世界の製造業「インドの今」

 

ものづくり経革広場の橋本です。

インドでは2014年に総選挙が行われ、それまで最大野党であったインド人民党が大勝し、国民会議派が長年担ってきた政権を奪いました。そして、発足したモディ政権が「Make in India」を掲げました。インド経済の中心であったIT産業から製造業への転換をすることで世界の製造・輸出拠点を目指しています。

世界の製造拠点に向けて舵を切ったインド。現状を調べてみました。

インド市場の概要

インドは3,278,000km(日本の約8.8倍)もの広大な領土に12億9,000万人以上の人口(世界第2位)を擁しています。中国に次ぐ豊富な労働力と世界有数の数学力で2015年のインドの経済成長率は7.56%で中国を抜きました。また、東南アジアで製造業の拠点が多いタイや次なる世界の工場を目指すベトナムをも上回っています。

世界銀行より作成)

産業構造はGDP比で第一次産業16.5%、第二次産業29.8%、第三次産業45.4%となっています。ここが他の途上国と違うところとなっています。基本的に、途上国は第一次産業の比重が高く、経済発展に伴って第二次産業、第三次産業と比重が移行していきます。(ペティ・クラークの法則)

現在のインドの経済状況を考えると第一次産業と第二次産業の比重がもう少し高いはずなのですが、IT産業の発展により第三次産業の比重が非常に高くなっています。

CIA The World Factbookより作成)

 

なぜインドではIT産業が発展したのでしょうか。

インドのIT産業を発展させたカースト制度

インドで思い浮かぶものの1つはカースト制度ではないでしょうか。

カースト制度とは、ヒンドゥー教における身分制度のことです。生まれながらにして就ける職業が決まっており、職業ごとの序列も厳格に決まっています。1950年にカースト制度は憲法により廃止されましたが、「今の身分は前世の行いによるもの」と信じられているため、1950年以降もインドにカースト制度は残ることになりました。

そして、このカースト制度がインドのIT産業を発展させる原動力となりました。IT産業は新しい産業のため、カースト制度で規定されておらず、どんな身分の人でもITを職業とすることができました。その結果、身分に関係なく能力だけが求められるIT産業にインドの若者が飛びつきました。伝統的に数学に強く、イギリスの植民地だったという背景から英語も浸透しており、インドが世界有数のIT大国になったのも頷けます。

なお、近年では、インドの近代化によりカースト制度は薄れてきています。

強み

・圧倒的な生産年齢人口

中国に次ぐ世界第2位の生産年齢人口(およそ5億1,370万人)があり、それを背景とした人口ボーナスにより高成長が持続すると考えられます。またOECDによると2060年までにGDPでアメリカを抜くと見込まれています。

・インド経済を牽引する個人消費

インドはこれまで他のアジア諸国とは違い輸出志向型ではなく、内需手動での経済発展を遂げてきました。13億人弱の人口を抱え、今後も個人消費はインド経済を引っ張っていくと考えられます。

・西側諸国への輸出に関する地理的優位性

他のアジア諸国と比べて中東やアフリカ向けの輸出比率が高く、東西分け隔てなく経済関係を持っています。

弱み

・インフラの未整備

インド経済は慢性的な財政赤字が続いており、他のアジア諸国と比べても非常に大きくなっています。長期にわたる財政赤字により国内のインフラ投資が十分に行えていないのが現状で、その結果、外資系製造業進出の大きな阻害要因にもなっています。

・所得格差

元々抱えていたカースト制度による貧富の格差に加え、IT産業が台頭したことによる一部高所得者層と農業従事者の格差がさらに広がりました。

ネット事情

インドでも他の新興国同様GoogleとFacebookが2強となっています。インドのインターネット普及率は2015年でおよそ26%です。IT大国と呼ばれていますが、普及率はまだまだ途上といったところです。とは言うものの、人口で言えば3億人強の人がインターネットを使用しており、日本の人口をはるかに上回っています。インターネット回線もしばしば途切れてしまうのが現状ですが、この10年間でインターネット普及率は10倍以上にも拡大しているため、今後も右肩上がりにインターネット環境は拡大していくと予想されます。

インドでは、パソコンからスマホへ移行している日本とは違い、初めてのインターネットはスマホから、という人が多いことが特徴です。つまり、Webサイトを作成する際にはスマホで見ることを前提としていかなければなりません。

インドに進出している中小企業

レッキス工業株式会社

大阪市に本社をかまえる同社は2013年にインドへ進出しました。インドのみならず、アメリカやタイ、イタリアにもパイプねじ切り機を主力として積極的に海外進出を行なっています。

大塚工機株式会社

横浜市に本社をかまえる同社は2011年にインドへ進出しました。自動車や産業用輸送機のパーキングブレーキを製造しており、今後の市場拡大を見据えて設備強化や人材育成を推進しています。

最後に

インドはその莫大な内需の成長性など、日本企業にとっても注目すべき市場であるといえます。しかし、所得水準の低さや劣悪なインフラ、財政赤字の慢性化など課題も多いのが現状です。実際に、他のアジア諸国の日系企業の利益と比べて、インドでの黒字比率は低いです。

(JETRO「2016年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」より作成)

また、モディ政権の構造改革についても当初の期待には応えられておらず、変革は果たせていません。低収益・高コストで利益確保が難しいのが今のインドビジネスです。短期的な投資回収は見込めません。

しかし、インドは着実に成長しており、まだまだ成長していく国であるといえます。内政・外交も安定しており、BRICsの中で最も堅調な状態を維持しています。IT産業が活発なインドで製造業が伸びてくれば、IoTで先頭を走る存在になるかもしれません。ビジネス環境は非常に厳しいものではありますが、長期的目線で粘り強く取り組む姿勢が求められます。

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