【製造業】海外進出する5つの方法・進出方法の選び方

本記事は、ブルーイノベーション株式会社にてグローバル戦略を担当する執行役員CSOの田中健郎さんに、内容の監修を行っていただきました。田中さんの詳細なプロフィールはこちらの記事からご覧ください。

テクノポートの稲垣です。本記事は、下記のような疑問をお持ちの方に読んでいただきたい内容です。

・海外進出するための方法の種類が知りたい
・それぞれの方法のメリット・デメリットが知りたい
・自社にあった海外進出の手法が知りたい

そこで本記事では、以下の内容を解説します。

▶︎海外進出する5つの方法
▶︎それぞれの方法のメリット・デメリット
▶︎自社にあった海外進出方法の選び方

拠点設けない新時代「海外販路開拓」overseas-web-marketing

海外進出する5つの方法

日本企業が海外進出する5つの代表的な方法と、それぞれの方法のメリット・デメリットを紹介します。

①現地法人の設立

進出先の国に自社拠点(もしくは製造拠点)を設立する方法です。

この方法は最も現地に入り込む形の進出方法で、投資も大きくなります。

したがって、事業が成功した際のリターンは大きいですが、失敗に終わるケースも考えられます。現地拠点を検討する際には、念入りな事前準備(例:現地の市場調査、精度が高い事業計画の作成、ビジネスの実績作り)を行うことが大切です。

また、「親会社・主要な取引先について現地に進出する」という場合もあると思いますが、長期的な経営環境の変化も想定し、慎重に進出の判断をすることが必要です。

現地法人の設立方法は、次の2つのパターンに分かれます。

①独資
自社の出資のみで現地法人を設立

②合弁
現地や他国のパートナー企業との共同出資により現地法人を設立

以下の記事では、フランスで受託加工業の会社を経営する方に「現地パートナー企業の見つけ方とビジネスの進め方」を伺った内容を掲載しています。現地パートナー企業の探し方を詳しく知りたい方は、参考にしてください。

メリット・デメリット

メリット デメリット
独資
  • 自社の裁量で会社経営が可能
  • 利益配分の必要がない
  • 技術・ノウハウの流出リスクが低い
  • 出資の負担が大きい
  • 販売を伴う場合、販売網の構築を自社で行う必要がある
  • 国や事業内容によって規制されている可能性がある
合弁
  • 投資額とリスクを軽減可能(パートナー企業と分担できるため)
  • パートナー企業のノウハウを利用可能(例:政治力、販売力、技術力)
  • パートナー企業の選定と合意形成に手間と時間がかかる
  • パートナー企業と経営方針、配当方針等に関して対立する可能性がある

②販売代理店取引

進出先の国に拠点を有する販売代理店と契約し、その国における販売を委託する方法です。

この方法は、他の手法と比較するとリスクとリターンのバランスが取れた手法であると言えます。(他の手法より、投資やリスクを抑えながら現地で販売実績を作ることができるため)

また、販売代理店経由で現地のリアルな市場・顧客情報を得ることができます。加えて、現地の代理店を利用することで「製品の在庫を抱えることができる」、「現地で必要なバリューチェーン(例:アフターサービス)を請け負ってもらえる」、「現地での回収リスクを負ってくれる」ことも、販売代理店契約の大きな特徴の一つです。

販売代理店との契約形態は、通常、以下の2つのパターンに分かれます。

①独占販売契約
特定の代理店に自社の製品を販売する権利を独占的に付与する契約(販売地域、販売期間を設定することが一般的)

②非独占販売契約
複数の代理店に自社の製品を販売させることを想定し、(独占的な内容を記載せずに)販売権を付与する契約

また販売代理店は、通常ディストリビューター(Distributor)やリセラー(Reseller)と英語で称します。また、似たような存在として、メーカーと顧客の間の仲介や営業代行のみを行うエージェント(Agent ※「代理店」と訳すことがある)やセールスレップ(Sales Representative)もありますので、本文では、以下の通り区別したいと思います。

販売代理店(Distributor, Reseller)
製品をメーカーから仕入れ、マージンを付加して現地で再販する契約形態

エージェント、セールスレップ(Agent, Sales Representative)
メーカーと顧客の間で仲介や営業代行を行い、売り上げ金額に応じて成果報酬を与える契約形態

以下の記事では、ベトナムで販売代理店(ディストリビューター)を活用し、製品を販売した経験のある方にインタビューした内容をまとめています。販売代理店(ディストリビューター)の探し方から具体的な販売のコツに関心のある方は、参考にしてください。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 販売代理店に製品を卸すことで比較的早期に売上が立つ
  • 販売代理店が持つ商流を活用可能(例:現地の得意先、料金の回収、保守・メンテナンス体制)
  • 投資および費用の抑制(自社拠点を開設したり、現地人員を雇用する必要がないため)
  • 信頼できる販売代理店探しに手間と時間がかかる
  • 価格やサービス品質の管理に労力がかかる(価格や販売方法が販売代理店任せになるため)
  • 現地の市場・顧客情報を販売代理店から入手する工夫が必要

③商社・輸出業者

自社製品を国内の商社または輸出業者に代理販売してもらう方法です。

この方法はリスクが少ない分、リターンも少ない方法であると言えます。商社の世界的なネットワークを活用すれば一気に販路が拡大しますが、自社製品の強みや特徴が現地の顧客に伝わりにくいため、なかなか実売に繋がらないケースもあります。

また、商社を経由した現地の情報は、自社が実際に進出したり、販売代理店と顧客を回って得られる情報よりも「情報の手触り感」がなく、現地の生の声がわかりにくいことも考慮する必要があります。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 商社のネットワークや情報を活用可能(例:販売網、人脈、海外市場情報)
  • 貿易の知識・経験がなくても海外に製品を販売可能
  • 海外取引における自社の負担を抑えられる(例:与信管理、代金回収、海外コミュニケーション)
  • (一般的に)商社のマージンが多い(商社に輸出・販売の一環を委託するため)
  • ノウハウが自社に蓄積されない(同上)
  • 現地の市場・顧客の反応が見えにくい(例:市場、顧客のニーズが把握しにくい)

④現地委託生産

進出先で自社製品の製造に協力してくれる工場を探し出し、製品の製造を委託する方法です。必要に応じて、製品の製造に必要な原材料の現地供給、部品調達先の確保、技術者の派遣を行う必要があります。

この方法は「海外に生産拠点を持ちたいが、生産ボリュームが多くない、また自社だけで生産拠点を設立することが難しい」場合に取るべき方法であると言えます。

委託生産方式には次の2つのパターンが存在します。

①OEM(Original Equipment Manufacturer)
委託側が企画、設計を行った製品を受託側が製造し、委託側が販売(例:iPhone)

②ODM(Original Design Manufacturer)

委託側が企画を行った製品を、受託側が設計から製造まで行い、委託側のブランドで販売(例:Xiomi)

メリット・デメリット

メリット(委託側) デメリット(委託側)
  • 受託側の製造能力・ノウハウを利用できる
  • 製造(ODMの場合は設計含む)にかかる設備投資・人件費がかからず、変動費化できる
  • 製品の企画・開発に自社リソースを集中的に投入可能
  • 増産や製造ラインの変更に融通が利かない(例:新製品製造用のラインを立ち上げる場合)
  • 製品の品質が受託側の技術力や設備に依存する
  • 製造(ODMの場合は設計含む)のノウハウが自社に蓄積されない

⑤直接販売

自社の製品を海外の顧客に直接販売する方法です。外国語Webサイトを運用し外国企業と直接取引を行うパターン、越境ECサイトを構築し自社製品を海外顧客に販売するパターンも直接販売に分類されます。

自社に貿易や海外取引のノウハウが既にある場合、海外顧客と直接取引をしたい場合、また越境ECで販売しやすい製品(例:小型・軽量、単価が低い、使用法が簡単なもの)を販売する場合に向いている方法だと言えます。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 外部に支払う費用の削減(例:商社や販売代理店のマージン)
  • 市場・顧客ニーズを直接入手可能(顧客対応やWebサイト運用を通して直接顧客ニーズを把握できるため)
  • 社内のノウハウ蓄積、社員の育成
  • 海外取引の負担・リスクを自社で対応(例:顧客開拓、海外コミュニケーション、法律知識、貿易実務、物流業者の選定、人材育成)
  • ノウハウや知見が必要(例:海外顧客向けWebサイトの制作・運用、言語対応)

自社にあった海外進出方法の選び方

以上5つの方法を踏まえた上で、自社にあった海外進出方法の選び方を見ていきましょう。今回は、製品の「製造」が目的である場合と製品の「販売」が目的である場合の2つの場合に分けて解説します。

以下の表に、企業が抱えている課題とその企業が取るべき進出方法をまとめています。

「製造」が目的の場合

取るべき方法 課題
①現地法人の設立(独資)
  • 自社だけで出資額の負担を負うことができるか
  • 販売を伴う場合、販売網の構築を自社で行うことができるか
  • 自社が進出しようとする国や事業内容において、外国企業の独資規制がないか
①現地法人の設立(共同出資)
  • 共同出資するパートナー企業を見つけられるか
  • パートナー企業との現地法人設立の合意形成にかかる手間と時間を許容できるか
  • パートナー企業と経営方針、配当方針等に関して対立衝突するリスクを回避できるか
  • パートナー企業との共同経営を現地でうまく進める経営力があるか
④現地委託生産
  • 増産や製造ラインの変更に融通が利かないリスクを許容できるか
  • 受託企業の品質や技術力、設備は自社の要求を満たしているか製造(ODMの場合は設計含む)のノウハウが自社に蓄積されないことは自社の経営方針にそぐわなくないか

「販売」が目的の場合

取るべき方法 課題
②販売代理店取引
  • 販売力があり、信頼できる販売代理店を見つけられるか
  • 販売代理店の価格やサービス品質の管理ができるか
  • 現地の市場・顧客情報を販売代理店から入手する仕組みを作れるか
③商社・輸出業者
  • 自社製品を海外で販売するためのネットワークを有する商社の候補があるか
  • 商社のマージンを考慮して持続可能な事業計画を作成できるか
  • 自社に海外進出のノウハウが蓄積されないことを許容できるか
  • 市場・顧客ニーズ(顧客の反応)を把握できそうか
⑤直接貿易
  • 貿易海外取引の負担・リスクを自社で対応できるか
  • 海外顧客向けWebサイトの制作等を行うノウハウや知見が社内にあるか

まとめ

本記事では、以下の5つの海外進出方法を解説しました。

  1. 現地法人の設立:進出先の国で工場を設立し生産拠点を設ける方法
  2. 販売代理店取引:自社製品を現地の販売代理店に販売代行してもらう方法
  3. 商社・輸出業者:自社製品の輸出・販売業務を商社に委託する方法
  4. 現地委託生産:進出先の国で他社の製造設備を利用し製品を製造(OEM)もしくは設計・製造(ODM)を行う方法
  5. 直接販売:海外企業と直接やりとりを行い、自社製品を販売する方法

自社の海外進出の方法を決める上で、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。

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