【2021年版】中国の製造業(中国製造2025・主要産業・進出している日本企業も調査)

テクノポートの稲垣です。今回は「中国の製造業」を紹介します。

新型コロナウイルスによるパンデミックの起点となってしまった中国ですが、現在は世界の中でもトップクラスの速度で経済の回復を見せています。今回は、その中国の製造業の現状と今後を進出する日本企業の視点から掘り下げていきます。

製造業全体

次に中国の製造業の調査結果を紹介します。下の図は中国の製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:China: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 統計を開始した2004年から増加傾向が続く
  • 2019年の製造業が生み出す付加価値は3.9兆ドルで世界第1位(世界第2位はドイツ:0.7兆ドル)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年3月に40.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年11月に54.9を記録
  • 米中の貿易摩擦により、中国国内での研究開発に力を入れ、国内でのイノベーションに注力する動きが広がっている

今後

  • 中国製造2025(2025年までに世界の製造強国の仲間入りを目指すべく策定された基本方針)を推し進めるために10の重点産業と23の分野に注力する見込み

中国製造2025

中国政府は2015年5月に自国の製造業を発展させる国家戦略として「中国製造2025」を発表しました。以下では、中国製造2025の概要を説明します。

中国製造2025とは?

2025年までに世界の製造強国の仲間入りを目指すために策定された基本方針のことです。中国製造業を再構築し、最新の製造技術を導入することで、中国製造業の国際的な競争力を高める政策が含まれています。

2050年までの中国製造業の今後の方針は、以下の通りです。
2020~2035年:製造強国の中堅ポジションを目指す
2035~2050年:製造強国のトップグループ入りを目指す

背景

中国政府が中国製造2025を策定するに至った、5つの理由を説明します。

①国際的な競争力

現在の中国製造業は、付加価値の低い分野での労働集約型の産業が中心であり、付加価値の高い製造業分野においては外国企業へ依存せざるを得ない状況が続いてきました。外国企業への依存が続いた結果、中国企業における技術開発は遅れ、国際的な競争力が低くなっています。中国製造2025には今後、中国企業が付加価値の高い産業での研究開発を行い、国際的な競争力を高めていく狙いがあります。

②中国製品の品質向上

付加価値の高い産業への参入は、中国製品の品質を向上させる狙いもあります。従来の中国企業はバリューチェーンの上位に上がることが難しいため、低価格競争に力を入れる傾向がありました。低価格競走で勝ち残るためには、多少の品質を犠牲にしても、安価な製品を大量生産することを重視する傾向がありました。それにより、競争力を保ってきました。しかし、こうした品質を犠牲にした低価格競争には限界が来ており、中国製品の品質向上が必要だと中国政府が感じていることも理由の一つに挙げられます。

③人件費の高騰

下の図は2009年から2019年までの中国の人件費の推移を示すグラフです。


データ引用元:China Labor cost index, December, 2019 – data, chart | TheGlobalEconomy.com

グラフから分かるように、中国の人件費は年々増加を続けており、多くの企業にとって従来通りの大量な労働力の確保が難しくなっています。人件費の高騰に加え、現在の中国製造業の中心は労働集約型の産業であるため、生産性を保ちながら人件費を抑えるために、ロボットをはじめとする新しい製造システムの導入が必要とされています。

④技術革新

中国製造業企業が研究開発にかけられる予算は、ドイツや日本をはじめとする他の工業先進国の製造業企業と比べ、33〜50%に限られてきました。その結果、多くの中国製造業企業は研究開発に十分な投資ができず、技術革新が生まれにくい環境を作り出していました。技術革新が起こりにくい環境は、中小企業の競争力の低下につながり、中小企業の平均寿命が短くなるという悪循環を生み出していました。中国製造2025では、この問題に対処するために、中国製造業への投資を強化する方針も含まれています。

⑤高齢化

中国では、生産年齢人口(15〜64歳)が2013年をピークに減少を続けており、中国全体の人口減少も早ければ2027年にスタートする見通しです。もしこの通りの高齢化が進んだ場合、中国の一人当たりのGDPは先進国の半分程度でありながら、高齢化社会に突入することになります。すると、現在の労働集約型の産業に限界が来る可能性が高く、先進技術を応用した製造業の自動化が必要になります。

10の重点産業

下の表は、中国製造2025において、中国政府が特に力をいれて技術革新を推し進めようとしている分野を表しています。


出典:中国製造2025重点領域技術創新路線図

上記の10の分野において、以下の具体的な数値目標が設定されています。

  • 2020年までに基本コンポーネントおよび基本材料の40%を国産化、2025年までに70%に拡大
  • 2020年までに営業コスト、生産サイクル、製品不良率を30%削減し、2025年までに50%削減
  • 2020年までに15程度、2025年までに40程度のイノベーションセンターを設立
  • 2025年までに国産の電気自動車とプラグインハイブリッド車(PHEV)の国内市場シェアを70%以上に拡大
  • 2025年までにNEV(新エネルギー車)の国内市場シェアを80%以上に拡大

世界へ与える影響

それでは、中国製造2025が諸外国へ与える3つの影響について考えてみましょう。

①中国市場へのアクセスが難化

長期的な視点から考えると、中国企業が独自の技術開発を進め高付加価値産業への進出が進むと、外国企業への依存が減ることが予想されます。その結果、中国国内の需要は中国企業が満たすという状況になる可能性も考えられます。そのため中国製造2025で重点になる10の産業に関わる分野において、中国市場に販路を開拓することは今まで以上に難しくなると思われます。

②中国企業への部品、技術の提供機会が増加

研究開発を進めるためには、一定の材料、部品、技術、設備が必要になります。中国企業が作ることができない部品、中国企業が保有していない設備、技術は外国企業に頼らざるを得ないのが現状です。そのため短・中期的な視点から考えると、中国企業が保有していない先端技術を保持する企業は、中国企業からの需要の拡大が期待できます。

実際に既に中国進出を果たしている企業は、現地中国企業との部品提供の提携、技術提携を結ぶことにより、利益を得ている報告がされています。そのような現地企業は、中国国内の需要も敏感に察知できるため、中国企業の需要をピンポイントに満たすことで、利益を享受できる可能性が高いと言えます。

③産学協同の強化

中国製造2025には、中国国内における研究開発を推し進める方針が含まれています。したがって、外国企業が研究開発の拠点となる中国の大学と共同研究する機会が今まで以上に拡大する可能性があります。

参考資料

中国製造業の主要産業

次に、中国製造業の主要産業とそれぞれの分野における代表企業を紹介します。

※企業のリンクは日本法人がある企業は日本法人のものを使用しています。

①白物家電産業

▶ハイアールグループ(Haier Group)

  • 本社:山東省青島市
  • 事業内容:家電(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、エアコン、キッチン家電など)の製造・販売
  • 企業概要:世界最大の家電ブランドの一つ。グループ傘下には7つの家電ブランド(Haier/Casarte/GE Appliances/Leader/AQUA/Candy/Fisher&Paykel)を有しており、世界中の消費者のニーズをカバーする。
実績
  • 世界販売台数シェア:2020年の「Global Major Appliances 2020 Brandランキング」において大型家電・ブランド別世界販売台数シェアで12年連続で世界第1位
  • 冷蔵庫、冷凍庫、ワインクーラー、洗濯機:2020年の世界シェアは世界第1位

▶美的集団(Midea Group)

  • 本社: 広東省仏山市
  • 事業内容: 家電(エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、ウォーターサーバーなど)の製造・販売
  • 企業概要: 広東省の小さな村のビン蓋製造の小さな会社からスタートし、金属部品、金属製品、そして、家電製造へと事業規模を拡大。現在は産業用ロボット企業を買収し、高付加価値産業への進出を目指している。
実績
  • 炊飯器:世界シェア第1位
  • ウォーターサーバー:世界シェア第1位

▶グリー・エレクトリック(Gree Electric Appliances Inc.,)

  • 本社: 広東省珠海市
  • 事業内容: 住宅空調および家電(扇風機、ウォーターサーバー、ヒーター、炊飯器、空気清浄機、電気ケトル、加湿器など)の製造・販売
  • 企業概要: 世界最大級の住宅空調メーカー。2020年の中国家電企業トップ10における調査結果では、時価総額で3210億元(約4兆8150億円)で中国家電メーカーの中で2番目に企業価値が高かった。
実績
  • 家庭用エアコン:2019年における世界シェアは18.6%で世界第1位

参考資料

②デジタルデバイス産業

▶ファーウェイ(Huawei)

  • 本社: 深圳市
  • 事業内容: 通信事業者向けネットワーク事業、法人向けICTソリューション事業、コンシューマー向け端末事業
  • 企業概要: 世界有数のICTソリューション・プロバイダー。法人向けの通信機器の一般消費者用のSIMフリースマートフォンをはじめとするデジタルデバイスの製造・開発・販売を行う。
実績
  • スマートフォン:2020年の世界シェアは13.5%で世界第3位
  • 企業価値:2020年のBrandZTMによる世界で最も価値のあるブランド100で世界第45位

▶シャオミ(Xiaomi)

  • 本社: 北京市
  • 事業内容: デジタルデバイスの開発・製造・販売
  • 企業概要: 2010年にスマートフォンメーカーとして創業。現在では、主力製品であるスマートフォンに加え、その他のスマートデバイス(ウェアラブルバンド、ワイヤレスイヤフォン、スマート白物家電)の開発・販売も行う。
実績
  • ウェアラブルバンド:2018年の出荷量は21.5%で世界第1位
  • スマートフォン:2020年第三四半期の世界シェアは13.1%で世界第3位

▶オッポ(OPPO)

  • 本社: 広東省東莞市
  • 事業内容: デジタルデバイスの開発・製造・販売
  • 企業概要: 2003年に中国の大手電子機器メーカーから分社化する形で設立。2011年に子会社のOPPOモバイルを通してスマホ市場に参入。中国以外にアジアを中心に市場を拡大している。
実績
  • スマートフォン:2020年7月から10月のSIMフリースマートフォン(Android)の販売台数シェアは21.5%で世界第1位
  • スマートフォン:2021年1月の中国国内のシェアは21%で第1位

参考資料

③自動車産業

▶上海汽車集団(SAIC Motor Corporation Limited)

  • 本社:上海市
  • 事業内容:自動車の製造・販売
  • 企業概要:中国国内の上場企業として最大の完成車メーカーであり、乗用車や商用車のほか、自動車部品の製造も行う。
    現在では、自動車業界のトレンドである省エネ(水素自動車の開発)、自動運転技術(2025年実用化予定)、シェア化などの先端技術の開発を推進している。
実績
  • 自動車:2020年の自動車の販売利益は世界第7位

▶吉利汽車集団(Geely Automobile)

  • 本社:杭州市
  • 事業内容:輸送用機器
  • 企業概要:1986年に設立され、1997年に自動車産業に参入し現在では中国を代表する自動車メーカーの一つに成長。2021年3月に電気自動車ブランド「Zeeker」を発表し、業界最大手のTeslaと競争する姿勢を見せている。
実績
  • 企業価値:2019年Fortuneが選ぶトップ企業500で世界第220位
  • 企業価値:208年のBrand Finaceが選ぶトップ自動車メーカー20で世界第18位

参考資料

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点から中国の製造業市場を調査した結果です。下の図は中国に進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は2011年に大きく増加したものの、その後は32000社付近で推移
  • 進出日本企業の約4割が製造業関連の企業が占める(卸売業が約3割)

現状

  • 進出地域で最も多いのが中国東部の華東地域で全体の約67%を占める(中でも上海市は全体の約46%を占める)
  • 進出企業の年売上高は、「1~10億円未満の企業」が全体の約31%、「10~100億円未満の企業」が約39%となり、年商100億円未満の企業が全体の約7割を占める
  • 進出した製造業の中でも「金属加工、加工機械製造(切削、旋盤、研削盤による加工、加工機械の製造)」関連の企業が最多

今後

  • チャイナリスク(人件費の高騰、中国人民元安、政府からの環境規制強化指導などのリスク)を危惧し、チャイナプラスワン(東南アジアへ拠点を分散させる動き)を考える企業が増える見通し
  • 2019年の調査によると、中国進出日本企業の8割以上が中国市場での現状維持・拡大を望んでおり、今後も中国ビジネスに対する日本企業の見方は大きく変わらない予想

中国に進出した日本企業

岐阜精機工業

▶基本情報

  • 本社:東京都大田区
  • 従業員数:5人(中国工場170人)
  • 事業内容:プレス加工試作・量産、プレス金型製作

▶概要

自社独自開発のプレス金型を使用し、精密プレス部品・深絞り加工品の製造を行う企業。2002年より中国広東省の工場に生産拠点をすべて移動し現地での製品生産を行う。中国工場では日本スタッフが駐在し品質管理を行う体制をとる。同工場では生産に加えて、近隣の協力工場で製作した金型加工品の検査を行っており、品質管理に注力している。

岐阜精機工業の中国工場に駐在し品質管理を行う波多野さんへのインタビューはこちらです。(2020年2月実施)

株式会社武蔵テクノケミカル

▶基本情報

  • 本社:東京都台東区
  • 従業員数:10人(役員3人除く)
  • 事業内容:工業用洗浄剤の製造・販売

▶概要

工業製品向けの洗浄剤、洗浄システム(洗浄剤+洗浄機)の製造・販売を行う企業。2005年に上海、2009年に深圳に営業拠点を設立。その後2014年に、大連に洗浄剤の工場を設立。工場には日本人スタッフが常駐していないため、品質管理は現地従業員が行う。大連工場では現地日系企業との取引に加え、日本本社への輸出を目的とした製品を製造している。

株式会社大栄製作所

▶基本情報

  • 本社:京都府京都市
  • 従業員数:60人(グループ計150人)
  • 事業内容:精密板金加工品の製作、販売

▶概要

産業用板金製品加工、加工品の販売を行う企業。2003年に同社初の海外工場を上海に設立。同工場では現地の日系企業向けの板金部品の供給を行っており、同工場の顧客の99%を現地日系企業が占める。現地の製造で用いる材料は日系資本の入った現地企業からの調達を行っており、多品種小ロットの部品から大型組み立て部品まで幅広い要求に対応している。

まとめ

今回は中国の製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、中国製造業は新型コロナウイルスの影響から急速な回復傾向を示しており、2020年の最終的な経済活動レベルは、前年とほぼ同水準まで回復したことが分かりました。

また「中国製造2025」に代表されるように、中国政府は先進技術分野を始めとする製造業全般の強化を全面的に推し進めていくことが分かります。

進出する日本企業側の視点から分析すると、年商100億円未満の企業が進出日本企業の約7割を占めており、欧米諸国に比べ進出のハードルが高くないことが予想されます。また、今回紹介した日本企業は現地日系企業への部品調達と日本への輸出を目的とした工場を所有していることが分かります。今回の内容が中国進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

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