工場見学って意味あるの?工場見学を行うものづくり企業側の意義

近年、周辺地域の住民、地域の小中学校など向けに自社を知ってもらったり、地域貢献の為に行う工場見学を開催するものづくり企業が非常に増えています。しかし、「時間も手間もかかり、仕事に結びつく訳でもないのになぜ行うのか?」と思うのが大半の人の率直な意見ではないでしょうか?そんな私も懐疑的な思いを持っていました。なぜ開催する企業が増えているのでしょうか?その要因について考察しました。

【執筆者紹介】小林(井上) 正道
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小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上行っている。製造業への訪問実績3000件を超える。幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規開拓営業の支援を行う。

マーケティングスキル×Webスキル(SEO中心)×製造業知識
3つのスキルを組み合わせることで得意専門領域を作り、限られた分野で卓越した力を発揮する。

日本工業大学技術経営学修士号取得(MOT)

【寄稿実績】
間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(MONOist)
新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁
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工場見学を開く意義とは

ものづくり企業側の意図とはなんでしょうか?メリットやデメリットを踏まえ開催しているはずですので、考えられるものを挙げてみます。

工場見学を行うメリット

地域交流、関係性の向上

住宅と工場が混在する地域もあり、騒音問題等のトラブルを避けるためにも、住民の方の理解を得ることが重要になってきています。

社員のプレゼン力向上

工場見学者に対しての説明をするということは、加工の知識が無い子供でもわかる説明が必要です。「見ればわかるだろ!」というような教え方では通じません。新人教育をする際の先輩社員の教え方、伝え方を練習する場としても最適かも知れません。

社員のモチベーションアップ

社員のご家族を連れてくる方もいるので、なかなか見せられないお父さんの仕事がどんなものかを知ってもらえます。また、工場見学者は普段見たことの無いものを見るため、キラキラした目で、素直に感動してくれる人も多いです。いつも行っている仕事に目新しさがなくなってきている方も多いかも知れませんが、自分の仕事に自信ややりがいを再認識するきっかけにもなるはずです。

長い目で見れば人材採用につながる

地域住民の理解が得られ、関係性を築くことによって、パート・アルバイト、その先には社員の採用につながる可能性があります。様々な働き方や選ぶ基準がある中で、近場である程度時間の融通が効き、昔から知っている会社ということであれば、候補の一つになる可能性もあるはずです。また、小さい時から「ものづくり」という仕事があることを知ってもらうということも重要です。私は、大学を卒業し社会人になるまで、この業界のことを知らず、こういう仕事に就きたいという候補に挙がることすらありませんでした。

新たな顧客の創出・製品開発の可能性

様々な人に知ってもらい、多種多様な相談を受けることで、仕事や自社の製品開発につながる可能性があります。今まではどちらかというと工場は閉鎖的で、いかに技術を流出させないためにクローズするか、という考え方だったと思います。しかし、今ではより多くの人に自社の技術を知ってもらい、アイディアや相談を呼び込む方が、大きなメリットを生む時代なのだと思います。

工場見学を行うデメリット

安全性の確保のための準備

来場者がどのような行動をし、どこに危険が潜んでいるかわかりません。ある程度の行動の導線を用意し、その中で想定される危険を出来る限り排除し、万全の体制で望む必要があります。

開催時間と説明人員の確保

一番のネックはここではないでしょうか?土日開催するとなると、人員確保が大変ですし、平日だと通常業務との兼ね合いがありますし、見学者が集まりにくいというデメリットもあります。

情報流出

情報流出ももちろん気をつけねばならない点です。どこまでを見せて、どこからが見せてはいけないかを社内で決めた上でオープンにする必要があります。

メリット・デメリットを踏まえて考察

以上のようにデメリットを中心に見ると手間はかかるとは思います。しかし、それよりも繋がりを作ることで得られるメリットが以前よりも大きくなってきているのではないでしょうか?自社だけでどこの手助けも借りずに売上を上げ、独走し続けるというのは難しい時代です。地域の方の理解や周りの企業との連携を得ながら、社会に貢献し、利益を上げ、それを地域に還元するような共存するスタイルの会社が好まれるのではないでしょうか?そのような会社には人も集まります。工場見学は、積極的に交流を広げ、自社の認知度や理解を深めてもらうことで、上記のような様々な恩恵をもたらすものです。その一つの結果として口コミ、紹介等が広がり中長期的には仕事も集まりやすくなるのだと思います。

開催方法の種類

では工場見学を自社もやってみようと思った際に、単独開催というのはハードルが高いです。というのも、見学の受け皿を用意してもそこに人が集まらなければ意味がありません。告知、集客までを単独企業で行うのには限界があります。そんな時は、地域のイベントにまずは参加してみるのも良いでしょう。最近では地域で共同イベントが積極的に開催されていますので、近くでも定期的に開催しているかも知れません。

事例紹介

地域イベント例

東京都内の工場見学可能な会社紹介

自社も単独開催したいということであれば、既に単独で開催している工場を覗いてみてはいかがでしょうか?

Garage Sumida(株式会社浜野製作所)(墨田区)

言わずと知れた浜野製作所さんです。3Dプリンターやレーザーカッター、CNC加工機といった最新のデジタル工作機器を見ることができます。

富士精器株式会社(目黒区)

15年ほど前からは、区内の小学校から工場見学の受け入れを行っている工場見学の先駆け的な会社です。金属の切削加工について見学することができます。

株式会社富士産業(葛飾区)

真鍮・銅といったデザイン心をくすぐる素材を1個から仕上げるアトリエを持っています。行くだけでワクワクするものが見られます。(まだ正式には見学ツアーは無いですが、個別には対応してくれると思います。)

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小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上行っている。製造業への訪問実績3000件を超える。幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規開拓営業の支援を行う。

マーケティングスキル×Webスキル(SEO中心)×製造業知識
3つのスキルを組み合わせることで得意専門領域を作り、限られた分野で卓越した力を発揮する。

日本工業大学技術経営学修士号取得(MOT)

【寄稿実績】
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