高収益の理由は「選択と集中」ー株式会社吉原精工ー
こんにちは。ものづくり経革広場の渡部です。facebookにも写真をアップさせて頂きましたが、先日株式会社吉原精工様に取材させて頂きました。yahooニュースに取り上げられていたので、会社をご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
働き方改革についての取材だったのですが、「選択と集中」によって高い収益構造を構築している同社の取り組みのお話もありましたので、こちらで記事にさせて頂ければと思います。
この記事の目次
うまい、やすい、はやい
ホームページに書かれている吉〇家のようなキャッチコピー。
本当は高いんじゃないの? だって残業ゼロで、しかも社員にしっかりとした給料を払っているんですから。加工費はそれなりに取っているんだろうと率直な気持ちで聞いてみました。
ー結構加工費は高めに設定されているんですか?
え? 他社から比べても安い方だと思いますよ。加工費の安さでリピートも多くいただいていますし。うちは7人で12台の機械を動かしているから、加工費は安く設定できるんですよ。1人で3台の段取りに30分かかったとしても、それから何時間、何十時間って機械がずっと加工してくれるから、人件費はほとんどかからない。
それに、夜勤専門の17時から25時勤務の人も1人いるから、基本的に機械はほぼ24時間ずっと動いている。仕事を埋めてしまって、稼働率もかなり高く維持できるのも安くできる理由の一つだと思います。あと外注もつかっていないのも安さの秘訣かな。
ー外注を使っていないって、少ないってことですか?
いや、ゼロ。全くのゼロ。
ーえ? ワイヤーカット加工以外の加工もある製品だったらどうするんですか?
そういう仕事は追加工の手配を先方でしてもらう様にしてる。うちはワイヤーカットの加工だけを請け負う。外注の加工を手配する手間の人件費考えたら、どうしてもその分値段を上げないといけなくなりますから。
そうった間接部門にかかる経費を徹底的に削減してるんですよ。営業もいないし、あと先日の取材にもあったように残業もゼロだから、残業代を計算する手間もない。納品や、加工材料の手配もすべて宅急便。年賀状や、お中元、お歳暮は送らないなどなど。うちはワイヤーカット加工だけに特化して、効率を上げることで、高い品質と安い加工費を実現させているんです。
顧客開拓率はたったの0.5%
ー営業がいないってことは新規の顧客開拓はどうしているのでしょうか?
ホームページから問い合わせがあるので、月に1~2社は新しく加工依頼をしてくれる会社は増えていっています。営業マン1人増やすより、ホームページのほうがかなり安上りですよ。みんなもちゃんとすれば仕事取れるのにね。
ー(吉原様がそうおっしゃっていただけると弊社も助かります・・・。)
以前に一斉DMを送ろうと思って業者にリストを作ってもらった事があるんですよ。弊社のワイヤーカットを利用する可能性のある会社のリストをね。そうしたら約10万社あったんです。弊社の取引先が今450社ぐらいだから、500社としても全体のたったの「0.5%」しか取引をしてないんです。今の取引先を2倍に増やしたとしても全体から見れば0.5%から1.0%に増えるだけですよ。これだけワイヤーカット加工に特化した選択と集中をしていても、まだまだ開拓の余地はあります。
どれくらい先の仕事まで埋めたいか
ー現在はお仕事忙しいんですか?
今はお蔭さまで忙しくさせて頂いております。1週間先まで機械がほぼ埋まっていますから。
ーえ? その先は埋まっていないんですか?
埋まってないですよ。できれば、100時間以上加工がかかるような仕事で機械が半分埋まっていて、機械全体は2~3日先まで埋まっているぐらいの方が新しい短納期の仕事も受けられるから良いんです。機械が埋まっていて、納期がかかる様な事が続くと「はやい」の部分が守れなくなりますからね。
ー先の仕事が埋まっていないと不安ではないですか?
弊社には取引先のお客様が450社程ありますから、自然とどこかからは仕事が来るので不安は感じません。これまでずっと試作、短納期の仕事をしてきたので、感覚としては2~3日ぐらいがちょうどよく思っています。1週間先まで仕事で機械が埋まっているとなると、先が埋まりすぎだなーって思いますね。
弊社はワイヤーカット加工「だけ」に特化していますから、外注の納期の事を考える必要がないんです。だから短納期の仕事も受けられるし、工程計画も立てやすいんです。身勝手な会社かもしれませんが、これからもこの選択と集中でやっていきたいと思います。
あとがき
加工費が実は高いんじゃないかと最初は思ってお話をお伺いしましたが、そこには徹底的に無駄をそぎ落として、自社の業務に集中してコストダウンをするという会長の経営哲学がありました。お客様からいろいろ言われて、あれもこれもとまとめて引き受ける事も多い中小の製造業界ですが、こういった経営手法もあるんだと感じました。