製造業の営業手法9選(中小製造業の新規開拓)

【執筆者紹介】小林(井上) 正道
この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
小林(井上) 正道 が執筆した他の記事をみる

コロナ禍を機に、製造業の営業活動はさらに多様化しており、企業の立ち位置や目的によって様々な手法が用いられています。中でも中小製造業(サプライヤー)における営業活動には多くの課題があり、状況に応じて適切な営業手法を選択する必要があります。本記事では、中小製造業の営業活動について、新規開拓を中心にご紹介します。

関連資料のご案内

  • 自動車製造業のEV普及に関する意識調査レポート
  • サプライヤー企業の新市場開拓をWebマーケティングにより実現する方法
  • 製造業が持つ自社技術の用途開発をWebマーケティングにより実現する方法

資料イメージ

中小製造業の営業活動が難しい理由

中小製造業における営業活動は、自社製品を持つ企業が行う営業活動に比べて難しいと言われています。その理由は大きく分けると以下の4つが挙げられます。

受託加工という業態の特性(タイミング)

製造業界では、従来から依頼している発注先が存在します。より安価で依頼できる発注先を探すケースはありますが、基本的になにか特別な理由がない限りは、新規発注先を検討することはありません。新規発注先を検討するタイミングや理由としては、従来の加工業者側の納期遅れや品質不備、ボリューム対応不可、後継者不足、発注リスクの分散などが挙げられます。常にコンタクトをとっている訳ではないため、そういったタイミングを見極めて営業することは非常に難しく、ほとんどの場合「機会があれば」で終わってしまいます。

自社製品と比べてPRしづらい

自社製品であれば、製品の特徴やメリットデメリット、価格、他社製品との比較など、様々な提示が可能です。しかし、サプライヤーの場合は基本的にお客様側で用意した図面に対して、製作可否、納期、コストを提示することだけが求められます。それが他社と比較して優位性があるかどうかを、サプライヤー側で判断することはできないため、通常の製品販売営業よりも、営業活動は困難と言えます。

営業+技術ができる人が少ない

中小製造業の営業活動においては、営業力だけではなく、自社技術をある程度理解していなければ商談を進めることはできません。もちろん、最終的な詳細は現場に確認する必要があります。しかし、図面を見て内容や状況を理解し、ある程度の可否判断を下すことは営業にも求められるスキルであり、商談時にお客様の信頼を得るうえで重要なポイントです。

中小製造業では、そういった技術的営業は経営者が担当する場合が多く、営業を採用してもすぐに即戦力にはならないケースがほとんどです。時間をかけて営業+技術ができる人材を育てる必要があり、相応の労力とコストがかかります。

設備稼働力というキャパがある

他の業界のように、需要があればいくらでも販売できるという訳ではなく、製造業の場合は保有設備によって稼働できる限界があります。繁忙期に営業をかけて案件を獲得しても、そもそも製造できないというケースも少なくありません。売上や顧客からの信頼など、受注できる案件はいくらでも獲得したいのが営業側の意向ですが、それを良しとしない現場との問答はよくある話です。

また、閑散時に営業をかけてもなかなか案件を獲得できないこともあり、仕事の波をコントロールすることが非常に難しい業界と言えます。

営業活動の目的って?

営業の目的

営業活動の目的は、もちろん売上や利益を伸ばすことです。しかし、それは短期的な目的であり、あくまで数値化された目標と言えます。会社としての目的はその先にあり、具体的には以下のようなものが挙げられます。

リスクの分散

取引がこの先も常に続く保証はないため、業界問わず取引先を増やしていく必要があります。業界ごとの波を緩和させる仕組みづくりが不可欠です。

仕事の波の低減

仕事の波を抑えるためには、繁忙期、閑散期に左右されず営業活動ができる仕組みづくりが必要です。特に、閑散期に営業をかけても受注のタイミングを逃してしまっている場合が多く、協力企業と連携しキャパシティをコントロールすることが重要です。

利益率向上

顧客候補を増やすことで、自社として関係を持ちたい会社を選択できるようになります。その結果、不当なコスト協力を回避し、利益率の高い仕事を追求することが可能です。また前述同様に、協力企業をうまく活用することで、それぞれの得意分野で付加価値の高い仕事ができるため、利益率向上にもつながります。

あらたなビジネスのきっかけをつかむ

これまでやってきた事業が、形を変えずにこの先何十年も続いていくと思っている経営者はほとんどいません。また、いつか業務は平準化され、さらに自動化されるものも多いでしょう。積極的に新しい案件に取り組むことで、自社事業の可能性を常に模索し、新たな事業のきっかけをつくる取り組みが求められています。

新規営業手法紹介

営業手法

ここからは新規開拓を中心とした営業手法について、以下の9選をご紹介します。

紹介営業

紹介営業は製造業に限らず、どんな業種においても古くから行われてきた営業手法です。ある程度の関係構築があり、自社業務を理解してもらっている場合が多いため、受注から製造、納品にいたるうえで非常に話が早いことがメリットです。一方で、紹介営業は長年にわたり各企業が行ってきた手法のため、昨今ではなかなか広がりを持つことが難しくなっています。また、業種に偏りが生じてしまうこともデメリットと言えます。

飛び込み営業、テレアポなど

飛び込み営業やテレアポは、発注者側の話を直接聞くことができるため、タイミングさえ合えばスピード感を持った受注獲得が可能です。しかし、タイミングを捉えることは非常に難しく、人員や時間といった労力が相当かかるうえ、足元を見られたり冷遇されたりすることも多い手法です。

専門雑誌・新聞などへの広告宣伝

広告宣伝はコストがそれなりにかかりますが、業種をある程度絞ることで、より明確なターゲット層へアプローチできます。また、専門雑誌や新聞といった媒体は、ユーザーからの信頼性も高く、無料で手に入るインターネット情報と比較しても発注にいたる可能性が高い手法です。

展示会出展

展示会出展は、飛び込み営業やテレアポと同様に、発注者の話が直接聞けるため、具体的な商談へと発展する可能性が高い手法です。また、自社が扱うテーマやカテゴリーに興味関心を持つ「見込み顧客」の情報を大量に収集できます。

しかし、出展にはそれなりにコストがかかるうえ、多くの人員・労力が必要になります。また、明確な効果測定をするのが難しいこともデメリットと言えます。

オンライン展示会・商談会

オンラインでの展示会や商談会は、コロナ禍を機に大きく需要を伸ばしています。通常の出展に比べて費用を抑えられることや、顧客情報を収集できること、また距離や天候などの影響がないことなど様々なメリットがあります。

一方で、出展のためのサイト構築など手間と人員がかかるうえに、PR手法としてはまだ確立できていないため、その効果は不明瞭です。

Web広告

Web広告は低コストで始められるうえに、短期間で成果を得やすいという特徴があります。また、ニーズのある企業にピンポイントで配信・リーチできることも大きなメリットです。しかし、長期間成果を挙げ続けるためには継続的な投資や、日々の改善が不可欠です。

HP活用(SEO対策など)

HPを活用した営業は、ニーズのある企業を含め幅広い層に認知してもらえる他、施策が軌道に乗れば継続的なアクセス、問い合わせを獲得できるメリットがあります。また、SEO対策によるアクセスアップは広告と違い、蓄積され続けるため、会社の財産となる点が非常に良いポイントです。他の媒体を見た後にHPを確認するなど、他の施策と組み合わせることで相乗効果が期待できます。

しかし、昨今ではコロナ禍の影響もありWebにおける競合も増加傾向にあるため、より適切な対策、運用ノウハウが求められます。

SNSマーケティング

SNSマーケティングとはその名のとおり、FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSを活用した営業活動のことです。

SNSマーケティングは情報の伝達、拡散が速いため、つながりのない人にも広く知ってもらうことができます。また、SNS自体は無料で始められるため、低コストでの運用が可能であり、導入に対するハードルが低いことも大きなメリットです。

一方で、業界的に口コミが広がりづらいことや、運用のための情報、人員を確保することが難しいこと、拡散による炎上リスクが伴うことなど、デメリットも存在します。

メールマーケティング

メールマーケティングとは、メールを活用したマーケティング活動のことです。メールマガジンと混同されがちなメールマーケティングですが、メールマガジンとは違い、顧客に対して商品、サービスの利用など明確な行動を起こさせることを目的としており、いわゆる「リードナーチャリング」要素がより強い手法です。

メールマーケティングは低コストで運用可能であり、継続的な顧客接点ができるため、認知度向上に非常に効果があります。また顧客ひとりひとりに合わせた情報配信を行うことで、特別感を演出したアプローチが可能です。しかし、継続して運用していくための情報、人員といったリソースが不足することも多く、顧客動向や情勢など様々な変化に常に対応し続けなくてはいけません。

以上、中小製造業の営業活動について紹介しました。

関連記事はこちら



参考にしていただければ幸いです。

関連資料のご案内

  • 自動車製造業のEV普及に関する意識調査レポート
  • サプライヤー企業の新市場開拓をWebマーケティングにより実現する方法
  • 製造業が持つ自社技術の用途開発をWebマーケティングにより実現する方法

資料イメージ
この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
小林(井上) 正道 が執筆した他の記事をみる

関連記事