世界の製造業⑧「ドイツ」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第一弾として「ドイツの製造業」を紹介します。

2017年の国別日系企業数の調査によると、ドイツには1814の日系企業が進出しておりヨーロッパのなかで最も多くの日本企業が拠点を構えています。同データからも分かるように、日本企業から多くの注目を集めるドイツの製造業を掘り下げていきたいと思います。

基本情報

  • 正式名称:ドイツ連邦共和国(Bundesrepublik Deutschland)
  • 首都:ベルリン(Berlin)
  • 元首:フランク=ヴァルター・シュタインマイアー(2017年3月から)
  • 首相:アンゲラ・メルケル(205年11月から)
  • 通貨:ユーロ(1ユーロ=125.57円 ※2020年8月12日時点)
  • 人口:約8046万人
  • 面積:約36万km2
  • 公用語:ドイツ語
  • 宗教:カトリック(29.9%)、プロテスタント(28.9%)、イスラム教(2.6%)、ユダヤ教(0.1%)
  • 平均寿命:男78.5歳、女83.3歳

経済の特徴

強み

  1. 工業基盤:2018年のGDPの約25%を工業が占める
  2. 輸出:ハンブルク、ブレーマーハーフェン、キールといった世界的な貿易港を有する
  3. 職業訓練制度:毎年約500,000人の生徒が職業訓練を受ける、訓練後のフルタイム勤務を支援
  4. 中小企業:年間売上高5000万ユーロ以下、従業員500人以下の企業が国の経済の屋台骨を支えるという意味を込めて「ミッテルシュタント(Mittelstand)」と呼ばれている

弱み

  1. 労働人口:医者と看護師を始めとする技能労働者不足が深刻化する予想
  2. 自動車産業:自動車に対する需要の低下などの要因により、400万人分の雇用が2030年までに消失する予想
  3. 政党分裂:支持者の高齢化、会員数の減少、投票基盤の縮小、意思決定プロセスの複雑化等の問題が浮上

産業構造

ドイツの産業構造を調べます。下の図は2019年のドイツの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合を示したグラフです。


データ引用元:Germany – Share of economic sectors in gross domestic product (GDP) in 2019 | statista

グラフから以下のことが分かります。

  • サービス関連業がGDP全体の2/3以上を占める
  • サービス関連業は2007年からドイツのGDPの60%以上を安定的に占める

現状

  • 新型コロナウイルスの影響により2020年の製造業の生産高は約10%から15%減少する見通し
  • 2020年現在、ドイツ国内における製造業の生産高は5月から徐々に回復しており、同傾向が続く予想

今後

  • ドイツは世界の産業拠点として以前ほど魅力的ではなくなる予想(賃金、実効平均法人税率、電気代が他国と比較して高いことが理由)
  • 輸出産業が盛んなドイツにとってコロナウイルスの収束による輸出産業の回復が経済のカギを握る

製造業

次にドイツの製造業全体について調べます。下の図はドイツの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Germany : Share of manufacturing | TheGlobalEconomy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • 2009年の17.68%を除いて安定してGDPの20%前後を占める
  • 2016年以降、サービス関連業の拡大により減少傾向が続く

現状

  • 新型コロナウイルスの影響により、機械工学産業、自動車産業、金属産業において顕著な生産高の減少が発生する見通し(工場の生産効率低下などが理由)
  • 2020年3, 4, 5月の製造業の生産高は大幅に下落、第三四半期から回復の兆しを見せる予想だが回復のスピードは遅く、前年の水準には及ばない予想

今後

  • 2021年の製造業の生産高は10%以上増加する見通し
  • 2021年に回復傾向に転じることが予想されるが、過去最高を記録した2018年の水準には達しない予想

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からドイツの製造業市場を調査した結果です。下の図はドイツに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のことが分かります。

  • 統計を開始した2007年以降、ドイツに進出する日系企業数は増加傾向が続く
  • 2014年から2017年まで成長率は減少傾向

現状

  • 2017年において、欧州に進出した日本企業の約24%がドイツに進出(欧州内でトップの割合)
  • 進出している分野は卸・小売業が約31%製造業が約28%サービス業が約11%宿泊・飲食業が約7.2%情報通信業が約5.5%運輸業が約4.2%教育・医療・福祉業が約2.0%金融・保険業が約1.7%不動産業が約0.7%その他が約8.5%

今後

  • ここ数年日本の中小企業がドイツに進出する件数が増加傾向
  • 2020年6月の調査によると、在独日系企業のうちドイツにおけるビジネス展開の縮小・撤退を検討している企業は約5%であり、ほとんどの企業がこれまで同様にドイツでビジネスを続ける方針

ドイツに進出した日本製造業企業

次に実際にドイツに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社五鈴精工硝子

▶基本情報

  • 本社:大阪府泉佐野市
  • 従業員数:78人
  • 事業内容:光学フィルターの製造・販売(OA機器、写真機器、照明器具、医療機器用)

▶概要

オリジナルの組成素材を用いた光学フィルターを試作から量産まで自社で一貫生産を行う。ヨーロッパへの事業拡大拠点として、ドイツ(フランクラフルト)とに事業所を構える。世界でも有数なラインナップ数を誇る機能性ガラスや世界トップクラスの特殊形状レンズの量産化技術を活かし海外企業と取引を行う。

向陽技研株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪府堺市
  • 従業員数:80名(中国工場70名、ベトナム工場200名、ドイツ販社4名)
  • 事業内容:ラチェットギアの製造・販売(ソファ用ギア、座椅子用ギア、テーブル脚用昇降パーツ)

▶概要

家具製品用の角度調節金具の製造販売を行う。2年に1度ドイツ(ケルン)にて開催される家具部品の展示会に新製品を出展し続けソファーメーカーを始めとするヨーロッパでの顧客を獲得。現在ではドイツ(ディッセルドルフ)に販売拠点を構える。

三星ダイヤモンド工業

▶基本情報

  • 本社:大阪府摂津市
  • 従業員数:698名(連結)
  • 事業内容:電子部品の分断加工、パターニング工程向け装置・加工工具(刃先等)・レーザー光源・光学系の開発、製造、販売

▶概要

電子部品の加工装置メーカー。オリジナルの刃先やレーザー発振器を利用し生産性を高めた加工装置を製造、販売する。2005年にSchott AG(ドイツ・マインツに本社を置く産業用ガラスメーカー)のレーザー分断事業を買収しドイツに子会社を設立。現在では、中国、韓国、台湾においても事業を展開している。

まとめ

今回はドイツの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。今回の調査の結果、ドイツの製造業はコロナウイルスの影響で2020年の上半期に大きな影響を受けたものの、下半期から徐々に回復するであろう見方が強いことが分かりました。

以前紹介したアジアに進出している日系企業は、現地の労働者雇用や現地の日本企業への部品供給を主な目的として挙げられました。一方で、ドイツに拠点を構える日本企業は、ヨーロッパへの販路開拓の拠点としてドイツを選んでいるケースが多いと感じました。今回の内容がドイツ進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

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