【実験】海外向けWebサイトのサーバー選定が表示速度に与える影響

【執筆者紹介】稲垣 達也
この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

【保有資格】
TOEIC L&R:990/990、英検一級:合格、TOEFL iBT:108/120
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テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。

海外向けWebtサイトのサーバー選定を行う上で、個人的に気になっていることを調査しました。

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【調査期間】 2024年1月22日〜1月23日
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背景

海外向けWebtサイトを活用して、本格的に海外マーケティングを進める際「どのサーバーを選べばいいのかわからない」という疑問が生じると思います。

今回はその疑問に答えを導き出すための実験を行いました。

実験の目的

実験の目的は以下の2つです。

  1. サーバーの設置場所」がWebサイトの表示速度に与える影響を調査する
  2. サーバーの種類・性能」がWebサイトの表示速度に与える影響を調査する

仮説

今回の記事で検証する仮説は以下の2つです。

  1. サーバーの設置場所とWebサイトの表示場所までの直線距離が近ければ近いほど、Webサイトの表示速度は速くなる(逆も然り)
  2. 国内の共有サーバーに比べて、海外企業が運営するクラウドサーバーのほうが、海外からのWebサイトの表示が早い

実験条件

実験条件を以下にまとめます。

表示速度測定に使用するWebサイト

サイト名 使用しているサーバー プラン サーバー設置場所(インスタンスの位置)
サイトA(日本語サイト) エックスサーバー スタンダード Tokyo, Japan
サイトA(英語サイト) AWS Amazon Lightsail Tokyo, Japan
サイトB(日本語サイト) シン・レンタルサーバー ベーシック Tokyo, Japan
サイトB(英語サイト) AWS Amazon Lightsail Ohaio, USA

補足

  • AWS(Amazon Web Servervices)とは、Amazonが運営するクラウドサーバーサービス
  • サーバーの設置場所(インスタンスの位置)」とは、共有サーバー(エックスサーバー、シン・レンタルサーバー)の場合、サーバーのデータセンターが設置されていると思われる場所(国内であることは確かだが、正確な位置は不明)
  • サーバーの設置場所(インスタンスの位置)」とは、AWSの場合、インスタンスを起動する「リージョン」のこと(共有サーバーのデータセンターの設置場所と同じような概念)
  • サーバーの契約プランは、それぞれのWebサーバーの最安のもの

表示速度測定ツール、測定項目

表示速度測定ツールには、世界各国からのWebサイトの表示速度を測定できる「WebPageTest」というサイトを使用しました。測定項目は以下の通りです。

項目名 説明
First Byte 表示リクエストの送信後、サーバーから最初の1ビットのデータを送り返すのにかかる時間
Start Render 空白ページから、コンテンツが初めて表示されるまでの時間
FCP(First Contentful Paint) ページの読み込みが開始されてからページ内のコンテンツのいずれかの部分が画面上にレンダリングされるまでの時間
Speed Index ページのファーストビューが見えるまでにかかった時間
LCP(Largest Content Paint) ページの重要なコンテンツが表示されるまでにかかった時間
CLS(Cumulative Layout Shift) 表示されるページコンテンツにおける予期しないレイアウトのずれの量
TBT(Total Blocking Time) タスクの処理時間が50ミリ秒を上回った場合の、コンテンツの初回描画から操作可能になるまでの合計時間
Total Bytes ページの表示に要したデータ量

参照

実験方法

サイトAおよびサイトBを以下の2つの条件で測定し、結果を比較します。

実験1:「サーバーの設置場所」が表示速度に与える影響

サイトA(英語サイト、AWSのインスタンス:Tokyo)および、サイトB(英語サイト、AWSのインスタンス:Ohaio)を、世界6都市から測定する。

実験2:「サーバーの種類」がWebサイトの表示速度に与える影響

サイトA(日本語サイト、エックスサーバー)および、サイトA(英語サイト、AWSのインスタンス:Tokyo)を、世界6都市から測定し比較する。

結果

実験1:「サーバーの設置場所」が表示速度に与える影響

実験1の結果は以下の通りです。

測定に使用したWebサイト1

サイトA(日本語サイト、エックスサーバー:Tokyo)

測定結果

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Tokyo 0.00 0.386 1.6 1.385 5.969 2.047 0.002 0.023 5,819
Sydney 7,881.56 0.892 2.2 2.136 7.155 2.299 0.002 0.009 5,819
London 9,569.05 1.502 2.9 2.746 7.489 3.005 0.001 0.025 5,819
Virginia 10,985.66 1.502 2.9 2.746 7.489 3.005 0.001 0.025 5,819
Cape Town 14,726.41 1.732 3.4 3.22 8.245 3.484 0.002 0.024 5,819
Sao Paulo 18,490.40 1.593 3.2 2.986 7.657 3.255 0.001 0 5,819
直線距離との相関係数 0.90 0.92 0.92 0.88 0.89 -0.47 -0.45

測定に使用したWebサイト2

サイトA(英語サイト、AWSのインスタンス:Tokyo)

測定結果

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Tokyo 0.00 0.295 1.4 1.28 6.59 2.038 0.003 ≥ .017 5,398KB
Sydney 7,881.56 0.773 1.9 1.816 5.283 2.1 0.003 0 5,398KB
London 9,569.05 1.081 2.6 2.487 6.206 2.627 0.119 0.032 5,398KB
Virginia 10,985.66 0.926 2.1 2.04 5.679 2.341 0.109 ≥ .003 5,445KB
Cape Town 14,726.41 1.321 3.2 3.109 6.682 3.169 0.028 0 5,398KB
Sao Paulo 18,490.40 1.299 3 2.874 6.197 2.971 0.078 ≥ .030 5,398KB
直線距離との相関係数 0.95 0.90 0.91 0.00 0.84 0.44 -0.28 0.06

測定に使用したWebサイト3

サイトB(日本語サイト、シン・レンタルサーバー:Tokyo)

測定結果

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Tokyo 0.00 0.22 1.1 0.927 6.297 9.644 0.778 0.196 5,118
Sydney 7,881.56 0.982 1.8 1.7 7.809 10.602 0.778 0.136 5,148
London 9,569.05 1.785 2.9 2.805 8.551 11.832 0.778 0.098 5,141
Virginia 10,985.66 1.21 2 1.944 7.76 11.218 0.003 0.163 5,224
Cape Town 14,726.41 3.217 4.7 4.652 11.459 14.323 0.775 0.107 5,145
Sao Paulo 18,490.40 1.597 2.8 2.725 9.416 12.178 0.778 0.374 5,148
直線距離との相関係数 0.71 0.70 0.71 0.80 0.77 -0.06 0.39 0.31

測定に使用したWebサイト4

サイトB(英語サイト、AWSのインスタンス:Ohaio)

測定結果

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Virginia 419.52 0.589 1.3 1.229 6.407 10.465 0.782 0.139 6,580
London 6,140.33 0.788 1.7 1.667 7.151 11.771 0.782 0.169 6,483
Sao Paulo 8,074.70 0.996 2.2 2.101 7.534 11.49 0.776 0.401 6,481
Tokyo 10,481.26 0.643 1.7 1.629 7.139 11.407 0.782 0.156 6,481
Cape Town 13,259.58 0.963 2.2 2.21 8.343 12.833 0.779 0.118 6,525
Sydney 15,187.03 1.078 2.2 2.201 8.245 12.296 0.779 0.128 6,481
直線距離との相関係数 0.73 0.83 0.86 0.92 0.87 -0.41 -0.15 -0.61

実験2:「サーバーの種類」がWebサイトの表示速度に与える影響

測定に使用したWebサイト

  • サイトA(日本語サイト、エックスサーバー:Tokyo)
  • サイトA(英語サイト、AWSのインスタンス:Tokyo)

測定結果(英語サイトの表示時間 – 日本語サイトの表示時間)

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Tokyo 0.00 -0.091 -0.2 -0.105 0.621 -0.009 0.001 -421
Sydney 7,881.56 -0.119 -0.3 -0.32 -1.872 -0.199 0.001 -0.009 -421
London 9,569.05 -0.421 -0.3 -0.259 -1.283 -0.378 0.118 0.007 -421
Virginia 10,985.66 -0.576 -0.8 -0.706 -1.81 -0.664 0.108 -374
Cape Town 14,726.41 -0.411 -0.2 -0.111 -1.563 -0.315 0.026 -0.024 -421
Sao Paulo 18,490.40 -0.294 -0.2 -0.112 -1.46 -0.284 0.077 -421
平均値 -0.319 -0.333 -0.269 -1.228 -0.308 0.055 -413.167
直線距離との相関係数 -0.53 -0.02 0.02 -0.72 -0.49 0.44 0.06

数字が負の値になっている場合、英語サイト(AWS)の表示速度が、日本語サイト(エックスサーバー)の表示速度より早いことを意味します。

考察

実験1:「サーバーの設置場所」が表示速度に与える影響

サーバーの設置場所と表示速度には、それぞれ以下の関係があると思われます。

項目名 サーバーの設置場所がWebページの表示速度に与える影響
First Byte サーバーの設置場所に大きく依存する(直線距離が近ければ表示速度が早くなる
Start Render サーバーの設置場所に大きく依存する(直線距離が近ければ表示速度が早くなる
FCP(First Contentful Paint) サーバーの設置場所に大きく依存する(直線距離が近ければ表示速度が早くなる
Speed Index サーバーの設置場所に大きく依存する(※AWSのインスタンスがTokyoであるサイトに関しては相関関係が見られない)
LCP(Largest Content Paint) サーバーの設置場所に大きく依存する(直線距離が近ければ表示速度が早くなる
CLS(Cumulative Layout Shift) サーバーの設置場所に依存しない(直線距離と表示速度に相関は見られない)
TBT(Total Blocking Time) サーバーの設置場所に依存しない(直線距離と表示速度に相関は見られない)
Total Bytes サーバーの設置場所に依存しない(直線距離と表示速度に相関は見られない)

Speed Indexの秒数を除いて、ページの表示速度はWebサーバーの設置場所との直線距離に相関があることがわかります。

実験2:「サーバーの種類」が表示速度に与える影響

サーバーの種類と表示速度には、以下の関係があると思われます。

  • AWSのインスタンスをTokyoに設置した場合、エックスサーバー(Tokyo)よりもWebサイトの表示速度は速くなる(特にSpeedIndexは直線距離が長くなるほど、表示速度の差が大きくなる)
  • 全世界向け英語サイトのサーバーには、国内の共有サーバーよりクラウドサーバーのほうが表示速度が早い可能性が高い(最安プランで比較した場合)

海外向けWebサイト制作

まとめ

英語サイトのサーバーを選定する際に考慮するべき、サーバーの設置場所と種類が、Webサイトの表示速度に与える影響を調査しました。結果を以下にまとめます。

  • Webサイトの表示速度は、サーバーの設置場所からの直線距離に大きく依存する(First Byte、Start Render、FCP(First Contentful Paint)、Speed Index、LCP(Largest Content Paint)は特に大きな影響を受ける)
  • 同じ場所にサーバーが設置されている国内の共有サーバーとAWSクラウドサーバーの最安プランでの表示速度を比較した場合、クラウドサーバーのほうが全ての地域においてWebサイトの表示速度が早い

以上、英語サイトのサーバー選定の参考になれば幸いです。まだまだ調査するべき項目(例:クラウドサーバー vs 海外現地サーバー、クラウドサーバーのインスタンス設置場所による表示速度の違い)はありますので、引き続き調査を行います。

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この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

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