採用ルール廃止が及ぼす中小企業への影響!

こんにちは、ものづくり経革広場の永井です。2018年10月9日に経団連の中西宏明会長が「採用ルール(就活ルール)」の廃止を発表しました。これの影響で企業の採用方法や大学生の就活への意識も変わり、新卒採用のあり方が変わっていくと考えられます。

さらにこの変化は中途採用にも影響を与えると言われており、大企業に限らず、中小企業の採用はより一層厳しくなる可能性があります。今回は「採用ルール(就活ルール)」の廃止に伴う懸念点と今後の採用のあり方について記事にしました。

【執筆者紹介】永井 満
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永井 満
テクノポート株式会社 東海地方責任者

大手メーカーで設計開発を経験しているWebマーケター。クライアントの技術を理解した上でWebサイト戦略を立てることを得意としてます。

【経歴】
日本大学大学院航空宇宙工学専攻
ボッシュ株式会社でディーゼルエンジンのポンプ設計を担当

【寄稿実績】
伝え方が悪いと逆効果! Webで自社技術に興味を持ってもらうための戦術
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1.「採用ルール(就活ルール)」とは

まずはこれまでの「採用ルール」について振り返ります。

【経団連が決めている採用ルール】

広報活動 : 卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
選考活動 : 卒業・修了年度の6月1日以降
(掲載元:http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/015.html

このように新卒採用に対しての活動を企業間で統一することで公平性を持たせています。実は採用ルールには歴史があり、一度廃止されたこともありました。

歴史を簡単に追うと、

  • 1952年頃 大卒者が急増し、混乱を防ぐため企業と大学が採用ルールを結ぶ。その後、好景気による人材不足から、ルール無視の青田刈りが始まり、好景気ではルール無視、不景気ではルールを守るサイクルが繰り返される。
  • 1978年頃 守れない企業に「注意」「勧告」「社名公表」という制裁措置を取るが結局守られない。
  • 1997年頃 守れないなら不要ということで、採用ルールを廃止
  • 2013年頃 就活の早期化による学業軽視の点から、現在に近い採用ルールができるが、外資系や中小企業はルールを無視する
  • 2018年頃 採用ルールの廃止を検討

(掲載元:2018年10月27日発売の東洋経済「採用クライシス」)

という流れになり、結局、どれだけ公平性を検討しても守らない企業が多くいるため、経団連として採用ルールを明言しないことになりました。

2.「採用ルール(就活ルール)」廃止に伴う懸念点

採用ルールが廃止されると過去と同様「青田刈り」、つまり大学1〜3年生に内定を出す企業が現れ、早期に採用活動を行わなければ自社が採用活動をするときには優秀な学生がいない可能性がでてきます。

そのため、優秀な学生を採用するためには大企業はもとより、中小企業も早期に採用活動をスタートしなければなりません。その結果、

  • いつ?どのように?採用活動を始めればいいのか。
  • 大学2年生に内定を出して、果たして卒業後に本当にきてくれるのか。
  • 内定承諾後に、別の企業からオファーがあったらなびいてしまわないのか。

などの不安要素がでてきます。

これまでは採用ルールがあったからこそ、目標の採用人数を獲得するためには3月以降で何人に内定を出したら良いかを予測できたのですが、採用ルール撤廃により予測が立たなくなりなりました。この「採用の不安定性」こそが企業にとっての最大の懸念点になります。

特に中小企業の場合は、長期間学生をキープするための時間やコストを使うことは難しく、内定承諾を得た学生が別の企業に興味を持ってしまう可能性もあります。採用人数が少ない中、内定承諾を断られるのは死活問題となり、採用の時期から再考しなければなりません。

3.大学生を採用するベストな時期について

大学生の学習ステップは、1~3年生までは教養や専門知識を学び、4年生はその知識を軸に考える力を磨いていきます。理系の場合は研究に、文系はゼミに入り、あるテーマを基に考える力を学び、この過程において急激に成長します。もちろんサボることもできるため、4年生で差がつきます。個人的な考えとしては、大学生の質を見極めるベストなポイントは「4年生の12月以降」になりますが、そこまで待っていては優秀な学生がいなくなるのも事実であるため、現状は3年生の12月頃が良い時期になります。

採用ルールの撤廃により、この時期がさらに早まる可能性もありますが、学生が成長する前に、今後の成長を予想して採用しなければならないため、4年生前の採用については一種の賭けに近い状態になってしまう問題があります。ただ、優秀な学生は少なくなりますが、そこそこの学生は残る可能性も十分あります。

従業員規模別の求人倍率は(掲載元:2018年10月27日発売の東洋経済「採用クライシス」)

従業員規模 求人倍率
(2019卒、倍)
300人未満 9.91
300〜999人 1.43
1000〜4999人 1.04
5000人以上 0.37

となっています。300人未満の従業員の企業の9.91倍は非常に厳しい数値ですが、反対に大企業の0.37倍という極めて低い数値も興味深い点です。この表から、大企業を志望する学生は多いけれども、その分大企業に落ちる学生も多いということがわかります。労働条件や仕事の規模において大企業に勝てない中小企業はターゲットを「大企業落ちの学生」に絞ることも一つの選択肢としてありかと思います。

4.学生の質を見極め、安定した採用をするために

採用に失敗しないように学生の質を見極めて、安定した採用をするための方法は確立されていませんが、重要なことは「この会社で働きたい」と思える企業文化を作っていくことだと思います。

そのためには、独自の採用スタイルを確立していくことや、情報の発信をし続けるなど、これまでとは違った工夫が必要になります。例えば、

  • 採用に時間と手間をかけるとことん採用
  • 個性を見るためのBBQ採用
  • 自社知ってもらうためのインターンシップ採用
  • 他社とも連携した共同採用

などをユニークな採用活動をやって成功している企業もあります。もちろん採用にはコストも時間もかかりますが、企業の未来を作っていくのは人材です。ぜひ独自の採用方法を見つけてみてください。

まとめ

労働人口が減り、採用ルールが撤廃され、これからは企業の個性が求められる時代になると思います。採用活動自体は利益を生まないため、中小企業は限られた活動しかできないかもしれません。ただ、そのような中でもしっかりとコストをかけ採用に成功してる企業もあります。

2018年11月22日(木)に弊社主催のセミナーにて、新卒採用に成功している京都のヒルトップ様をお招きし、採用や人材育成についてのセミナーを行います。ヒルトップ様は社員数5名の鉄工所から今では150名になるまで成長し、新卒採用では数名の枠に対して、毎年約1000人のエントリーがあるほどの人気企業です。ぜひこの機会にセミナーへお越し下さい。

セミナー詳細:https://tp-tn-3.peatix.com/

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ボッシュ株式会社でディーゼルエンジンのポンプ設計を担当

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