世界の製造業⑨「フランス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第二弾として「フランスの製造業」を紹介します。

2017年の国別日系企業数の調査によると、フランスには719の日系企業が進出しており、ヨーロッパではドイツ、イギリスに次ぐ日本企業が拠点を構えています。イギリスのEU離脱(2020年1月)を皮切りに、ドイツに次ぐ日系製造業企業の進出ターゲット国として注目を集めるフランスを日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

基本情報

正式名称:フランス共和国(République Française)
首都:パリ(Paris)
元首:エマニュエル・マクロン大統領(2017年5月から)
首相:ジャン・カステックス(2020年7月から)
通貨:ユーロ(1ユーロ=125.43円 ※2020年8月21日時点)
人口:約6,699万人
面積:約55万km2
公用語:フランス語
宗教:カトリック(約65%)イスラム教、プロテスタント、ユダヤ教
平均寿命:男78.8歳、女85.2歳

経済の特徴

強み

1. インフラ:世界トップクラスの速さでインフラ整備が進む(フランス政府が力を入れて投資をしていることが要因)
2. 観光業:2017年の調査によると、フランスに訪れる外国人観光客は8,690万人で世界1位
3. 農業:EUの農業生産の約1/5を占める(植物油、穀物、ワインはEUの約1/3の生産高を占める)
4. 国際企業:各種産業で高い競争力を誇る企業を有する(航空宇宙、エネルギー、環境、医薬品、高級品、食品、流通)

弱み

1. 税金:給与税40%は世界で最も高い(政府がインフラ整備に投資する財源を確保するため)
2. 失業率:失業率8.1%はEUで4位(2019年第四四半期の調査)特に若者と高齢者の失業率が高い
3. 競争力:熟練労働者が不足しているため製造業の競争力は停滞傾向

産業構造

まずはフランスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図は1970年から2019年までのフランスの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:France: sectoral composition of the economy| TheGlobalEconomy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • サービス関連業は増加傾向を維持しており、全体の78%を占める
  • 製造業と農業は減少傾向にあり、合わせてGDP全体の22%を占める

現状

  • 2020年のGDP成長率は-7.2%になる見通し(新型コロナウイルスの影響)
  • 2019年の財政赤字はGDPの3.1%を記録し、過去9年間で最も高い数字となった

今後

  • 2021年にGDPは4.5%の回復が見込まれている(新型コロナウイルスの影響が弱まると予想されるため)
  • 失業率(特に若者)は近年増加傾向であり、2020年、2021年ともに10.4%となる見通し(新型コロナウイルスの影響)

製造業

次にフランスの製造業全体の調査結果を紹介します。下の図はフランスの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:France : Share of manufacturing | TheGolobalEconomy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • 統計を開始した1960年から減少傾向が続く
  • 製造業が生み出す付加価値は増加傾向が続く(世界第6位の額)

現状

  • 新型コロナウイルスによる不況により製造業労働者の失業数が増加
  • 2020年4月に31.5%まで落ちたPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年7月に55%近くまで回復

今後

  • 新型コロナウイルスによるロックダウンを機に生産性改善に取り組む企業が増加
  • 医薬品の輸出が急速なスピードで増加(2019年に前年比+4.9%の増加を記録)

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフランスの製造業市場を調査した結果です。下の図はフランスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のことが分かります。

  • 2016年を除いて、統計を開始した2012年から増加傾向が続く
  • 在仏日本商工会議所の正会員数は2000年から210社辺りで横ばいが続く

現状

  • フランスに拠点を持つ日系企業の中で約29%が自動車関連企業電子工学が19%農業・食品関連が11%機械・機械設備が9%
  • フランス進出した日系企業の46%が生産・製造関連のビジネスを行っている

今後

  • 在仏日系企業の内2020年の営業利益見込みが改善すると回答した割合は41.3%(有効回答数80社)
  • 在仏日系企業の内25.0%の企業が景気が回復していると回答、11.9%の企業が景気が悪化していると回答(有効回答数80社)

フランスに進出した日本製造業企業

次に実際にフランスに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社ダイショウ

▶基本情報

  • 本社:神奈川県茅ケ崎市
  • 従業員数:3人
  • 事業内容:受託加工業(切削部品)

▶概要

日仏を技術で繋ぐ「町工場」の名の下に、2015年よりフランス・サンテティエンヌ近郊で事業を展開。試作、中小ロットを対象とした切削部品の受託加工業で欧州進出を果たす。フランスでは現地パートナー企業と連携して加工生産、現地サプライチェーンの構築を行い日本品質の技術を駆使し現地での生産を行う。※詳しくは下記の過去のインタビュー記事を参照。

▶インタビュー記事(株式会社ダイショウの石塚社長)


↑フランス進出の経緯、フランスでのビジネス、フランスでの加工業について


↑フランス進出、フランスの日本企業、フランスのネット事情、フランスの現状について

株式会社由紀精密

▶基本情報

  • 本社:神奈川県茅ケ崎市
  • 従業員数:42名(パートタイマー7名含む)
  • 事業内容:精密部品製造(航空・宇宙・医療・電気電子・機械式時計)

▶概要

2015年5月に航空宇宙関連事業の拡大を目的にフランス子会社「YUKI Précision SAS」を設立。精密切削加工分野の日本企業として初のフランス進出を果たす。2016年5月に日仏の中小製造業4社が共同で精密加工部品の製造を請け負う組織「ACT」を創設。現在では本業の精密切削加工に加えて欧州に進出する日本企業のサポート事業も行っている。

松本機械工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:石川県金沢市
  • 従業員数:94名
  • 事業内容:工作周辺機器の製造販売

▶概要

高性能のパワーチャック・シリンダー・NCロータリーテーブルの製造・販売を行う。フランス・リヨンに販売子会社を有しており航空機エンジン関連の市場開拓に力を入れている。フランスのみならずASEAN各国、台湾・韓国・アメリカを中心に各国のニーズに合わせた販路開拓を展開している。

まとめ

今回はフランスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、フランス製造業PMIが示すようにフランス製造業は新型コロナウイルの影響から回復傾向にあり、生産効率改善への取り組みを始め次のステージへ移行しています。

進出日系企業に着目すると、今回紹介した企業はいずれもフランスの航空宇宙産業関連の市場に自社の製品・技術を展開していることが分かります。このことからもヨーロッパ進出には世界に通用する高い技術力と品質がカギであると分かります。今回の内容がフランス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

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