中小製造業が技術レベルを一段上げるために取り組めること

【執筆者紹介】一之瀬 隼
この記事の執筆者
一之瀬 隼
現役エンジニア、製造業系ライター
執筆テーマ:標準化、自動車、ロボット、他製造業全般

【経歴】
工学系の大学を卒業後、現職に就職し組み込みシステム開発のエンジニア業務に従事。先行開発、量産開発と並行しながら、技術標準化や海外子会社への技術伝承を通して会社を強くする活動に取り組む。
自動車を軸に材料・生産技術・開発方法など、現役エンジニアとしての視点を文章に落とし込むことを意識しながら、ライター活動を行っている。
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製造業のエンジニアで、製造業系ライターとして活動している一之瀬です。

新製品の開発や従来と異なる業界・技術領域への進出など、新しい取り組みをする場合には、社内の技術レベルを上げる必要があります。ただ、技術レベルを高めるといっても、「どの領域をどれまで強化すればいいのか」や「どのような方法で強化すればいいのか」を明確にするのは簡単ではありません。

特に中小企業の場合には、限られた人材で多岐にわたる仕事を回していることが多く、新しいことに取り組む時間を確保するのは困難です。この記事では、今よりも技術レベルを一段上げるための取り組みについて紹介します。

技術レベルを上げるための目標設定

技術レベルを上げるためには、目標を設定する必要があります。目指すべき場所が明確になっていないと、どのように取り組めばいいか決められません。

自社の技術レベルを把握する

目標を設定するためにまず行うのは、自社の技術レベルを把握することです。現状を把握することで、後ほど設定する目標とのギャップ、目標までの距離と方向性が明確になり、具体的な対策を決めやすくなります。自社の技術レベルを把握する際には、同じ業界内の他社と比較するのがおすすめです。他社に対して優位性を持っている部分、劣っている部分などを明確にすれば、自社の強みと弱みが明確になります。

また、お客様からの期待に対する自社の技術レベルを把握することも重要です。過去にお客様からいただいた相談の中で、自社で対応できたもの・できなかったものを整理すると、期待に対して自社の技術レベルがどの程度なのか把握できるでしょう。

目標を設定する

今の技術レベルを明確にできたら、次は目標を設定します。目標を明確に定め、一緒に働く仲間に共有することで、一緒に働く社員とも協力して取り組める体制を構築できます。目標を決める際には、最初に確認した他社との比較やお客様からの期待の中で、自社の強みをさらに高めたり、弱みを補強したりすることが考えられます。

限られたリソースの中で効果を出すためには、強みをさらに磨き、お客様の要望に応えられるようにするといいでしょう。例えば、加工精度や製品品質の向上、保有している技術との相乗効果が期待できる新材料の加工技術習得などが考えられます。

技術レベルを高める取り組み(社内)

ここからは、実際に技術レベルを高めていく際の取り組みについて、まずは社内での取り組みから紹介します。

PDCAサイクルを回す

現状と目標のギャップが明確になっているので、そのギャップを埋められるように具体的な取り組みに落とし込んでいきます。具体的には、自社の技術レベルが目標に対して不足している要因を解析し、どうしたらうまくいくのか検討します。その結果を元に、取り組み計画を立てましょう。

このように日常業務の中で、短期的にではなく中長期的にPDCAサイクルを回すことで、徐々に知見を蓄積し、技術レベルを向上させていきます。

情報を発信する

情報を社内から社外に発信することで、技術レベル向上につながる可能性があります。発信するためには、受け手が有益に感じるコンテンツが必要であり、それを生み出すために新たなチャレンジに取り組む習慣ができます。

また、発信した情報を受け取った方からのフィードバックを受けられれば、そこから始まる交流を通して新たな知見を得られることもあるでしょう。

技術レベルを高める取り組み(社外)

次に、最初から社外と関わることで技術レベルを高める取り組みについて紹介します。

技術を持っている企業に直接聞く

自社内での取り組みだけでは目標とする技術レベルへの到達が難しい場合、既に技術レベルが高い企業に直接聞くのも、有効な方法です。同業の企業で競争相手しかいない可能性もありますが、コミュニケーションを取る中でお互いの得意な分野で技術交流をすることで、新たな可能性が広がります。

また、お互いに切磋琢磨できるような有益な関係を築ければ、自社の技術レベル向上だけでなく、業界の発展につなげられる可能性もあるでしょう。

お客様の力を借りる

社内だけでは求められている技術レベルの明確化が十分にできなかったり、方向性に迷ったりする場合には、付き合いのあるお客様に協力していただくのも有効です。「今扱っている製品は他にどのような使われ方があり、どの程度の品質や精度が求められるのか?」や「今後はどういう材料が加工できると強みになるのか?」など、率直に相談してみるといいでしょう。

自社の技術レベルが上がり、対応できる範囲が広がることは、お客様にとっても有益です。遠慮せずにコミュニケーションを取ることで、関係性を深められる可能性もあります。

技術レベルを高める取り組み(個人)

個人の取り組みで、組織としての技術レベルを高められます。レベルの高い組織は、所属する個人のレベルも総じて高いことが多いです。例えば、異業種の製品に自社の技術を活用できないか考えたり、自分が得意な技術を突き詰めていったりすることで、新たな領域が切り開ける可能性があります。

まとめ

会社として新たな領域にチャレンジするためには、今よりも高い技術レベルが必要になる場合が多いです。そこで、自社の現状を分析し、目標を明確にすることで、どのようなアクションを取ればいいかが明確にできます。社内でPDCAを回したり、社外の技術を持っている企業やお客様との交流を通して、技術レベルを高められるでしょう。また、個人としての取り組みも非常に重要です。

自社の技術レベルを高めることで、お客様の要望に応えたり、今までにはできなかった提案をできるようになったりするため、自社の可能性を大きく広げられるでしょう。

この記事の執筆者
一之瀬 隼
現役エンジニア、製造業系ライター
執筆テーマ:標準化、自動車、ロボット、他製造業全般

【経歴】
工学系の大学を卒業後、現職に就職し組み込みシステム開発のエンジニア業務に従事。先行開発、量産開発と並行しながら、技術標準化や海外子会社への技術伝承を通して会社を強くする活動に取り組む。
自動車を軸に材料・生産技術・開発方法など、現役エンジニアとしての視点を文章に落とし込むことを意識しながら、ライター活動を行っている。
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