歴史から考える製造業のブランディング
こんにちはものづくり経革広場の永井です。今回はブランドの歴史から製造業のブランド戦略についてです。
ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
ブランドの起源
現在では、ブランドは製品や企業のイメージを表す用語になっています。
例えば、女性向けハイブランドであればシャネル、壊れにくい時計であればG-SHOCK、スポーツドリンクであればポカリスエットのように、「◯◯◯であれば△△△」というイメージのことをブランドといいます。とりわけ、高級なものはハイブランドと言われ、価値が高いという印象を与えています。
ブランドの歴史は古く、人類に「所有する」という概念が生まれたとき、所有者を明確に区別するため、ものに名前や刻印をしたことがブランドの始まりと言われています。また、「ブランド」という言葉は、自分の所有する牛を他の牛と区別するために「焼印をつけること」を意味する brander というノルウェーの言葉が起源とされています。
つまり、ブランドの起源は所有のありかを明確にすることであり、転じて製品や企業のイメージを表す言葉になったということです。
まとめ
- ブランドの起源は「所有」を表す言葉であった。
- 製品や企業のイメージを表す言葉になった。
ブランドの発展
ブランドの概念は古くからありますが、広まったのは18世紀の終わりに始まった国際博覧会だと言われています。写真、テレビもなく、交通機関が発達していなかった時代にブランドを広めるのは口コミだけでした。
その中で生き残っていくブランドは最高品のものだけです。そして、最高品が集まる国際博覧会はブランドを広める格好の場になりました。
世界中から集まった貴族が国際博覧会で商品を購入し、帰国後に口コミや人に見られることで商品がどこのものか広まっていくのです。このときに必要な要素が一目で見てわかるデザイン(ブランドロゴ)なのです。
流れをまとめると、最高品が集まる国際博覧会で貴族が商品を買う → 帰国する → 庶民は貴族が持っているものと同じものが欲しくなる → 貴族の所有している商品がどこの誰が製造したものかを商品のデザインで判断する → 製品が売れ、ブランドイメージが確立される。
近年では、人を介した口コミという限られた伝達方法だけでなく、テレビやインターネットの普及によってブランドを広めやすくなりました。
特にインターネットの影響は大きく、これまでTVCMを流す資金のある企業しか、自社のブランドを広報できませんでしたが、誰でも簡単に広報できるようになりました。
近年ではホームページを作る際の費用も安価となり、大きな資金をかけなくても自社ブランドを普及出来る時代になりました。
まとめ
- 国際博覧会によって最高品のブランドイメージが普及した。
- インターネットが普及し、誰でもブランドを広められるようになった。
自社製品をもっている製造業のブランド事例
日本のものづくりを支えてきた大手ブランドのホンダSONYを事例を紹介します。
ホンダ
ホンダは部品の下請けからメーカーになった数少ない企業の一つです。
はじめは「ピストンリング」の製造、そこからエンジンの研究を行い「バイクメーカー」へ、そして「自動車メーカー」へと発展を遂げ、今では飛行機まで手がけるようになっています。
ホンダが初めて世界で認められたのが「マン島TTレース」での活躍です。
此のレースには未だ會つて国産車を以て日本人が出場した事はないが、レースの覇者は勿論、車が無事故で完走できればそれだけで優秀車として全世界に喧傳される。従つて此の名声により、輸出量が決定すると云われる位で、独・英・伊・仏の各大メーカー共、その準備に全力を集中するのである。
1959年の初参戦のときには5台を完走させ、2年後の1961年には125ccクラス、250ccクラスともに1位から5位までを独占するという快挙を成し遂げ、その名を世界に知らしめました。
はじめのヒット商品は1958年に販売された「スーパーカブC100」です。マン島TTレースへの参加も後押しとなり、世界的なバイクになりました。
そこから1963年に初の「4輪自動車」を販売し、1972年には不可能と言われた排ガス規制(マスキー法)を世界で初めてクリアするエンジンを開発し、ホンダの技術力を世界にアピールしました。
このような背景からホンダは「独自の技術を使って、最高のエンジンを作る企業」としてのブランドができたわけです。
SONY
SONYもホンダ同様世界に代表される日本の電機メーカーです。
SONYはもともとブランドを意識して名前を付け、すべての製品に「SONY」のロゴが入るような販売戦略を行っています。
「人がソニーの名前を聞いて思うこと」。それが、ブランドイメージだとすれば、それは企業が持つ文化そのものだ。 SONYの四文字のロゴを大切にし、その普及に心を砕くと同時に、まずは「商品ありき」でモノづくりに始まり、広報・宣伝活動、経営者をはじめ従業員の個性、事業展開、経営方針、企業風土など、創業以来の企業活動の集大成として、SONYの四文字の持つ力は育て上げられていく。
ラジオやウォークマンなど数々のヒット商品を生み出し、「SONYは常に先進的な技術、商品企画を武器にしてきた企業」というブランドができたわけです。
良い製品を生み出して行くうちに企業名が自然とブランド化したわけではなく、はじめからブランドを意識していたところは見習うところが多いです。
自社製品を持っていない製造業のブランド事例
自社製品を持っていない製造業のブランド事例として、北嶋絞製作所、中田製作所を紹介します。
北嶋絞製作所
北嶋絞製作所はへら絞りを得意としている製造業です。特殊かつ大きなものを加工してきた実績から、日本のロケットである「H ⅡA」の頭の部分など、絶対に失敗できない製品の加工なども行っています。特に、職人の技術には自信を持っていて、技術の安売りは絶対にしないという経営方針も特徴的です。
「できない」という言葉を嫌い、「とにかくやってみよう」という姿勢から、いつしか特殊なものは北嶋絞製作所ならやってくれるというイメージが浸透していきました。
そして「“へら絞り”では日本でトップクラスの技術を持つ企業は北嶋絞製作所」というブランドができたのだと思います。
中田製作所
中田製作所はアルミの加工を専門としている企業です。アルミであればほぼどのような加工もできる設備を持っていますが、あえて「超微細加工技術」に絞ったブランドを作っています。
特に、インターネットの活用がうまく、「アルミ 微細加工」のキーワードで検索すると検索結果1位にできてきます。
(2017年2月現在)
中田製作所の微細加工技術は高く、ø5µの極微小径穴30ヶ所連続穴あけ加工技術で、穴公差は±0.2µ程度を実現。板厚30µまで可能だそうです。
ブランド作りに必ず必要なもの
これまでの事例からブランド作りには「何かに特化した技術」が必要だと予想できます。
BtoCのメーカーであれば、技術を持ち、実績を積み、他人から評価されながら、自然とブランドを作っていくことも可能です。
ただ、自社製品を持っていない加工業者は製品に自社のロゴを入れることもできず、製品を見ただけでは、どこの企業のものすら判断されないため、意図的にブランドを作っていく必要があります。
次回はその様な加工メーカーでも企業ブランド力を高めるための手法をお伝えいたします。