大手企業の休眠特許活用と中小製造業の機会について
ものづくり経革広場の徳山です。今回はオープンイノベーションの潮流の中で話題になっている「大手メーカーの休眠特許活用」に関して書いていきたいと思います。
この記事の目次
休眠特許活用の現状とメリット
全特許のうちおよそ50%がほとんど活用されていない休眠特許と言われています。そんな休眠特許を再活用しようという動きが大手メーカー各社で行われています。
長いこと休眠してしまっている、今まで役に立っていない特許が本当に価値があるのか、という声もありそうですが、大手で休眠してしまう特許は、その特許によって築かれる市場規模が小さいという理由で休眠してしまうことが多くあります。
しかし、中小企業にとってみれば大手が小さいと考える市場規模でも十分という場合が多いので、活用の可能性が見出せるのではないかと考えられています。
休眠特許活用による両者のメリットは下記のようなものが挙げられるかと思います。
大手企業のメリット
- 特許が普及すればマーケットが広がり、結果自社の利益として戻ってくる
- 一銭も稼いでいない休眠特許がライセンスフィーを稼いでくれるようになる
- 休眠特許をきっかけにイノベーティブな発想が浮かび、ビジネスチャンスが広がる
中小企業のメリット
- 技術開発の時短
- 企業のネームバリューを活用できる(広告効果だけでなく、社員のモチベーションアップにも)
- メディアに取上げてもらいやすい(オープンイノベーションの取組みの一環として評価される)
休眠特許の活用事例
次に休眠特許が中小企業で活用された事例と、現在大手メーカーで休眠特許活用を推進されている方のお話を聞く機会がありましたので、ご紹介します。
中小企業で休眠特許が活用された事例
- 高い抗菌性と衝撃吸収性を持つ人工畳
堺市の畳メーカー タバタ株式会社が、株式会社神戸製鋼所の特許技術である高機能抗菌鍍金技術「ケニファインR(登録商標)」を活用し、大阪府立産業技術総合研究所の技術協力のもと、「高い抗菌性と衝撃吸収性を持つ人工畳」を商品化。 - 光で抗菌できる包丁
堺市の刃物メーカー マック株式会社が、富士通株式会社の特許技術である光触媒「チタンアパタイト」を活用し、「光で抗菌できる包丁」を商品化。
現場の休眠特許活用担当者インタビュー
下記は、某検査機メーカーの休眠特許活用担当者の方にインタビューした内容です。
・休眠特許活用の背景や目的は?
会社で取得した特許のおよそ半分は使われていない現状が勿体ないという個人的な想いとしてはじめました。せっかく特許取得しても全く使われないのでは開発者のモチベーションも下がるのでは、とも考えていました。ライセンスがうまく決まれば報奨金がもらえるので、それを個人としてはモチベーションとしています。また、弊社が特許を押さえてしまうことで本当にその技術を必要とする会社が使えなくなってしまうのは社会的にどうなのかな、という想いもあります。
・どのような特許が休眠してしまっているのか?
とある製品に使う技術を同時に複数方式を見当する中で、実際に製品に搭載する技術は1つだけ、といった場合に使われなくなるケースが多いです。将来使うかも知れないということで活用せず取っておいたり、競合他社にその技術を使わせないための防止策として保有しそのまま休眠するケースが多いです。
・休眠特許の活用における一番の課題は何か?
他の分野にも転用できそうな見込の高い技術は既製品に使われていて解放できないものがほとんど、ということです。開放している特許は、いずれも用途が限られた条件のものが多く、転用の可能性が低いものが多いです。ただ、既製品に使われているものでも、競合関係になりようがない異業界の会社であればライセンスする可能性はあるのではないかと考えています。
・休眠特許を広めるために具体的にどのような活動をしているのか?
行政の機関で技術仲介をしてくれる部門があり、そちらと連携した結果、具体的なマッチング案件に結びついた事例があります。その他は、開放特許データベースへの掲載やターゲットになりそうな会社へメールを地道に送る、といったことを行ってきました。
以上、今後更に活用が広まりそうな休眠特許。皆様も情報にアンテナを立ててみてはいかがでしょうか。