生産戦略を考える

ものづくり革新ナビゲーターの熊坂です。

先週長女に第一子、自分にとっては初孫が誕生し、名実ともにおじいさんになってしまいました。その数日前には個人年金の受給が始まり、まるで私を引退させようという見えない力が働いているようです。しかしどっこいそうは行きません。労働人口が減っていく中、健康な限り70歳までは働かないと日本は成り立ちません。

5月25日の技術士会青年委員会で課題解決研修を担当する中で、技術者としての個人的半世紀(反省記)を語ったところ望外の好評をいただきましたので、今後はものづくり革新と併せて、自身のベンチャー経験を後進に伝える活動も続けていきたいと考えています。

さてものづくり革新の手法を一つずつ紹介していますが、今回は「生産戦略」について考えてみます。

生産戦略とは

「生産」とは、JISの定義によれば「生産要素である素材などの低い価値の経済財を投入して、より高い価値の財に変換する行為または活動」であり、言い換えれば図1のように1M(材料、部品など)に3M(人材、設備、方法)を加えて付加価値を向上させる活動です。一方「戦略」は、敵に勝つための総合的・長期的な計略です。ということで生産戦略は、4Mを競合よりも上手に組み合わせて、需要家の期待するQCD(品質、コスト、納期)に適合させるための一貫した計画と言えるでしょう。そのためには、何をいつどこでどう作るかを含めてしっかり検討することが重要になります。

図1.生産とは4Mで付加価値を上げてQCDを達成する活動

明治の文明開化以前は、PLC(製品のライフサイクル)が極めて長かったために、10年20年ゆっくり考えていても良かったのですが、今や長期的計略と言いながら半年で戦略が陳腐化しかねない製品分野もあり、常に気を抜くことができません。

生産戦略策定の手順

生産戦略を策定する時は図2のような手順が取られます。

  1. 外部環境分析:先に企業戦略を策定するために、外部(社外)環境を分析します。ここには業界に関係のない政治、経済、社会、科学などのマクロ分析と、自社が属する業界の競合関係、価格や技術動向などのミクロ分析が含まれます。
  2. 内部環境分析:次に社内の状況を分析します。経営者、立地状況、設備、従業員、資金力、営業力、技術力などを評価します。自己分析は思ったより難しく、競合との比較で判断するのが良いでしょう。
  3. 企業戦略策定:内外環境をクロスSWOTで対照させて、企業としての戦略をつくります。前向きな方針とリスク管理をバランスさせます。
  4. 生産部門目標策定:企業戦略を達成するために必要な生産部門の目標が導き出されます。
  5. 能力評価:内部の能力を評価します。
  6. 生産戦略策定:生産部門目標を達成するための方針や進め方を項目ごとに設定します。
  7. 生産実行:戦略に基づいて生産を実行し、管理します。
  8. 結果のフィードバック:実行後に出てきた生産性、品質、コスト、納期などのデータをまとめ、現場改善のためにフィードバックし、必要に応じて生産計画を修正します。

図2.生産戦略策定手順

大企業では生産企画部といった独立部門が生産戦略を策定しますが100人以下の企業では社長と生産部長が、20人以下の企業では社長が頭の中で考えて、明文化しない場合もあるようです。社内意思統一のためには、文書化し社員全員で共有しておくべきものです。

生産戦略の構成要素

生産戦略の構成は図1の⑥に挙げた5つが主要な要素です。

  1. 生産立地:どこで作るのか、一か所か、複数個所か。海外進出という選択肢もあります。
  2. 製品計画:何を作るのか。生産方式と能力との兼ね合いで、受注生産で生産能力過剰であれば受注したものを定められた順で生産しますが、見込み生産や需要過多であれば、作る優先度を設定する必要があります。
  3. 生産方式:生産の設備配置や方式は突然用意ができません。あらかじめ計画的に準備しておく必要があります。
  4. 生産能力:需要が安定的な時は良いのですが、拡大期は大きな判断を迫られます。大きめの予測に合わせて設備投資をすると、他社に先行して市場占有が図れますが、予測を下回った場合は経営的窮地に追い込まれる場合があります。シャープの堺工場が好例で、受注が成功していれば英断と評価されていたはずです。
  5. 要員計画:こちらも先行して多めに採用して教育を進めれば、拡大期には競合に先んじることができるものの、衰退期には重荷になります。

今後の生産戦略

1990年までの高度成長期には、多少過剰に投資しても後から需要が追いついてきましたから、平均的な生産戦略でも通用していましたが、人口減少期に入った日本で横並びの生産戦略では消耗戦になりがちです。国内であれば、自社のドメインでナンバーワンか、競合がいない分野でオンリーワンを目指す必要があります。技術や価格ではなく、納期や特別なサービスでその地位を獲得することも選択肢でしょう。

そしてもう一つは海外で伸長している市場に立地を考えることです。近年の海外進出は安く作るためではなく、現地の需要を取り込むことに目的が変わっています。日本では当たり前と考えられている「おもてなし」「思いやり」「気配り」生産が、海外では高い価値を認められ、その分野でオンリーワンになれる可能性があります。その価値をしっかり価格に反映させることができれば、現地でのポジションを獲得することも十分可能です。

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