新商品リリース時における「落とし穴」

弁理士の亀山夏樹です。今回は、中小企業200社以上の相談実績を通し、新商品リリース時における「ありがちな落とし穴」についてお話したいと思います。

1.ある日の特許相談

相談者は、とあるアイデアを思いついた中小企業の社長。このアイデアをベースにした新商品の工具を試作してみたところ、社内の反応では、どうやら売れそうだとの感触を得ました。そこで、新商品について特許をとれるかどうか、弊所へ相談に来られました。

2.特許取得も大事ですけども・・・

かめやま:なるほど、この工具のグリップが三角形になっているところがポイントなんですね。

お客様:そうなんです。特許は取れそうでしょうか?

かめやま:類似品は他社から販売されてないのですか?

お客様:どこからも販売されていません。もちろん、ウチもまだ販売していないですよ。特許を出してから販売ですよね?

かめやま:公開前・販売前の特許出願、良い習慣ですね。しかし、製品が出ていなくとも、特許出願だけ出されているケースもありますし・・・そこは特許文献の調査をしてみましょう。

お客様:お願いします。

かめやま:ところで、この商品は、どのように販売するのですか?自社販売ですか?それとも、営業代行会社を使いますか?それとも、Amazonのようなネットショップでの販売になりますか?

お客様:HP(ホームページ)を使った販売になりますが、自社でやろうか、他社に頼むかは検討中です。

かめやま HP上の販売なのですね。ところで、商品名はどうされますか?

お客様:この「三角形」をイメージした「おにぎり君」でいいかな?と思っています。

3.たかが商品名。されど商品名

かめやま:「おにぎり君」、可愛い名前ですね。ところで、この「おにぎり君」は、商品名として使えるのですか?

お客様:え?どういう意味です?

かめやま:工具の商品名「おにぎり君」について他人の商標権が存在した場合、お客様は、工具について、商品名「おにぎり君」を使えなくなります。正確に言うと、工具の商品名「おにぎり君」を使用することによって、その他人の商標権侵害となってしまいます。

お客様:商標権侵害になるとどうなるのですか?

かめやま名称使用の差し止め(名称の使用停止)と、損害賠償請求の対象になります。また、悪質な行為は、刑事罰にもなります。

お客様:犯罪にもなるんですね。

かめやま:そうです。現実的によく発生するペナルティは、名称使用の差し止め(名称の使用停止)、そして、これに伴う副作用です。

お客様:副作用というと?

かめやま:まず、商品の出荷停止・在庫処分が余儀なくされます。次に、HPの変更作業が発生します。そして、古い商品名のパッケージの廃棄と、新しい商品名のパッケージの制作も必要になります。そして、新しい商品名でのPRのやりなおし・・・このように、金銭的な損失だけでなく、時間的なロス(機会損失)にもつながります。

お客様:たかが名前なのに、そんなに重いのですか?

かめやま:たかが名前・・・ではないですよ。特に、ネット販売の場合、調べ物をするとき、キーワード検索をしますよね。調べものと同じように、話題となっている商品名や、気になる商品名もまた、キーワード検索をする人が多いと思います。キーワード検索するためには、どんな名前が良いでしょう?

お客様:えぇ。どんな名前???

かめやま:覚えやすい名前です。覚えてもらわなければ、検索してもらえませんよね。

お客様:確かにそうですね。

かめやま:さらに、検索結果では、自社が先頭(少なくとも1ページ目)に出てこないとなりません。したがって、ネット販売する場合の商品名としては、「記憶しやすい名前」、「検索のしやすい名前」、「検索結果で一番前に出てくる名前」がよいですね。

お客様:なるほど。「検索結果で一番前に出てくる名前」というのは、SEOみたいなことをするのですか?

かめやま:それもありますが、それだけではありません。自社商品と同じ同じ商品名を、多数の同業他社が使用していたら、お客様は、同業他社のHPに流れてしまう。

お客様:それは困りますね。自社商品と同じ同じ商品名を、多数の同業他社に使用させては・・・あ!ここで商標権を使うのですね。そうすると、ウチの商品名(登録商標)を同業他社が使用できなくなる。その結果、商品名を記憶したお客様を確実に自社HPへ集まることとなる。

かめやま:PRを一生懸命し、お客様に商品名を記憶してもらっても、同業他社に流れてしまう。これでは、穴の開いたバケツみたいなものですよね。そうならないためにも、自社の商品名を覚えてくださったお客様を、自社HPへ確実に誘導する仕組みをつくる。この仕組みづくりのために、商標権を利用するケースも多いです。特に、ネット販売系では、そのような目的で商標権を取得される企業様は多いです。しかも、キーワード検索によって商標権侵害を見つけやすい。

お客様:使用する側から見れば、商標権者から侵害行為が見つかりやすい。

かめやま:なので、他人の商標権の侵害行為となるような名称使用は避けたほうが良いです。

お客様:そして、集めた見込み客を漏らさず自社HPへ誘導するためにも、自社の商標登録は確保したほうがよい、というですね。

かめやま:そうです。しかし、まずは、他人の商標権に抵触するか否かの調査を行い、その後に、商標登録の手続きを進めることが良いと思います。

お客様:特許だけではなく、登録商標(商品名)の活用も大切なんですね。

4.まとめ

(1)商品名は、大切な集客ツール

(2)良い商品名

  • A 記憶しやすさ
  • B 検索のしやすさ
  • C 合法的に使用できる名前(他人の商標権侵害にならない名前)
  • D 合法的に独占できる名前(商標登録のしやすい名前)

何かの参考になれば幸いです。

関連記事一覧