製造業がアカウントベースドマーケティングに取り組むべき理由とは?

マーコム・サポーターの椎名です。中小企業や個人事業主のマーケティング活動をサポートする傍ら、ライティング活動も行っています。今回は、近年注目されつつあるアカウントベースドマーケティングについて取り上げます。

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは?

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは、B2B(BtoB)企業における代表的なマーケティング戦略のひとつです。あらかじめターゲットとなる企業を定義し、各々の企業にあった最適なアプローチをかけるもので、日本では古くから浸透している手法といえます。

一方、Webマーケティングの世界では、比較的新しい考え方です。従来のWebマーケティングでは、企業というより個人単位でフォローするアプローチが主体でした。しかし近年、企業情報連携ツールの高度化で、ABMがWebマーケティングでも注目されるようになっています。

製造業が今、取り組むべき理由

それでは、なぜ今ABMが注目されているのでしょうか?果たしてABMは製造業で取り組むべき施策なのでしょうか?

AMBが注目を集めた背景には、Webマーケティング、特にマーケティングオートメーション(MA)ツール活用におけるビジネス案件化での課題があると考えられます。ここ数年、日本でもMAツールを導入し、Webサイトに誘致した見込み客をツール活用してフォローする企業が増えてきました。

一方、ツールを導入してみたものの、「何も変わってない」という話もよく聞きます。例えば、獲得したリードが営業側で放置されてしまったり、一度はアプローチするものの、その後のコミュニケーションが継続しなかったりするものです。Web上の顧客行動は追えても、デジタルからアナログに活動が移行してから顧客行動が可視化できなくなることもよくあります。

なぜ、Web上の見込み客は放置されてしまうのでしょうか?これはそもそもターゲッティングが営業視点になっていないことが大きな原因です。「どこの馬のホネかわからない」企業、担当者にもかかわらず、Webに頻繁にアクセスしているという理由だけで「ホットリード」となってしまうことがあります。顧客になりえたとしても、ECサイトでディストリビューター(卸売業者)がフォローするような小口案件や、実験用のトライアルのケースも多いです。当然、営業の食指が動きません。営業サイドの目には、効率的な刈り取りのための仕組みどころか、かえって非効率を助長しているように映るわけです。

これらの問題は、営業とマーケティングの溝のような問題と言われていますが、要は営業視点でフォローすべき顧客が定義されていないことで起きている問題ともいえます。つまり、あらかじめターゲットを営業視点で定義してフォローすれば解決できるのです。ABMはまさにその解決策となる手法だといえます。

ABMで検討すべきこと

ここでは、Webを活用したABMで検討しておきたいことを3ステップでご紹介します。

  • Step1:ターゲットを定義する
  • Step2:顧客データを名寄せする
  • Step3:顧客の行動を管理する

Step1:ターゲットを定義する

ABMで初めにやるべきことは、自社でターゲットとしたい「企業」、「人」、「ステータス」の定義です。ここで重要なのは、「営業側と事前に意見整合しておく」ことです。

まず「企業」については、自社のセールス対象となる顧客がWebでフォローすべき対象としてよいと思いますが、営業の方針によっては、対面だけで充分なものもあるかもしれません。一般的には、営業のマンパワーが不足していて非対面のサポートを営業側が必要としているかどうかの観点で選出しておくとよいとされています。

次に、「人」について定義すべきこととは、どういう部門・役割にいる人なのかという点です。これは、自社製品・サービスの選定にどういう部門が関わるのか、決定権は誰がもっているのかの視点が必要になります。

最後の「ステータス」は、購買プロセスにおけるターゲットの現在の段階を指します。つまり、情報収集段階なのか比較検討中なのか、はたまたほぼ決定しているかを定義しておくといいでしょう。

Step2:顧客データを名寄せする

ターゲットを決めたら次に、自社の顧客データ(ハウスリスト)のデータをきれいにし、名寄せを行った後で、必要な情報を付与します。社内で保有している顧客データは、ユーザー自身がWebサイトで登録した情報や、古い名刺情報などが混在しています。そのため、表記ゆれやデータの抜けなどが激しいです。M&Aなどで社名が変更になっていることも多々あります。

データの問題はそれだけではありません。例えば、同一人物が重複して登録されていたり、会社や部門単位でひとつのアドレスを使っていたりする場合もあります。

顧客データが何千件、何万件と大量に存在する場合、それをマニュアルで解決するのに膨大な時間がかかってしまいます。情報は日々変わっていくので、一度だけ整理すればよい話ではなく、定期的に更新する必要があります。こうした作業を効率よく行うには、「名寄せツール」や外部の専門業者への委託が必要です。

なお、外部業者に委託する場合、顧客データのボリュームを考慮して依頼するといいでしょう。なぜなら、料金は『基本料金+データ件数×1件当たりの単価』で決まるからです。仮に1件あたりの単価が数円単位でも、データ件数が数万件になると費用がかさんでしまいます。

予算を抑えたい場合は、全部ではなく絞って依頼することをおすすめします。例えば、何年も前に登録されたままアクセス履歴が全くないデータは依頼対象から外すという選択もありです。

Step3:顧客の行動を管理する

顧客データが整備されたら、後は日々ユーザーのWeb行動をチェックし、管理します。ユーザーがどう行動すると「ホット」なのか、どの状態になったらアプローチするのか、事前の定義に沿って活動します。

こうしたユーザーフォローに関する定義は、事前に営業と整合しておく必要があります。ただし、単にフォローするかどうかを決めておくだけでは不十分です。BtoB製造業では、1回のアプローチで商談化するものは少なく、ビジネスが成立するまで、ある程度長い期間がかかります。そのため、営業に引き渡した後も、見込み客の足跡を共有できる仕組みづくりが必要です。営業が連絡後、どうなったかわからなくなると成果の可視化ができず、組織的なフォローが行えなくなるからです。

例えば、営業フォローの結果、まだ検討段階に入ってない客はFtoFでフォローするよりWeb 活用した方が効率的かもしれません。また、マーケティングとセールスの相互フォローも必要になってきます。

従来、マーケティング部隊が育成した見込み客を営業がフォローするという図式がありました。一方、実際の客側の行動としては、対面と非対面の両方から同時進行で情報収集しているケースが多いです。そのため相互でフォローし合うことがより成果につながるのです。

実際に、「誰が」「どう」フォローするかについては、ターゲットの優先度に合わせて、事前にチャネルと方法論を決めておいた方がいいでしょう。その上で、コンタクトした結果をWebマーケティング側と共有し情報管理しておくのがベストです。

コンテンツで気を付けるべきポイント

ここまでで、ABMで検討すべきことを3ステップでお伝えしました。ターゲットや顧客情報管理はABMを行う上で大切なことです。しかし、それ以上に重要な肝となることがあります。それはコンテンツです。

コンテンツが顧客目線で作られていない場合、ターゲットをWebサイトに誘致し、行動を促すことはできません。典型的な悪い例としてあげられるのが、単なる自社商品の紹介だけをうたったもの。既に取引があり、その製品をピンポイントで探している顧客にはよいですが、その製品の存在を知らない、興味もない相手にとって必要な情報にはなりえません。

では、ターゲットを行動に促すコンテンツとはどんなものでしょうか?一般的には、ターゲットが「いま」抱えている課題やニーズが自社製品・サービスで解決できるコンテンツが望ましいと言われています。その最強のコンテンツが「事例解決型コンテンツ」です。

ただし、ひとくちに「事例解決型」といっても、制作するのはそう簡単ではありません。というのは、こうしたWebマーケティングのターゲットにしたいのは、新しい業界や応用用途の開拓だったり、新製品の拡販だったりするので、そもそも事例がないことが多いのです。こういうときは、インセンティブを付けて、テストマーケティングに付き合ってくれる会社を探すところから始めるといいでしょう。あるいは、仮説のもとに架空の事例を作るという手段もあります。

ABMは中小企業に向いているのか?

ABMのメリットとして、セールスの効率化がありますが、一方で、コンテンツ制作や顧客管理に膨大なリソース・費用がかかるのも事実です。ターゲットが明確でない場合、かえって無駄なフォローが増えることになってしまいます。

では、リソースが少なく、予算がかけられない中小企業にWebを活用したABMは向いていないのでしょうか?もし、現在の営業部隊のリソースで、顧客フォローが十分ならば、導入しなくてもいいかもしれません。しかしながら、リソース不足で営業活動に課題を抱えている中小企業には、有効な手法です。

対面営業の場合、見込み客に24時間365日フォローすることはできませんので、いつ顧客が検討し始めるのか、あたりをつけてフォローすることになります。顧客との関係性が構築途上であったり、営業リソースが不足していると、顧客の検討タイミングにタイミングよくアプローチするのは難しいでしょう。一方、Webの場合、顧客が欲するコンテンツさえ仕込んであれば、顧客の情報収集タイミングに合わせて、アプローチできます。

また、Webを活用したABMは、特定のキーアカウント向けでなく、未開拓の業種全体を攻略することも可能です。プログラマティックABMという1対多のアプローチ手法が有効です。担当者一人でもテクノロジーの力で、数百数千のアカウントを自動的にターゲッティング、パーソナライズが可能になります。

まとめ

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは、あらかじめターゲットとなる企業を定義し、各々の企業に合った最適なアプローチをかけるものです。営業視点でフォローすべき顧客をあらかじめ定義しておくため、従来MAツールを活用したWebマーケティングの課題だった営業連携上の課題が改善されます。

Webを活用したABMでは、まずターゲットを定義し、顧客データを整備して連携に必要な情報を付与します。セールスに渡す見込み客については、「誰が」「どう」フォローするか、ターゲットの優先度に合わせて、チャネルと方法論を決めておくのがよい方法です。その上で、コンタクトした結果をWebマーケティング側と共有し顧客の行動を管理しておくのがおすすめです。

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