知財を意識した技術マーケティングにより技術情報漏洩を防ぐ

テクノポートの徳山です。今回はWebを活用した技術マーケティングを行う中で気をつけたい「技術情報漏洩への対応策」をテーマに取り上げます。Webを活用した技術マーケティングとは、Webマーケティングにより積極的に情報発信を行うことで技術の新たな用途を発見し、有望な事業を見出していくための活動のことと定義します。

本記事では、技術マーケティングを進めていく際に常にリスクとして付きまとう「技術情報の漏洩」に対し、どのような対応を行っていけばよいのかについて解説します。

※本記事は、かめやま特許商標事務所の亀山弁理士に監修していただいております

Webで情報発信する際の注意点

Webサイトにて技術情報を発信していくことで、さまざまな技術者へ自社技術の存在を知ってもらえます。しかし、商品の問い合わせと称して顧客を装った競合他社によって、自社の技術情報が盗まれるリスクも考えられるでしょう。本項では、そのような技術情報の漏洩リスクを少しでも減らしていくために、Webで情報発信する際の注意点についてお伝えします。

技術の優位性を伝えつつ秘伝のタレのレシピは隠す

技術に対する詳細な情報を出せば出すほど、それが他の技術と比べてどう違うのか、どこが優れているのかが伝わりやすくなるため、技術探索者には刺さりやすい内容となります。このため、刺さる内容を多く盛り込むことが問い合わせ獲得につながると考え、惜しみもなく技術情報をWebコンテンツ化している企業も少なくありません。

例えば、「秘伝のたれ」についての問い合わせから始まったお客様に対して、様々な情報交換を行った結果、「秘伝のたれ」のレシピのように具体的な情報を出しすぎてしまうと、レシピが相手に理解され模倣されたり、そのヒントを教えることにつながったりしてしまい、ひいては自社の技術の優位性が失わるため、相手に対する自社の交渉力が下がります。このような事態にならないようにするためには、情報開示の範囲や開示方法について注意が必要です。

そのため、技術の詳細情報に関しては、技術探索者へ技術の優位性が伝わり、問い合わせを獲得できるギリギリのラインを攻めて表現する必要があります。これを実現するためには、技術者がどのような切り口で技術情報の探索を行っているのかを深く理解するのがポイントです。

技術をMFTフレームワークで分解して情報発信する

情報発信を行う際、MFTフレームワークを使って要素分解することが重要な鍵となります。なぜなら、詳細情報以外のWebコンテンツでユーザーを集客・訴求できるからです。MFTフレームワークについては以下の記事もご参照ください。

技術者が技術探索を行う際、使用する検索キーワードは技術名称だけではありません。現在抱えている技術課題や求める機能などといった検索キーワードも使用する傾向があります。どういった切り口の検索キーワードを使用するかは、技術者の属性や現在抱えている技術課題などにより大きく異なります。

そのため、必ずしも技術の詳細情報を出さなくても、技術が持つ機能やどのような市場で使われているか、といったWebコンテンツをうまく発信することで技術者に技術情報を届けることが可能です。

プロテクトする方法は「特許」と「契約」

自社の技術情報をプロテクトするには、ブラックボックスにしてしまうことが一番です。しかしながら、すべてをブラックボックスにしてしまうと、見込顧客へのアプローチができなくなってしまいます。

そこで、自社の技術情報のうち、「開示する技術情報」「開示しない技術情報」に分けます。「開示しない技術情報」はこのままでもプロテクトされますが、「開示する技術情報」をこのまま開示してしまうとプロテクトができません。

このため、「開示する技術情報」を守る手段として「特許」と「契約」の2つが良く利用されます。これらの手段は技術マーケティング戦略のもと、使い分けていく必要があります。この2つの手段をどのように使い分けていけばよいのかについてお伝えします。

「特許」により技術を守る

特許を取得することで、その技術の独占権を獲得でき、法的に技術を守ることができます。しかし、特許を取るためにはその技術に関する情報を開示する必要があるため、その技術自体は盗まれないとしても、類似した技術開発のヒントを与えることもあります。そのため、技術をどのように開示し、どの部分を守っていくのかは技術マーケティング全体の戦略の中で決めていく必要があります。

ちなみに特許情報を開示していたとしても、その情報まで入念に調査する人は意外と少ないのが実情です。Webマーケティングで情報発信する際に、特許情報として情報開示している情報だからと言って、Webコンテンツとしてどんどん情報発信していくことは控えたほうがよいでしょう。

なお、大企業の場合は、取得する特許と事業の数が多いため、どの特許をどの事業で使用するのかを類推しにくく、その背景を十分に知られないようにするための防衛策(特許群による防衛)があります。中小企業の場合、特許と事業を紐付けるのが容易なため、権利取得のための開示と技術情報漏洩のバランスは特に注意が必要です。バランスのとり方については、特許のみならず技術マーケティングの知識のある弁理士や弁護士などの専門家と相談しながら決めていった方が良いです。

「契約」により技術を守る

技術情報を漏洩させないために、敢えて特許を取得しないという選択肢を取る場合は、契約によって技術を守っていく必要があります(特許を取得している場合でも、もちろん契約は大切なのでご了承を)。具体的には、商談の段階に応じた契約を都度結んでいく方法を取ることが望ましいです。

フリーの話し合いには何の法的拘束力を持たないため、まず話し合いを行うための軽めの秘密保持契約(NDA)を結んだうえで商談を始めましょう。NDAでは、技術情報漏洩防止だけでなく、目的外使用禁止の2点を盛り込むのが必須です。軽めのNDAとは、スコープが広くて義務の重さが軽いイメージです。契約期間は半年〜1年程度とし、契約終了時の条件としてプラス2~5年とする形がよいでしょう。

技術情報を話さなければ、商談がこれ以上前に進まなくなるという段階で、スコープを狭めて、厳し目の条項を盛り込んだNDAを締結します。この段階では商談が途切れてしまう可能性も高いので、契約期間を長期(3年ぐらい)にしておいたほうがいいでしょう。

そして、商談が進み技術の提供方法が確定した段階で、共同開発契約、販売店契約契約、ライセンス契約、業務委託契約などのケースに応じた適切な契約を結びます。各契約の中において、NDAの条項が通常入ることが多いため、締結する契約に応じた内容を記載する必要があるでしょう。

なお、技術情報を盗む目的で近づいてくる企業は、軽めの秘密保持契約(NDA)などを嫌がることが多いため、そのような企業をあぶり出すフィルタ的な効果も期待できます。

また、情報漏洩の観点から言えば、秘密保持契約書やNDA条項が含まれる契約書については、自社のひな型を用意しておいたほうが良いでしょうし、契約書を(ざっとでもよいので)理解できる人材を育てることも同時に行いたいところです。そのような人材がいない場合には、外部の専門家に業務を委託したり、社員教育を依頼することもよいでしょう。

まとめ

Webでの技術情報発信を行う場合は、MFTフレームワークなどを活用し、MとFの情報を中心に情報発信を行いましょう。Tの情報は、技術探索者に刺さる内容を詳細に書きすぎることなく表現する必要があります。

常にリスクは存在することを前提に、技術情報をプロテクトする手段である「特許」と「契約」を使い分けることで、交渉力を維持しながら自社技術を守りましょう。使い分けは技術マーケティング戦略に基づき行っていくことを忘れないようにしてください。

また、短期的な利益に惑わされず、技術から得られる中長期的な利益にしっかりと目を向け、自社技術を守り抜く姿勢が最終的には重要です。特に知財部門がない中小企業の経営者は肝に命じていただければと思います。

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