メーカーが新規で加工先を探す際の理由を考える
ものづくり経革広場の井上です。
普段、弊社では「ホームページを使って新規の仕事を獲得していきましょう」とお話しています。ここではなぜメーカーは新たに外注先を探すのか考察しました。参考にして頂けたら幸いです。
この記事の目次
前提としてメーカーは発注先は変えたくないと考えている
当たり前のことですがメーカーの発注形態というのは決まっており、決まったものを決まった会社に依頼しています。そのため、こちらからアプローチをかけても「頼んでいるところは決まっているから、そこよりもコストが安くて同品質なら考えるよ」程度でなかなか検討の土俵にのることはありません。
わざわざリスクを冒してまで発注先を切り替えるメリットはないと考えるのが当然かと思います。では、まったく新規で企業を探すことがないかといえばそうではありません。どのような理由で新規で外注先を探すのかを考察します。
新規発注先を探す理由
①コスト削減
新規で発注先を探す際にまずはじめに思いつくのはこれではないでしょうか?購買・調達部ではコスト削減目標を掲げています。課員の査定項目のひとつにコスト削減目標の達成率も含まれるため、既存の発注先に削減を求めるだけでなく、今より安い発注先を常に探しています。
②高技術・異分野の技術
既存の発注先では対応できない場合に、新規で対応できる発注先を探します。技術的に難しい場合や、新製品開発で今まで利用したことのない材質や加工方法が必要になった場合などが考えられます。
③高品質・安定品質
高い品質を求められる製品において、既存の発注先でその基準がクリアできない場合や、従来の製品において何か品質に問題があった際に、その問題が頻繁に起こるようであれば新規で発注先を探すことを検討します。
④安定供給
納期遅れが頻発する場合に他社への切り替えを検討します。また、今後の増産に備え既存の発注先だけでは難しい場合も考えられます。
⑤リスク低減
2社購買にすることで、非常時に生産体制が機能しなくなることを防ぐことができるようになります。2社購買は適正価格?による仕入れ目的の印象が強いですが、実際に日本の東と西に購買地域を分けているメーカーもあります。
⑥長期安定化
後継者不足の問題から今まで頼めていた仕事が急に頼めなくなるケースです。長く付き合える発注先を探すことが今後は増えてくると思います。新規の発注先選定の基準として長期安定性という視点が出てきています。
⑦レスポンスの良さ
「対応が良くない」「対応が遅い」などの理由で新規の発注先を探すケースもよく伺います。回答が遅かったり、連絡をしっかりとっていれば回避できたであろうことで信頼関係を崩していることもあるかと思います。
以上のように様々なタイミング・理由で新規でも発注先を探しています。
受注側の会社として何を考えるか?
では、受注側の企業として何を考えればよいのでしょうか?当然、探す側のニーズを想定して自社のホームページで強調するポイントを考えることは必要です。さらに受注率を高めるためには外注先を探す理由がなにかを正確につかむことが必要なことだと考えます。
すぐ見積もり返答をすることがベストとは限らない
問い合わせが来た図面を素早く見積もり、返信することは大切です。ただ、それだけで終わってしまっては、後追いもしづらくなります。もうバトンは相手に渡ってしまい、あとは検討待ちになるからです。連絡しても検討中と言われたらそれまでですし、何が検討の要因かがわからないことも多々あります。
事前ヒアリングで状況把握
もし、見積もり提出の前に相手の頼む理由をもう少しヒアリングを行い、相手の持つ課題を共有できていたら状況は少し変わっていたかもしれません。技術的なものであれば、それがクリアできるかどうか、コスト的なものであれば見合っているかどうか、ターゲット価格はないのか?など具体的な話ができます。また、見積もり自体も相手の本気度が低いと判断すればある程度の見積もりを作成。逆に本気度の高いものであれば、改善の提案なども含めて見積もりを提出するなど力の入れ加減の強弱をつけられます。後追いもしたほうが良いかどうかもある程度判断できます。
相手の求める最適な提案を
送られてきた図面を素早く返信するだけが営業ではなく、探索背景を把握するためのヒアリングを強化することができれば、より的確な内容を的確なタイミングで提案できるようになります。相手としても自社の事情を理解してもらった上で提案いただけるのであれば信頼度は高くなります。より強固な信頼関係を作るためにも必要なこととだと考えます。
まとめ
発注先を新規で探す理由を発注元と共有することが重要です。それを一緒に解決するために相手側と協力する立場になることができれば、信頼関係を築き受注する可能性を高めることができるでしょう。上述した「新規発注先を探す理由」を参考に発注元のニーズを見極め、受注率を高めるきっかけにして頂けたら幸いです。