世界の製造業インタビュー①「コロナウイルスの影響は?中国進出企業の今」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。本企画の目的は、実際に海外に事業展開している製造業事業者の方にインタビューを行い、日本の中小製造業の世界進出に役立つ情報をお届けすることです。第1回目の今回は、中国の広東省で絞り加工、精密プレス品の製品生産を行う岐阜精器工業の波多野さんにインタビューを行いました。

  • 「中国の人件費は昔と比べてどうか?」
  • 「中国で工場を作るのは、まだ間に合うか?」
  • 「中国ではいまだに ”Made in Japan” クオリティーは顧客に響くか?」
  • 「現状コロナウイルスが中国の工場運営に与えている影響は?」

などの質問に対し、現地で働く人の生の声をお届けします!

中国の人件費について

中国の人件費は昔と比べてどうか?

我々が進出した2002年と比べると、約3倍ですね。もちろん中国と言っても土地が広く、最低賃金も場所によって違います。

中国の人件費の上がり方は?

鈍化していると思いますね。東南アジア諸国と比べても、人件費の上がり方にそれほど差はないように感じます。

我々が今工場を経営している地域(広東省)だと、大体ベトナムの人件費と同じくらいだと思います。

中国進出にあたって人件費以外のメリットは?

従業員が確保しやすい事ですね。就職したい若い人間がたくさんいるので、工場の掲示板に張り出せば自然と人が集まりやすいです。

中国人労働者について

何語で中国人労働者とのコミュニケーションをしている?

全て中国語です。英語のコミュニケーションはありませんね。なので、中国国内でビジネスを行うとなると中国語は必須と考えた方が良いと思います。

何割くらいの中国人労働者が英語を話せる?

一人もいませんね。我々の工場には120人前後の中国国籍の人が働いていますが、英語が話せるという人は一人もいません。

経営層レベルでちらほら要る程度で、中間管理職を務める30歳から50歳あたりで英語を話せるのは人はとても少ない印象ですね。

性格的な面で中国人労働者の特徴は?

良い面として「稼ぎたい」という意欲が日本人労働者よりも高いと思います。現在、日本で進められている働き方改革のような気運は中国にはありませんから、どんどん残業してどんどん稼ごうというタイプの労働者が多いです。

一方で、「離職率」が高いという面もあります。忙しく働くことができない会社からは、人が離れていってしまうということもよく起こります。また、自分の望む給料がもらえなかったら、すぐに次の職場に移る人が日本よりも多いですね。上の話と関連したもので言うと、給料によって態度ががらりと変わってしまうということもあります。

労働者間でも、誰がどれだけの給料をもらっているかの情報はなぜかすぐに広まるので、例えば「彼が昇給できて、私が昇給できないのはなぜだ?」みたいな申し出もしょっちゅうありますね。(笑)

中国でのビジネスについて

日本品質を中国工場で実現するための工夫は?

進出した当時は、日本人技術者が中国に行って設計から組み立てまで、手取り足取り教えました。我々は物を作るうえで金型の設計、開発とかが大事になってくるので、技術者の育成に力を入れましたね。

中国国内での協力企業の探し方は?

受け身的な方法としては、「営業メール」をもらうパターンですね。日本では中国企業から来る営業メールはスパム扱いになっているところが多いと思いますけど、我々は、そういったメールに対して従業員にコンタクトを取らせます。その後、実際に工場に行ってもらい、作っているもの、工場の様子などを監査させます。監査の結果、良いものが作れそうだと判断した場合には協力工場の候補として考えるようにしています。

自分たちから探しに行く方法としては、中国国内で開かれる「展示会」が主ですね。

Webから探す時は、「地域名」+「加工方法」という形でWebサイトを見ていく感じです。「地域名」を入力しないと、膨大な量の情報が出てきてしまうんです。先ほども言いましたが、中国と言っても広いので、広東省から北京は海外と同じくらいの感覚なんですよね(笑)

中国で工場を作るのは、まだ間に合うか?

間に合うとは思います。ただし「場所」が重要になりますね。と言うのは、場所によって人件費の上がり方が全然違うからです。例えば、我々が進出している場所は広東省の田舎で日系企業はほとんどいません。よって、人件費の上がり方も遅く、上海のような大都市のそれと比較すると全然安いです。

なので、これから中国への進出を考えるなら人件費の上がらなそうな場所に拠点を設けることが重要だと思います。とは言うものの、中国の田舎でも20年ほど前に比べると3倍くらい人件費は上がっていますが、日本に比べると全然安いですよ。我々の場所で月の最低賃金は4万円/月程度ですから。

中国企業のメールのやり取りの特徴は?

中国の場合、全体的にカジュアルな印象を受けますね。

日本企業はきっちり文章を作るイメージですが、中国企業とのやり取りは一文でOKだったり、「!」を入れてたりします。そういう対応をしても失礼には当たらないんですよね。

もう一つの大きな違いは、中国ではメールを使わないことですね。

日本で言うLINEのようなSNSプラットフォームを企業間のやり取りでも使用します。中国ではWechatというSNSで図面を送って、見積もりをもらうのが当たり前になっています。FAXなんかもってのほかですね。(笑)

日本ブランドについて

日本企業のイメージは?

お客様によく言われるのは、品質と納期についてですね。

我々は生産は中国でやっていますが、あくまでも日系企業の品質を教え込まれた工場なので大丈夫だろう、という感覚で見てもらっていますね。要するに、中国の企業に出すより我々に出した方が安全だろうという感覚だと思います。

中国ではいまだに ”Made in Japan” クオリティーは顧客に響くか?

最近あまりないですね。中国の技術は日本が思っている以上に進展していますからね。なので一昔前の様に、日本企業の家電を使っているからすごい、みたいなことは全くありませんね。

結局、スマートフォン市場も日本の製品はありませんし、家電もサムスンやLGの方が売れているんですよね。強いて言えば、自動車はいまだにトヨタを始めとする日本のブランドが好んで使用されているぐらいですかね。

中国のネット事情について

中国のWebサイトを見る時に特に注意してみる内容は?

中国の工場関係のWebサイトが中心になりますけど、一番見るのは製品の形状、工場内部の様子などの視覚的なイメージが主ですね。言葉が分からないこともあるので。

中国で日本企業のWebサイトを見る際に特に注意してみる内容は?

工場関係を見る時は、どんな加工をしているか写真で判断しています。加えて、その会社が得意としている点をアピールする文面があればそこも読むようにしてます。

中国語HPを作るにあたって、Google翻訳でも十分意味は通じるか?

結論から言うと、ネイティブなり流暢な人が翻訳する必要があると思います。

よく中国企業が片言の日本語でWebサイトを作っているのを見かけますよね。あれと同じような感じになってしまうんですよね。加えて、自分が翻訳した文章とGoogle翻訳で訳したものを比較すると、やはり前者の方が正確だと感じるのも理由の一つですね。

中国のネットで日本企業のサイトがヒットしたことはあるか?

あまりないですね。

中国国内で中国語で検索すると日本語サイトはほぼ引っかからないです。たまに引っかかる海外のWebサイトは、台湾や香港のものくらいですね。

これは直接関係ない話なんですが、お客様とか協力企業とかに我々のWebサイト(日本国内にサーバーがある)を見てもらうと、「なんでこんなに動作が遅いの?」と言われるんですよね。おそらく、中国政府がネット検閲に力を入れている影響もあると思います。

中国のネットを使う上で不自由することは?

Googleが使えたり使えなかったりすることですね。

Googleを使っていて検索できる時もあれば、次のページに行こうとすると急に動けなくなってしまうこともあります。加えて、我々のWebサイトに載せているYoutubeの動画なんかは、全く見れなくなっていますね。

コロナウイルスについて

現状コロナウイルスが中国の工場運営に与えている影響は?

工場の運営にあたっては、政府から大きく2回の指示がありましたね。

1回目は、1月31日から出勤して工場を稼働させる予定が、2月3日まで完全休業してください、と言われたものですね。中国では、1月17日から旧正月(春節)が始まって、それと同時にコロナウイルスが拡大していった影響ですね。

2回目は、先ほどの2月3日から一週間の休業延長命令でしたね。また、一週間後の2月10日から全ての工場が稼働できるわけではなく、中国政府の監査をパスした工場から順に稼働許可が下りるシステムです。監査は主に、工場労働者の体温管理、アルコール消毒の管理度合いなどがチェックされました。我々の工場はOKがもらえて2月10日から工場が稼働しています。

政府の監査に通過する企業の割合は?

実を言うと、我々の工場は運が良かっただけで、まだ工場の運営許可出ていない会社は山ほどあるんですよね。

許可が下りていない割合は地域ごとによって違いますね。それは、大手から順に稼働許可が下りるようになっているからです。我々の工場は田舎町で他の工場が少ないからすんなりOKが出ましたが、例えば、大手企業が集まった深圳などは、中小企業の多くがいまだに稼働許可が下りていないと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

  • 「中国の人件費は、20程前に比べると約3倍に上昇したが日本に比べるとまだまだ安い。
  • 「中国に工場を作るのは、間に合うが人件費が上がらない場所を選ぶことが重要。
  • Made in Japan が顧客に響くことは、ほとんどない。
  • 「コロナウイルスの影響で、政府からの監査が入り多くの中小企業が稼働休止中。

のようになります。個人的には、日本ブランドが響かなくなっていたり、SNSで企業間のやり取りが行われていたり、中国の技術の発展を感じるインタビューになりました。今回の内容が中国への事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

次回は、日本の切削部品受託加工技術でフランス進出を果たしたあの方のインタビューをお届けする予定です!

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