【セミナーレポート】由紀ホールディングス 大坪社長の講演

こんにちは、テクノポートの永井です。2019年10月24日(木)に「第6回 TECHNO-PORT TALK NIGHT」を開催しました。

今回は由紀ホールディングス株式会社の大坪社長にご講演いただきました。由紀ホールディングス株式会社:http://yuki-holdings.jp/

大坪社長は由紀精密の三代目として事業を継承し、どん底を経験した後に企業を急成長させています。現在は由紀ホールディングスを立ち上げ、技術ベースのM&Aを行いながら、さらなる成長を目指しています。2018年にはForbes主催のスモールジャイアンツアワード7社にも選定され、大坪社長の経営姿勢は各業界から注目を浴びています。

そんな大坪社長に

  1. 事業継承の話
  2. ホールディングスの話

をしていただきました。講演の後半では3代目若手後継者3名から様々な質問も行っていただき、学びのある講演になったと思います。

1、どん底から這い上がるために、技術の見せ方を工夫した

由紀精密の創業は家族経営のネジ屋さんでした。テレホンカードのカードリーダ用のシャフトで売上を拡大するも、時代とともに受注数は減り続けました。

別の企業で働いていた大坪社長も実家の危機ということで、由紀精密に入社し家業を手伝うことに。製造の受注が少ないなか、大坪社長が前職で行っていた設計技術を生かした開発部を立ち上げました。開発部は設計から加工、検査まで一貫して製造できる体制とし、仕事の幅を広げることで生産効率が上がりました。

さらに、体制を整えだけではなく「自社の強みを生かす」ために、お客様にアンケートをとったそうです。お客様からは「由紀精密の精度は良い」という意見を多くいただいき、その強みを生かすために航空産業への参入に挑戦します。展示会で人に見てもらうためにはインパクトが必要になります。大坪社長は社員と一緒に3DCADを使いながら「技術にインパンクを出すためにはどうすればよいか」を検討し続けました。その中から画像にあるように、直径12mmのインコネルに複雑な加工を行った製品が生まれました。

展示会場の配置は偶然にも後ろが三菱重工で、MRJ(現:スペースジェット)の展示を行っていたため、由紀精密も航空機の部品を作っていると勘違いされるという幸運も味方し、展示した製品が宇宙機関のエンジニアの目に留まることに。それが問い合わせに繋がり、見事航空機産業への参入を成功させました。今でははやぶさ2の部品や、こうのとりの小型回収カプセルの共同開発をJAXAと行えるレベルまで成長を遂げています。

自社の強みを知り、その強みを生かせる業界を見つけ、そして強みを視覚的に伝えられるように工夫した結果、成功に至った素晴らしい例だと思います。

由紀精密は2017年には宇宙産業を支える町工場として、皇太子殿下(現・天皇陛下)が視察に来られました。また、2018年にはForbes主催のスモールジャイアンツアワード7社に選出されるほど素晴らしい企業に成長しています。

由紀精密のニュースページ:http://www.yukiseimitsu.co.jp/170308/

2、ものづくりで世界を幸せに。大坪社長がホールディングスを作る理由

日本には世界に通用する素晴らしい技術があります。そんな日本の技術を融合させることで、温暖化や水不足、科学の実験装置など世界の大きな問題を解決できる可能性は十分にありますが、人口が減少する国内環境の中でそれは難しい状況です。

技術の融合を促していくには「技術を発展させてながら継承する」ことが必要になりますが、そのためには、研究開発や海外進出における様々なノウハウが必要不可欠です。そのノウハウを持っていた由紀精密は、技術のある企業と共有するためにホールディングスを立ち上げ、1社では難しかった「技術を発展させてながら継承する」ことを可能にしました。

大坪社長がM&Aのときに考えるのは「技術のみ」です。企業が保有している技術を見て、その技術を使った未来が想像できるか否かがM&Aをする基準の一つとしているそうです。例えば、ワイヤー技術なら超電導ワイヤーや宇宙用ハーネスなど、超精密加工なら超小型スラスタや世界最速ピストンの開発などの応用技術が見えてきます。

大坪社長はそういった未来を想像するために、様々な学会に所属し、論文ベースで新しい技術情報を仕入れることに余念がありません。だからこそ、数十年先をみた技術を軸としたM&Aができているのです。

由紀ホールディングはあくまでグループ企業の足りないところを補填するためのブランドで、光ってほしいのは所属企業、ものづくり業界のLVMH(ルイヴィトンモエヘネシー)モデルを目指しています。例えば、LVMHグループの中には、ブルガリやタグホイヤー、ドンペリなど様々なブランドがありますが、ブルガリと聞いてLVMHを想像する人がいないように、あくまでも所属企業が光ってくれることが大切だと大坪社長はおっしゃっていました。由紀ホールディングスは2017年に設立し、技術をベースにM&Aを行う珍しい企業です。技術を基準に選んだM&Aが成功するかどうか、今後の由紀ホールディングスの行方が楽しみです!

3、3代目若手後継者3名からの質問と回答

3代目若手後継者である

  • 株式会社栗原精機 栗原 匠さん(機械加工)
  • 株式会社石井精工 石井 洋平さん(ゴムの金型)
  • 株式会社佐藤製作所 佐藤 修哉さん(ロウ付け)

に質問を頂きました。

株式会社栗原精機 栗原 匠さん

Q:1社依存の量産体制から開発へのシフトはどのように切り替えを行ったんでしょうか?弊社も開発を行いたいけれど、なかなかできない状況です。

A:由紀精密の試作開発は実は仕事の一部なので、社内製品を自社のコストとしてやっているのではなく、お金を頂いての開発を行っています。というのも切削加工だけではぜんぜん売上が伸ばせなかったんですね。私は機械設計を自分でもやっていたので、機械設計の力でなんとか売上を立てるために「設計を仕事として」受注し、開発の営業を伸ばしていきました。設計したもので、切削加工が必要なものもあるので、切削加工の分野も合わせて伸びていった形です。なので、順調にシフトさせていったと言うよりは、やらざるを得ない環境だったということです(笑)。

株式会社石井精工 石井 洋平さん

Q:これまで社長のトップダウンで行ってきたのですが、人数が増えると社内の把握が難しくトップダウンではうまく回らなくなってきました。今後はみんなで考えられる企業にして行きたいと思いっています。
どのようにしたらうまくいくでしょうか。

A:私の場合は権限を渡しています。事業ごとに部長がいて、ほぼ全て任せています。私は機械に向かっている方が好きなので。
実際には私も試行錯誤中です。人事(HR)担当を入れたり、1on1を取り入れたりと試行錯誤しながら、考えられる社員を育てて行きたいと思っています。

株式会社佐藤製作所 佐藤 修哉さん

Q:いろいろなことをやっていますが、そのエネルギーや情熱どこからくるのでしょうか?

A:私の場合は、何もしないと本当に潰れる環境だったのが大きいです。せざるを得なかったという言い方が正しいですね。
ただ、私自身もの作りが好きで、おもしろい技術をもっている人はリスペクトしていますし、そういう人に出会うとエネルギーが湧いてきます。

Q:ビジョンが明確になっている企業はすごくいいと思いますが、やはり従業員との温度差はあると思っています。そこのギャップはどのように埋めていますか?

A:それは私も聞きたいですね(笑)。私は 完全に従業員とのギャップを埋めることは目指さなくて良いと思っています。休みや収入、仕事内容などいろいろなモチベーションで仕事をする人がいるので、その人たちを肯定しながらも、伝える努力は怠らないようにしています。できるだけ時間を使って自分の思いを伝えいます。そうするとだんだんベクトルが合ってくると思います。

まとめ

技術力の高い企業を集めた由紀ホールディングスが成長していくことで、近い未来、世界の大きな問題を解決するための糸口が見えてくるかも知れません。由紀ホールディングスはLVMHグループをモデルとしていますが、今後は由紀ホールディングスをモデルとした様々企業がでてくるでしょう。

技術ベースの大坪社長の考え方は日本の製造業の支えになると思います!

過去の講演者
第1回:株式会社吉原精工 吉原博会長
第2回:株式会社レボコミュニティ 千野社長
第3回:HILLTOP株式会社 山本副社長
第4回:株式会社浜野製作所 浜野社長
第5回:株式会社キャステム 戸田社長

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