IoT導入事例ファイル7:IoTを新ビジネスにつなげた5社の事例

こんにちは、AI・IoTに注目する盛岡在住ライターの宮田文机です。本連載では、データ活用情報・ノウハウの共有・継承品質保証(QA)/品質管理(QC)などIoTが既存の生産活動にもたらすさまざまなメリットを紹介してきました。

しかし、IoTがものづくり企業にもたらしうる恩恵はそれだけではありません。IoTの導入により自社の価値を高めるだけでなく、新たなビジネスの機会を生み出すことができた企業は多く存在します。今回はそのなかからそれぞれに独自性のある5社の事例を取り上げます。

【執筆者紹介】宮田 文机
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宮田 文机
盛岡在住ライター
執筆テーマ:IT・AI・ものづくり・HR・採用ノウハウ・ビジネス戦略
【経歴】
関西の大学を卒業後、東北のWeb・マーケティング企業にて2年間勤務。HR・IT系の記事執筆・編集経験を積み、その知見を生かしてフリーライター業務を行っています。ユーザー目線でベストな言葉を取捨選択し記事に反映することがモットーです。
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事例1:「オンライン・メンテナンス」の開始で売上は3倍に! 三浦工業株式会社

愛媛県松山市でボイラーの生産から保守までを行う三浦工業株式会社。国内ボイラー市場のシェア40%以上を占めるトップ企業です。

同社は1989年からIoTを活用して他社にない強みを発揮し、売上を拡大してきました。その要ともいえる事業が「オンライン・メンテナンス」(商標登録)。ボイラーに埋め込んだセンサーから温度や水圧などのデータを取得し、異常が感知されれば故障・停止前にメンテナンスを行います。

他社に先駆けた取り組みにより大きくその売上は拡大し、2017年までの29年間で約3倍に。保守契約による安定的な利益が生まれただけでなく、データ活用による品質の向上や突発的なメンテナンスの減少による離職率の低下など多くのメリットが得られたといいます。

事例2:「ダイレクト切削加工サービス」で付加価値を創出! Apex株式会社

東京都八王子市松木にて自動車部品の開発・製造・販売や3D技術を用いたサービスを提供するApex株式会社。

自動車後付け部品の市場が縮小する中で新サービス創出の必要性を感じていた同社が目を付けたのが、3D技術を用いたリバースエンジニアリング/リバースモデリングでした。そうして生み出されたのが部品データの測定から施策までを一気通貫で行う「ダイレクト切削加工サービス」です。

3Dデータの測定により試作品の精度が大幅に高まり、大幅な短納期の実現が可能になった同社。独自の強みを得られるようになり、また属人的なものづくりから解放されました。自動車部品から郷土品まで、その技術活用の幅は非常に広くなっています。

事例3:リモート監視ソリューション「Wi-VIS」で強みを倍増! 京西テクノス株式会社

東京都多摩市で下請け中心に電子部品製造業を営んでいた京西テクノス株式会社。下請け脱却を目指し、IoTを活用した新サービスの開発に取り組みました。そうして生まれたのがリモート監視ソリューション「Wi-VIS(Wireless Visual Solution)」です。

グローバル化が加速するものづくり業界において、海外工場をリモート監視するシステムが普及していくだろうと予測した京西テクノス。そこで自社開発を行ったのが、国内・海外を問わず機器のデータを取得・クラウドに保存し、故障予測や故障個所特定、リモート修理を行えるシステムでした。

センサーを取り付けるだけでさまざまな環境やメーカーの機器からデータを取得・管理できる同システム。他社にない強みとして同社の価値を大きく高め、監視代行などオプションとして新たなビジネス展開を生み出すことにも成功しました。

事例4:クラウド見積もりサービス「TerminalQ」を生み出した! 月井精密株式会社

東京都八王子市で精密機械部品の加工に取り組んでいた月井精密株式会社。IoTの導入により売上を伸ばしてきたところでリーマンショックが発生。値段交渉を各取引先から申し込まれるなかで、それまで「どんぶり勘定」で行ってきた見積もり方法を見直す必要に駆られました。

そうして大学との連携や補助金の活用を経て開発されたのがクラウド見積もりソフト「Terminal(ターミナル)Q」です。製品の図面をもとに材料や作業者などの情報を入力していけば、あらかじめ登録しておいた情報をもとに自動で見積書を作成させることができます。

企業間SNSや経営分析データ分析など幅広い活用方法の考えられる同サービス。現在は専門に開発を行うために設立されたグループ企業により運営され、登録企業を増やし続けています。

■月井精密株式会社についてより詳しくは……

事例5:センサー内蔵の「ピエゾボルト」でビジネスの可能性を広げた! 株式会社ヤマナカゴーキン

大阪府東大阪市に本社を持つ株式会社ヤマナカゴーキン。主に鋳造金型を取り扱っており、IoT/AIシステムの独自開発・販売に積極に取り組む先進企業です。

同社が2016年に販売開始した「ピエゾボルト」は、ドイツの大学発ベンチャー企業コンセンシス社が開発した“センサー内蔵ボルト”です。標準規格のボルトと置き換えることができ、軸力の変化を計測することで異常や不具合の事前検知を可能にしてくれます。

同社が強みとする冷間鍛造や解析ソリューションと組み合わせることで、サービスの高度化を測れるピエゾボルト。得られたデータをもとにした保守サービスなどヤマナカゴーキンの打ち手は大きく広がったといえるでしょう。

国際会議での出会いからパートナー関係が始まったというヤマナカゴーキンとコンセンシス社。技術革新への取り組みを通じた他社との連携により、ビジネスの可能性が大きく広がった事例といえるでしょう。

まとめ

IoTサービスの開発・導入により新ビジネスを生み出したものづくり企業5社の事例をご紹介しました。IoTの導入によって得られたメリットは、すなわち自社の強みとなります。そして、他社に提供できるサービスへと昇華できる可能性も大きく広がっているのです。

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宮田 文机
盛岡在住ライター
執筆テーマ:IT・AI・ものづくり・HR・採用ノウハウ・ビジネス戦略
【経歴】
関西の大学を卒業後、東北のWeb・マーケティング企業にて2年間勤務。HR・IT系の記事執筆・編集経験を積み、その知見を生かしてフリーライター業務を行っています。ユーザー目線でベストな言葉を取捨選択し記事に反映することがモットーです。
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