積極的に休眠技術活用型のオープンイノベーションに取り組むメーカー紹介

【執筆者紹介】一之瀬 隼
この記事の執筆者
一之瀬 隼
現役エンジニア、製造業系ライター
執筆テーマ:標準化、自動車、ロボット、他製造業全般

【経歴】
工学系の大学を卒業後、現職に就職し組み込みシステム開発のエンジニア業務に従事。先行開発、量産開発と並行しながら、技術標準化や海外子会社への技術伝承を通して会社を強くする活動に取り組む。
自動車を軸に材料・生産技術・開発方法など、現役エンジニアとしての視点を文章に落とし込むことを意識しながら、ライター活動を行っている。
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製造業のエンジニアで、製造業系ライターとして活動している一之瀬です。

優れた技術や製品を持っていたとしても、自社だけでその技術を十分に活用することは簡単ではありません。ここ数年でオープンイノベーションに取り組むメーカーが増え、社外との取り組みにより、優れた技術が活用される機会が増えています。

オープンイノベーションとは、自社が持つリソースに外部の技術やアイディアを組み合わせることで、新たな製品やサービスを生み出す方法です。オープンイノベーションには、「不足技術補完型」と「休眠技術活用型が」あります。「積極的に不足技術補完型のオープンイノベーションに取り組むメーカー紹介」の記事では、不足技術補完型のオープンイノベーションについて解説しました。

この記事では、休眠技術活用型のオープンイノベーションに取り組むメーカーの事例に加えて、参考にすべき技術を紹介する際のポイントを解説します。

休眠技術活用型のオープンイノベーション

休眠技術活用型のオープンイノベーションとは、自社が持つ優れた技術や製品の活用法を社外から公募する方法です。社外のアイディアを取り入れたり、社外にある技術と組み合わせたりすることで、思いつかなかった自社技術の新たな活用法が見つかる可能性があります。今まで眠っていた技術を製品化できることもあるでしょう。

休眠技術活用型のオープンイノベーションを実行する場合、社外に対して自社技術をよく理解してもらうことが必要です。

休眠技術活用型に取り組むメーカー例

休眠技術活用型のオープンイノベーションに取り組むメーカーを、3社紹介します。

京セラ株式会社

京セラは、自社の独自技術を活用したイノベーションを起こすために、保有する特許技術のライセンス提供を行っています。具体的に次のような技術です。

  • においを感知する嗅覚センサー
  • スマホなどに手をかざして操作するエアジェスチャ
  • スマホで内臓脂肪を見える化するデイリースキャン®️

ライセンス提供を受けることで、社外の企業は京セラが保有する特許技術を活用した製品の開発や販売が可能です。

セイコーエプソン株式会社

エプソンは、持続可能でこころ豊かな生活を実現するイノベーションを起こすことを目的とした「Epson Innovation Platform」を開設しています。この中で、エプソンが保有する「省・小・精の技術」を活用し、人材交流や社外パートナーとの共創などに取り組んでいます。

具体的なテーマは、インクジェット技術の応用やDXイノベーション、光学エンジンモジュール、センシングデバイスなどです。

森永製菓株式会社

森永製菓は、創業120周年の取り組みとして、学生を対象にしたオープンイノベーション企画を開催しました。具体的には、森永製菓が持つ技術(特許)シーズを活用した商品を学生に提案してもらい、コンテストで上位に入賞した提案を商品化していくという企画です。

参加する学生にとっては、コンテスト入賞時の賞品や提案企画の商品化、森永製菓社員との交流がメリットとなります。技術シーズとしては、抗歯周病菌組成物や歯磨き用の研磨剤、凍結乾燥食品とその製造方法などが紹介されました。

参考にすべき技術紹介のポイント

3社の休眠技術活用型の事例から、参考にすべき技術紹介のポイントを3つ解説します。

自社製品・技術の活用方法を明確に示す

自社の製品や技術について、読み手が理解できるように紹介しなければなりません。例えば、社内でしか通用しない言葉ではなく、一般的な言葉で説明するという点は重要です。また、自社が想定している技術の活用方法について紹介することで、読み手が他の活用方法をイメージしやすくなります。

エプソンは、自社が持つPrecisionCoreテクノロジーの特徴だけでなく、想定される技術活用方法として、ディスプレイやエレクトロニクス領域を示しています。

技術に関する周辺情報を発信する

自社の持つ技術や特許そのものを紹介するだけでなく、周辺技術や技術に関連するニュースを発信すると効果的です。これらの発信から、自社の技術に興味を持ってくれることがあります。また、自社の技術が受賞した場合は積極的に発信することで、興味を持ってくれる企業が増える可能性があります。

例えば、京セラは知財ニュースという形で、低比重・低熱膨張コージェライト材料に関する特許技術が「令和2年度全国発明表彰 発明賞」を受賞したことを紹介しています。

消費者からアイディアをもらえる施策に取り組む

自社の顧客が消費者の場合には、イノベーションの相手を企業に限定せず消費者向けの情報発信や企画を行うことも選択肢の一つです。消費者のアイディアを取り入れたオープンイノベーションを行うことで、求められている商品を生み出せる可能性が高くなります。

森永製菓は、対象を大学生に絞ってメリットを掲示し、イベントを開催しました。この取り組みによって、実際に商品化につながるアイディアを得ています。上記のような消費者を巻き込んだ施策も効果的です。

まとめ

休眠技術活用型のオープンイノベーションに取り組むことで、社外のアイディアをうまく活かした商品化を実現できる可能性があります。積極的に休眠技術活用型のオープンイノベーションに取り組む企業の事例を見ると、自社の保有している技術や活用方法を社外にうまくアピールしています。

自社の技術をアピールするためには、製品や技術だけでなく周辺の情報も必要です。特に、顧客が消費者の場合には、企業向けのアピールだけでなく、消費者にも協力してもらえるような施策を取り入れましょう。テクノポートでは、自社の技術をわかりやすく伝え、アピールするために必要不可欠な技術マーケティングや技術ライティングのサポートを行っています。ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の執筆者
一之瀬 隼
現役エンジニア、製造業系ライター
執筆テーマ:標準化、自動車、ロボット、他製造業全般

【経歴】
工学系の大学を卒業後、現職に就職し組み込みシステム開発のエンジニア業務に従事。先行開発、量産開発と並行しながら、技術標準化や海外子会社への技術伝承を通して会社を強くする活動に取り組む。
自動車を軸に材料・生産技術・開発方法など、現役エンジニアとしての視点を文章に落とし込むことを意識しながら、ライター活動を行っている。
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