世界の製造業⑫「ロシア」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第五弾として「ロシアの製造業」を紹介します。

世界最大の国土を有するロシアですが、東南アジアに比べ日本製造業企業の進出先として候補に挙がることは多くないと思います。しかし、2020年1月の調査によると、在ロシア日系企業の68%が2019年の営業利益見通しを黒字と回答しています。同データからも分かるように、ロシア市場は日本企業にとって利益の見込める市場であると言えます。

今回は、そんなロシア製造業を日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

基本情報

  • 正式名称:ロシア連邦(Russian Federation)
  • 首都:モスクワ(Moscow)
  • 大統領:ウラジーミル・プーチン(2000年5月~2008年5月、2012年5月~)
  • 首相:ミハイル・ミシュスティン(2020年1月~)
  • 通貨:ロシア・ルーブル(1ロシア・ルーブル=1.37円 ※2020年10月2日時点)
  • 人口:約1億4680万人
  • 面積:約1710万km2
  • 公用語:ロシア語
  • 宗教:ロシア正教、イスラム教、仏教、ユダヤ教
  • 平均寿命:男67.5歳、女77.6歳

経済の特徴

強み

  1. 天然資源:世界銀行の推定によると、ロシアが有する天然資源の価値は75兆USドル(天然ガス、木材、鉱物等)
  2. 経済安定性:公口座(政府の資金)と外部口座が強固であるため、外部からの障害による影響を受けにくい
  3. 市場規模:ロシアの名目GDPは1.64兆円(世界で11番目に大きい市場規模)
  4. 変動相場性:ロシア・ルーブルの為替レートが固定されていないため、外部環境に柔軟に対応することができる

弱み

  1. 人口変動:人口は1993年まで単調増加していたがその後は増加、減少を繰り返す
  2. インフラ未整備:2018年の調査によるとインフラ整備度ランキング世界61位(投資の不足が主な原因)
  3. 技術力:外国の技術への依存度が高い(アメリカとヨーロッパ諸国によりオフショア開発を阻害されているため)

産業構造

まずはロシアの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はロシアの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Russia : Sectoral composition of the economy of Russia| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業が減少傾向、サービス業が増加傾向
  • 世界のGDPの1.96%を占める(世界第12位)

現状

  • 製造業のGDPは前年比10%マイナス成長見通し(新型コロナウイルスの影響により、鉱業と輸送車両分野で深刻な打撃を受けたため)
  • 天然ガスによる収益はGDPの3.7%、天然資源による収入がGDPの15.5%を占める

今後

  • 2021年のGDPは2.7%の上昇、2022年のGDPは3.1%の上昇見通し(2022年に新型コロナウイルスの影響から完全に回復する予想)
  • 2020年から2022年にかけて、原油価格の下落により政府の予算が赤字に転じる見通し

製造業全体

次にロシアの製造業の調査結果を紹介します。下の図はロシアの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:Russia : Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2016年以降、製造業が生み出す付加価値は増加が続く
  • 2019年の製造業が生み出す付加価値額は2兆225億ドル(世界第8位)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に31.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に51.1を記録
  • 2020年の製造業の生産高は現在も減少傾向が続く(2020年8月の生産高は前月比-8.0%

今後

  • 2020年のGDPは前年比-4.5%が達成可能である見通し(消費者主導型分野の回復、国家主導型製造業の落ち込み等が要因)
  • 専門家によると、2020年の製造業の生産高は4.7%の減少見通し(2021年は3.4%の増加見通し)

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からロシアの製造業市場を調査した結果です。下の図はロシアに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

現状

  • 2016年の調査によると、製造業は進出企業の43.0%を占める
  • 2016年の調査によると、進出企業の64.7%がモスクワ州に拠点を設けている

今後

  • 2020年6月の調査によると、2021年以降もロシア市場で事業を継続する在ロシア日系企業は約8割
  • 2020年6月の調査によると、事業の拡大を図る在ロシア日系企業の数は約半減

ロシアに進出した日本製造業企業

フラット合成株式会社

▶基本情報

  • 本社:北海道札幌市
  • 従業員数:20人(海外駐在1名含む)
  • 事業内容:プラスチック素材の製造・販売

▶概要

プラスチック製品の製造、プラスチック素材の販売を行う企業。1989年にロシアにサケ・マス人工増殖孵化機器の輸出を開始し、2012年に同地域に事務所を設立。同社は、人工孵化機器のプラスチック製容器の製造に加え、養殖の成功率を高める技術の提供も行う。現在は、ロシア政府の方針によりサケマスの孵化施設の建設が盛んであるサハリン州で販路を拡大。

株式会社ニッコー

▶基本情報

  • 本社:北海道釧路市
  • 従業員数:96人
  • 事業内容:食品加工機械設備の製造・販売

▶概要

食品加工ロボットシステムの企画から製造・販売まで手掛ける企業。ホタテ貝加工機をはじめとする水産加工機械を主軸商品に、2009年ロシア企業との販売代理店契約を締結。「顧客ニーズに対応したものづくり」を基本軸に装置改良を行い、海外パートナー企業との信頼関係を構築。

和同産業株式会社

▶基本情報

  • 本社:岩手県花巻市
  • 従業員数:256人
  • 事業内容:草刈り機、除雪機器、農業機械の製造・販売

▶概要

中・大型除雪機器の国内生産台数トップ企業。2017年秋にジェトロが主催する日露中小企業交流会への参加を機に、2018年に同社初の国際展示会への出展。同年にロシア現地企業とのパートナー契約を締結。現在は、製品購入後のサポート体制構築と海外各地で部品供給先の確保に力を入れている。

まとめ

今回はロシアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、国家主導型製造業は新型コロナウイルスの影響により大きな落ち込みを記録し、回復に時間を要している印象を受けます。

今回紹介したロシアに進出した日本製造業企業はいずれも、ロシアの地理的特徴を上手く利用し自社の製品を販売していることが分かります。今回の内容がロシア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

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