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製造業向け「伝わる文章の書き方講座(1/4)」

【執筆者紹介】石川玲子
この記事の執筆者
石川玲子
工業系エンジニアライター
執筆テーマ:工業・製造業系の技術情報やHP、会社パンフレット、技術開発史など
【経歴】
工学部機械工学科を卒業後、自動車業界や家電業界で機構設計系のエンジニアとして勤務。第二子出産を機にフリーライターとして独立し、工業系に特化したライターとして活動中。
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元エンジニア。工業系エンジニアライターの石川です。製造業に強いライターとして、社長挨拶の代筆から、技術紹介、助成金の申請書などなど、さまざまな文章を書いてきました。その経験を元に、製造業に特化した「伝わる文章の書き方」を全4回にわたってご紹介します。

第1回目:「文章を書くための準備」

何かを書こうと思って、いきなり冒頭からスラスラと書ける人はいません。プロのライターでも、多くの時間を事前準備に費やします。何の準備もなく書きはじめ、まるで話すように書き続けているとすれば、それは頭の中で十分に「ネタ」が練れているときです。準備を抜きに文章を書くのは、まず不可能と思っていいでしょう。「文章を書くための準備」は次の3つです。

1、ターゲットを絞り、分析せよ

以前のシリーズでもお伝えしましたが、まずターゲット、つまり読む人がどんな人かを絞らなければ文章は書けません。例えば同じ分野の専門家に向けた文章ならば「VF20の精密加工が可能」と書けば伝わります。しかし一般の人や、違う分野の人には伝わりません。「とても固い金属に非常に細かい加工をすることができます。」と書かなければ、何を言いたいのか分からないでしょう。しかし逆にその表現では、専門家にとっては、どれくらい硬いどんな素材を、どれくらいの精度で加工できるのかが伝わりません。ターゲットが変われば、表現の仕方も伝えたいことも変わります。誰に何のために何を伝えるのか、そしてそのターゲットにはどうすれば伝わるのかを考えましょう。

2.情報を整理せよ

ターゲットが絞れたら、次は情報の取捨選択です。次から次へと伝えたいことが出てきてしまう人もいれば、何を伝えたらいいか全く思いつかない人もいます。情報が多すぎる場合には削り、少なすぎる場合には増やさなければいけません。しかし考え方は同じです。それは「ターゲットにとって必要な情報」という目線です。

例えば、新製品の紹介でも、従来機種とは異なる新機能について知りたいのか、製品の使い方や用途が知りたいのかは、ターゲットによって変わります。新規購入希望の人に新機能ばかりアピールしても伝わりませんし、機種のアップグレードを望んでいる人に用途を説明してもあまり意味がないからです。書こうとしている文章で何を伝えたいのかをしっかりと整理すれば、文章の流れもおのずと決まってくるのではないでしょうか。

3.目的ごとの「型」を知ろう

学生時代の国語の学習では、文章の基本は起承転結だと教わります。起承転結というのは文章の「型」です。型に沿って文章を書くと、伝わりやすく読みやすい文章になるのです。とはいえ、すべての文章が起承転結で書かれている訳ではありません。実は文章の「型」にはたくさんの種類があるのです。製造業のホームページ活用などで多く出てくる文章には、下記のようなものがあります。

  • 紹介記事(ホワイトぺーパーや製品紹介)
  • 活動報告(導入事例や展示会レポート)
  • 知識伝授記事(製品の選び方や関連技術の基礎知識)
  • 一般向けPR(ブログやコラム)

また少し雰囲気は変わりますが

  • 申請書類(助成金や補助金などの会社PRや設備の説明)

も多いのではないでしょうか。

書こうとしている文章が、これらのうちどれに該当するかを考えてみましょう。もし合致する項目がなくても、おおよその方向性で決めてみてください。該当する、あるいは近い型に沿って書くことで、慣れない人でも簡単に伝わる文章が書けるようになります。

次回は今すぐ使える、文章を書くためのテクニックをお伝えします。

この記事の執筆者
石川玲子
工業系エンジニアライター
執筆テーマ:工業・製造業系の技術情報やHP、会社パンフレット、技術開発史など
【経歴】
工学部機械工学科を卒業後、自動車業界や家電業界で機構設計系のエンジニアとして勤務。第二子出産を機にフリーライターとして独立し、工業系に特化したライターとして活動中。
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