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技術を蓄積するマニュアル作成1.マニュアル作成のための時間確保

【執筆者紹介】一之瀬 隼
この記事の執筆者
一之瀬 隼
現役エンジニア、製造業系ライター
執筆テーマ:標準化、自動車、ロボット、他製造業全般

【経歴】
工学系の大学を卒業後、現職に就職し組み込みシステム開発のエンジニア業務に従事。先行開発、量産開発と並行しながら、技術標準化や海外子会社への技術伝承を通して会社を強くする活動に取り組む。
自動車を軸に材料・生産技術・開発方法など、現役エンジニアとしての視点を文章に落とし込むことを意識しながら、ライター活動を行っている。
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現役エンジニアで製造業系ライターをしている一之瀬です。『技術は人に伝えられる形にして初めて技術と呼べる』をモットーに、エンジニアの業務では先行開発から量産開発まで幅広く関わりながらその技術を残す活動をしています。

技術を扱う企業が成長していくためには、生み出された技術が引き継がれていく必要があり、マニュアルや作業手順書は技術を伝達する手段として有効です。一方で、マニュアルを作る時間がなかったり、使われるマニュアルの作り方が分からなかったりで、多くの企業で口頭のみで伝わっている技術があるでしょう。この連載では、どうすれば使われ続けるマニュアルや作業手順書を効率的に作れるのかを、私の経験を元に紹介していきます。

マニュアル作成の時間を確保する

マニュアル作成において大きな課題になるのが、マニュアルを作成するための時間を確保することです。

  • 同じ作業をこなせる人材を増やすため
  • 作業者によるばらつきをなくし、品質を高めるため
  • 作業を見える化し改善するため

マニュアルが必要な理由は十分に理解していても、マニュアルを作成する時間が確保できずにそのままの状態で仕事をしてしまっている人は多いでしょう。マニュアルを作成する時間を確保するために、次の2点を試してみてはいかがでしょうか?

  1. マニュアル作成によるうれしさを数値化する
  2. マニュアルの作成を教わる側に任せる

それぞれ解説します。

マニュアル作成のうれしさを数値化

担当者はマニュアルの必要性を理解していても上司が理解しておらず、マニュアル作成の時間を確保できない場合があります。そのような場合には、マニュアル作成による効果を数値化する必要があります。私が働く会社では各部に対して、業務効率をどれだけ改善できたか数値で示す必要があります。マニュアルを作成することで業務効率を改善できる場合には数値で示すことで、マニュアル作成のための時間や予算を確保できます。

数値化をする際には、例えば次のように「時間」もしくは「金額」で表現するのがポイントです。

  • 10時間で作成できるマニュアルで、教育時間が1人当たり5時間、10人で50時間削減できる。
  • 20時間(時間単価をかけると約10万円)で作成する作業手順書で、不良発生率が10%下がり年間で200万円程度費用を抑えられる。

このように数値化すれば、そのマニュアルが有効であることは明らかです。大体作成に何時間(何円)かかり、それを作ると何時間(何円)削減できるのかを明確に表現すると良いでしょう。

マニュアル作成を教わる側に任せる

マニュアル作成のうれしさを数値化できたとしても、仕事が忙しすぎてどうしても時間を確保できない場合があります。その場合には、マニュアルを作成する人は、教えられる人に限定する必要はありません。

私の職場では、特定の人に対して専門性の高い業務が集中する傾向があり、他の人がその仕事をできるようになる必要があります。しかし、集中している業務をこなすのに忙しく、マニュアルを作成する時間がありません。このような場合には、マニュアルを作成できる知識や経験がある人が業務を引き継ぐ人に一度教え、その人が教育の一環として作るのも良いでしょう。マニュアル作成を通して引き継ぐ人の理解も深まり、教える人の時間をそれほどかけずにマニュアルを完成させられます。

集中していた負荷を分散させることに加え、他の人の目が入ることでより効率の良い業務の進め方をマニュアルにできる可能性もあります。

マニュアル作成の第一歩は時間確保

作業を効率化したり、負荷分散をしたりするためにマニュアルを作成しようとしても、そもそも時間を確保できないという課題があります。その解決方法として、今回は次の2点を紹介しました。

  1. マニュアル作成によるうれしさを数値化する
  2. マニュアルの作成を教わる側に任せる

次回は、せっかく作ったマニュアルが使い続けられるように、常に最新版にアップデートされるような仕組みづくりについて紹介します。

この記事の執筆者
一之瀬 隼
現役エンジニア、製造業系ライター
執筆テーマ:標準化、自動車、ロボット、他製造業全般

【経歴】
工学系の大学を卒業後、現職に就職し組み込みシステム開発のエンジニア業務に従事。先行開発、量産開発と並行しながら、技術標準化や海外子会社への技術伝承を通して会社を強くする活動に取り組む。
自動車を軸に材料・生産技術・開発方法など、現役エンジニアとしての視点を文章に落とし込むことを意識しながら、ライター活動を行っている。
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