商品企画の標準プロセス「商品企画七つ道具」

【執筆者紹介】熊坂 治
この記事の執筆者
熊坂 治
山形県生まれ
東北大学工学部(応用物理学科)を卒業後パイオニア(株)に入社し、基礎研究、プロセス技術、生産技術、製造技術、工場計画、技術営業、事業開発など広範に担当。
2008年に経営工学部門、2009年に総合技術監理部門と技術士資格を取得し、退社後技術士事務所を開設して、品質工学をコンサルティング。
2011年に株式会社産業革新研究所を設立し、2012年にWebサイト「ものづくりドットコム」を公開。多くの専門家と協力しながら製造業のプロセス革新と課題解決を支援している。
博士(工学)、技術経営修士(専門職)、山梨学院大学客員教授(技術経営論)
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ものづくりドットコムの熊坂です。

2月1日に平成29年度の補正予算が国会で承認され、1000万円×1万件と言われるものづくり補助金交付が決定しましたね。補助金のために設備を買うのは本末転倒ですが、以前から導入したかったものの、資金不足で先延ばしにしていた設備やプロジェクトがあれば非常に良いチャンスです。

申請書の書き方によっても採択確率が変わってきますので、もし自社単独での申請に自信のない方はご相談ください。

さてものづくり革新のキーワードを毎回ひとつずつ紹介しており、今回は「商品企画7つ道具」を取り上げます。

生産から企画へ

戦後の高度成長期を支えたのは統計技術を使った品質管理でした。作れば売れた時代には、生産しながらデータを解析し不良を出さないことが重要だったのです。そこで重宝されたのがQC7つ道具(Q7)で、その後QCサークルで改善活動を進めるにあたって、数値ではない言語情報を整理する必要性が生まれ、考えられたのが新QC7つ道具(N7)でした。

さらに1990年バブルが崩壊してモノ余りの時代になり、高品質&低価格であってもモノが売れにくくなると、どう作るかではなく何を作るか、つまり商品企画の重要性が高まってきました。そんな背景から日科技連主導のプロジェクトで生まれたのが商品企画7つ道具(P7)なのです。

下図1は、1つのヒット商品を生まれるまでに、3,000個の初期アイデアが存在することを示しており、この絞り込みプロセスを効率的に進めることは極めて有益なことに思えます。7つ道具を使えば必ず大ヒットするほど世の中は甘くはありませんが、標準的なツールと手順を参考にすることで成功確率の向上が期待できます。 

図1.成功する新商品開発までの経緯

商品企画7つ道具

商品企画7つ道具の流れと関連を図2に示します。大きくは顧客、利用者の意識を調査し、コンセプトを発想、決定し、最終的に設計仕様としてまとめるというステップで進みます。

図2.商品企画7つ道具の関係性

以下各道具(ツール)を簡単に説明します。

(1)インタビュー調査

P7ではグループインタビューと評価グリッド法が使われます。前者は、テーマに関心の深いユーザーを5~8人程度一室に集め、司会者が気持ちを解きほぐしながら参席者同士の会話を弾ませる事で、案件に対する潜在的な意識と要求を掘り起こします。後者はインタビュアーとユーザーが1対1で面談し、商品サンプルを2つずつペアで提示して、好ましい方とその理由を尋ねることでやはり潜在ニーズを引き出す方法です。

(2)アンケート調査

ユーザーあるいはその候補者に対して予め設定された質問への回答を回収し、統計的な処理によって意識、要求の全体像を知る方法です。 実施形態は多種多様で、目的とする対象や期間、内容によって適切に使い分けます。

(3)ポジショニング分析

アンケートなどで判明した重要な要素を2項目選んで2次元空間を作成し、そこに競合他社や自社の製品、サービスを配置して、それらの兼ね合いで新製品の性格付けを決めます。

(4)アイデア発想法

商品コンセプトを実現するためにはアイデア発想が必要になります。世の中には実にたくさんの発想法があり、P7では「焦点発想法」や「アナロジー発想法」、「チェックリスト発想法」、「シーズ発想法」などを用います。

(5)アイデア選択法

前項で発案した多くのアイデアから、現実的な企画に適したものを絞り込む必要があり、P7では、「重み付け評価法」や「一対比較評価法」が使われます。

(6)コンジョイント分析

コンセプトが絞り込まれてきた時に、多くの組合せを試してみるのは非現実的なために、項目と水準を直交表に当てはめて一部の組合せを抜粋し、統計的にユーザーの反応を分析して、最終的な仕様組み合わせを決定してゆく方法です。

(7)品質表

ここまでに整理した顧客要求を顧客表現のままに整理し、別途整理した品質特性との関連性をマトリクスで明確にする事で、顧客要求の重要度を品質特性の重要度に転換して、顧客要求に応える機能、性能を設計することができる手法です。

日本発で商品企画のために発展してきた品質機能展開(QFD)のキーツールであり、また別項で詳細したいと思います。

商品企画7つ道具利用の実際

7つ道具の説明を見るとなんだか膨大で尻込みしてしまいますね。一遍に全部理解、実践しようとすると確かに手に余りますが、例えばQC7つ道具も毎回全部使わなければいけないわけではなく、必要に応じて効果的なツールを選んで使えば良いわけで、P7も同じです。

ニーズ探索がキモであれば、インタビューやアンケートに力を入れ、コンセプトが大事ならポジション分析をきっちり考え、最終的に品質表で整理すれば良いでしょう。何のツールもそうですが、使っているうちにだんだん習熟して、早くうまく使えるようになってくるものです。

字数の関係で各サブツールは概要しか説明していませんので、詳細は書籍やものづくりドットコムなどで学習してください。

どうでしょう、参考になりましたか?ものづくりドットコムでは、石川朋雄さんがこの分野の専門家です。不明の点や相談はQ&Aコーナーや問い合わせフォームで質問して、実践してください。

この記事の執筆者
熊坂 治
山形県生まれ
東北大学工学部(応用物理学科)を卒業後パイオニア(株)に入社し、基礎研究、プロセス技術、生産技術、製造技術、工場計画、技術営業、事業開発など広範に担当。
2008年に経営工学部門、2009年に総合技術監理部門と技術士資格を取得し、退社後技術士事務所を開設して、品質工学をコンサルティング。
2011年に株式会社産業革新研究所を設立し、2012年にWebサイト「ものづくりドットコム」を公開。多くの専門家と協力しながら製造業のプロセス革新と課題解決を支援している。
博士(工学)、技術経営修士(専門職)、山梨学院大学客員教授(技術経営論)
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