プレスリリースを検討する際に気を付けて欲しいこと

中小企業専門の弁理士の亀山です。お陰様で開業して6年目になります。開業して約300社の中小企業様・個人事業主様のご相談を受けてまいりました。今回は、プレスリリースを行う際、気を付けて欲しい点についてお話したいと思います。

あなたのプレスリリースを見る人

プレスリリースを見る人は、どのような人でしょうか?

  • 既存のお客様
  • まだ見ぬ新規のお客様
  • ・・・

これだけでしょうか?これ以外にもあります。

それは、あなたのライバル企業や、ライバル企業の取引先です。

ライバル企業がみていること

プレスリリースされた新しい商品やサービスについて、ライバル企業は何を見ているでしょうか?あなたの商材について、機能や品質の優劣や、価格の競争力も比較しています。さらに、以下のようなものを見ています。

それは、うちの知的財産権を侵害しているか?という点です。

知的財産権の侵害について

さて、知的財産権には、特許権・実用新案権(技術の権利)、意匠権(プロダクトデザインの権利)、著作権(大雑把にいうとアートの権利)や、商標権(商品名やサービス名の権利)等があります。ライバル企業からみれば、「せっかく知的財産権を取得したのだから、模倣犯がいれば取り締まりたい。」と思うでしょう。

このため、ライバル企業は、

  • プレスリリースされた商材の機能は、わが社の特許発明を使っていないかな?
  • プレスリリースされた商材のプロダクトデザイン、わが社の登録意匠を使っていないかな?
  • プレスリリースされた商材の名称は、わが社の登録商標に似ていないかな?
  • プレスリリースに掲載された写真は、自社サイトの写真を流用していないかな?

と、様々な角度から、目を皿のようにしてチェックしています。実際に、そのような侵害発見を依頼されるときもあります。そして、何かしらの権利を侵害している可能性が高い場合には、特許権侵害等を根拠とする警告書が、内容証明郵便にてあなたの会社へ郵送されてくることになります。

法的手段を取られたときのインパクト

警告書で要求される主なものは、差止請求と損害賠償請求の2つがあります。今回は、プレスリリースの場合ですので、差止請求についてのみ述べます。

さて、相手が要求が差止請求の内容に正当である場合、あなたの会社はどうなるでしょうか?

特許権侵害や意匠権侵害の場合

特許発明や登録意匠を使わないような設計変更をしなければなりません。すでに仕掛品や在庫を持っている場合には、廃棄せざるを得ない場合も多いでしょう。また、設計変更や仕掛品等の廃棄を受け入れられない場合には、相当のライセンス料を支払う必要が出てきます。

そして、これらを受け入れられなければ、新しい商材のリリースを中止せざるを得ません。

商標権侵害の場合

プレスリリースされた商材の名称は、継続して使用できません。特許権等のようなライセンスも可能ですが、商標権の場合には、権利者側のブランドイメージの棄損につながるため、ライセンスを許可する場合は少ないです。したがって、名称変更をせざるを得ない場合がほとんどです。結果としては、チラシ制作やパッケージ制作は0からやりなおしになります。また、プレスリリースや宣伝広告も0からやり直しになります。

このように、ライバル企業の知的財産権の侵害行為によって、新しい商材によるビジネスが困難になるばかりか、これまでに投じた時間やコストの回収ができなくなってしまいます。すなわち、他社の知的財産権の侵害行為は、あなたの会社の存続に直結します。

警告書を無視したらどうなる?

相手方の主張が正しいにも関わらず、警告書を無視して侵害行為を継続した場合には、刑事罰の対象となります。特許権、意匠権や商標権侵害の場合における刑事罰は、以下の通りです。

  • 個人の場合:10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(両方が科される場合もあります。)
  • 法人の場合:法人に対して3億円の罰金。代表者等には、個人と同じペナルティが課されます。

よって、専門家に相談せずに、警告書の無視することは、とてもお勧めできません。

ライバル企業の権利を侵害しないためにはどうすれば?

前項では、ライバル企業の知的財産権を侵害してしまうと、あなたの会社の存続が危うくなることについて述べました。それでは、ライバル企業の知的財産権を侵害しないためには、何をすればよいのでしょうか?

そのためには、ライバル企業の権利を調べる必要があります。この調査は、プレスリリースよりも前に行う必要があります。より詳しく言えば、他社の特許権や意匠権の調査の場合には、万が一の設計変更やデザイン変更を考慮して、試作のテストに目途がついた段階に行うことが望ましいでしょう。他社の商標権の調査の場合には、万が一の名称変更を考慮して、名称の案がある程度絞り込まれた段階で行うことが望ましいです。

このような特許権、意匠権、商標権の権利の調査(クリアランス調査といいます)は、専門的知識が必要です。調査の際には、お近くの専門家にご相談ください。

まとめ

  1. わが社のプレスリリースは、お客様だけでなく、ライバル企業も見ている。
  2. ライバル企業は「プレスリリースの商材が、自社の知的財産権を侵害しているか?」を見ている。
  3. ライバル企業が知的財産権の侵害を発見した場合には、差止請求により、プレスリリースの商材の販売は停止し、在庫処分となるため、経済的損失は大きい。
  4. このような経済的損失を回避するためには、「プレスリリースの商材が他社の知的財産権を侵害していないか」のチェックが必要。
  5. チェックのタイミングは、プレスリリースの前に行うこと。

関連記事一覧