品で話題になっています。同社は機能ではなく体験をコンテンツのストーリーにのせて提供しています。例えばトースターでは、パン屋の焼きたてパンのように美味しいパンを食べられるという「体験」を提供。

オンラインだけでなく店頭でも30日間の返金保証をつけている点がユニークです。

石川鋳造(キッチン用品)

石川鋳造は、鋳鉄鋳物の製造業で、工作機械、水道のバルブや異形管、ロボットや重機の部品などを手掛けている。「お肉がおいしく焼けるフライパン を手掛け、肉の専門店との連携サービスを展開しています。

景気に左右されにくい製品として「お肉がおいしく焼けるフライパン」に着目、DtoCを始めました。2020年には、このフライパンの良さを伝えるためにお肉の専門店と連携して「お肉のサブスク」を立ち上げ。同社のフライパンを持っていないユーザーには無償で貸与するサービスを実施しています。

海外事例

Warby Parker(日用品)

WarbyParkerはメガネを手掛ける先駆的DtoCブランドとして有名な企業です。創業当初はオンラインのみで販売していたが現在はリアル店舗展開も行っています。「家から出ずに試着できる」がキャッチコピーとなっており、無料で5フレームまで試着が可能です。返品も無料。メガネ1本購入に対し、必要な人に1本寄付する「Buy a Pair、Give a Pair」というユニークな取り組みをしています。

サイト上で試着したユーザーのレビューが閲覧可能です。ユーザーのよくある質問である、価格、品質、サービスのテーマ別に閲覧できるようわかりやすい見せ方になっています。

Koala sleep(寝具)

オーストラリアの元ラガーマンが創業したマットレスのDtoC。2017年、日本に上陸しました。メルマガを登録するとお得なセールや割引クーポンが提供されるようになっています。このほか誕生日や季節の行事など、頻繁に割引キャンペーンが実施されています。

FacebookやYouTubeなどを活用し睡眠の大切さを伝えています。「マットレスで飛び跳ねてもワインがこぼれない」という動画が注目を集めていますが、こうしたコンテンツはユーザーを「寝心地を実際に体験してみたい」という気持ちに巧みに誘導していると思われます。また、その寝心地をじっくり試せるようにと全商品に120日保証がついています。

Allbirds(靴)

Allbirdsは靴のDtoCブランドです。素材であるメリノウールの特性を靴産業に活用できないものかと、再生可能エネルギーの専門家と靴用の素材を開発し、創業となりました。環境にやさしいサステナブルな取り組みに力を入れており、それを自社の媒体を使って発信しています。シンプルな設計をコンセプトにしており、靴業界で定着していた派手なロゴや不要な装飾物を一切取り払い、「天然素材を使った世界で最も快適なシューズ」を前面に打ち出しています。

オンライン購入の場合、どうしても靴の履き心地やフィット感に関する不安が残りますが、これを取り払うために、「どれだけ履いても30日間返品可能」という方針を打ち出しています。

DtoCの成功ポイント

ここでは、DtoCを検討するにあたって、どういうことを実践すると成果につながりやすいか、一般的に言われていることや、過去事例でうまくいっている施策などから考察します。

SNSを活用

DtoCではSNSを積極的に活用していきましょう。顧客との接点を増やして、商品を知ってもらう機会を多く作ることが望ましいです。

ただし、ここでいう「商品を知ってもらう」とは、従来のpush型の情報配信のことではありません。宣伝は一定の認知を稼ぐことはできますが、共感を呼びにくく、鬱陶しいと敬遠されてしまう場合もあります。SNSは顧客とのコミュニケーションの場として活用しましょう。

SNSをうまく活用することで、興味をもってもらったユーザーを囲い込み、自社の商品サービスのファンに育てていくことも可能です。

ブランディングに力点・顧客体験を提供

DtoCでは自社で情報発信媒体を持っています。その媒体を使って、イメージやストーリーを継続的に伝えていくようにしましょう。そうすることで、ユーザーの共感を呼び、商品に対するブランド認知を高めることができます。

自社の発信媒体をもっていたとしても、商品の特徴やスペックをただただ伝えるだけではユーザーの共感を呼ぶことは難しいです。大切なのは「商品に対するビジョン」をユーザーと共有すること。その商品があることでどんな未来が実現するのか、ユーザーの生活がどう変わるのかを視覚的に「体験」させるコンテンツが有効です。成功しているDtoCブランドは、商品そのものを売るのではなく、顧客体験の提供を重視しています。

また、商品を開発するきっかけとなった思いや、商品が完成するまでのプロセスをストーリーにのせて語るのもよいでしょう。

独自色を打ち出す

DtoCでは一般消費者に大量に出回っている商品を扱っても訴求しにくいです。どこででも手に入るものをわざわざそのサイトから購入することは通常考えられません。DtoCに出す商品・サービスは、オリジナリティの高いものが求められます。

対象とすべきなのは、一般ユーザーではなく、「尖ったニーズ」をもつ特定セグメントです。成功しているDtoCの事例を見ると、世の中にはなかったが、創業者自身が必要にせまられて「自ら開発した」という商品が目立ちます。規格外の商品を「どうしても欲しい」という層は少数派ですが、世界中の少数派を集めるとボリュームは大きくなります。商圏が限られたリアル店舗では難しくても、オンラインならビジネス機会となります。

また、顧客の声をダイレクトに収集できるので、それを製品に反映することも可能です。顧客をモノづくりの場に参画させることで、生産者と消費者の一体感が強まり、よい循環を生み出します。

DtoC構築のデジタルプラットフォーム

中小企業がDtoCに取り組むにあたり一番のハードルとなるのは、初期の環境構築コストとリソースです。自社で一から構築していたのでは、リリースまでに費用と時間がかかってしまいます。その手間と費用を削減できるのがデジタルプラットフォームです。

ここでは、DtoCを構築するためのデジタルプラットフォームを紹介します。

Shopify

Shopifyは世界175か国で170万以上の店舗に利用されている世界最大級のプラットフォームです。初期費用がかからず、月額費用も29ドルからとなっているため、手軽に利用できます。

マルチの販売チャネルを備えており、FacebookやInstagramなどのSNSからの投稿で販売できます。利用できる決済サービスも豊富で、拡張性も高いため、越境ECにも向いています。またWebサイトのテンプレートは100種類以上あり、ビジュアルを伝える際のデザインの自由度が高いです。

<詳細はこちら>
https://www.shopify.jp/

BASE

BASEは国内ASP型のECサイトプラットフォームです。初期費用、月額費用ともに無料から開始できます。商品が売れた際に、サービス料(3%)と決済手数料(3.36%)がかかる仕組みです。商品が売れるまでは費用が発生しないため、お試し用に適しています。

専門知識がなくても簡単にショップサイトを立ち上げられるよう工夫されている点が特徴で     す。例えば、サイトのデザインでは、パーツを選んでドラッグアンドドロップで簡単に制作できるようになっています。シンプルで機能が絞られているため制約はありますが、初心者にわかりやすいと評判です。

<詳細はこちら>
https://thebase.in/

STORES

STORESは、毎月1万ショップが利用するプラットフォームです。初期費用はかかりません。月額費用がかからないフリープランと、有料プラン(月額2,178円)があります。決済手数料はフリープランが5%、有料プランが3.6%です。プランは途中で変更できるので、立ち上げ初期はフリープランを活用し、ショップの販売が軌道にのったら有料プランに切り替えるというように、ランニングコストを抑えることが可能です。

スマートフォンからでも開設可能で、電話やメールで開設のサポートを受けられます。ただしサイトのHTML編集はできないのでデザインの制約が入ります。

<詳細はこちら>
https://stores.jp/

まとめ

DtoCは、デジタルという手段で自社商品を直接消費者に届けるビジネスモデルです。SNSでユーザーと直接つながる機会が増えたことと、デジタルプラットフォームの普及などで、中小企業でも検討しやすい環境となり、ここ数年、注目を集めています。

実際、中小・スタートアップで成功した事例もたくさんあり、新たな市場セグメントを確立するまでに至ったケースも少なくありません。これは、ある特定のセグメントに向けて「あったらいいのに」というユーザーの心を動かすビジュアルメッセージやユーザー体験の提供により実現したものばかりです。

一方、何もないところから立ち上げるまでの初期コストやリソースは、中小企業にとって大きな負担です。少ないリソースでも、少額から立ち上げることはできますが、認知度が上     がらなかったり、付加価値の高い商品につなげることができずビジネス継続が難しかったりするケースもあります。自社に知見やリソースが少ない場合、外部パートナーの力をうまく活用した方がよいでしょう。

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この記事の執筆者
椎名真弓
フリーランス・マーコム・サポーター
執筆テーマ:IT、製造にかかわるマーケティング全般

【経歴】
20年超にわたり、半導体・ディスプレイ関連のマーケティング業務に従事。市場分析から戦略立案、販売促進まで幅広い業務に携わった経験がある。現在はフリーランスにて中小企業や個人事業主のマーケティング活動をサポートする傍ら、ライティング活動も行っている。
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