中小製造業の製品開発に必要な「機能性」
このブログは中小製造業の海外進出のノウハウを発信します。
こんにちは、株式会社日本クロス圧延の岡です。
弊社は小規模な金属材料のメーカーです。国内での流通量が減少する中、海外に販路開拓をするぞ!と考え、自社製品を「R&D Materials」というブランディングをし、そして実際に海外にプロモーションしながら経験したノウハウやダメだったことなどを発信していきます。
私も経験しましたが「海外に進出するぞ!」と気合を入れて、英語版サイトの製作や海外の展示会などに出展しても、思ったより成果が上がらなくてガッカリした経験なんてありませんか?
だけど製品の魅力や強みを分析して、効果的に発信することで反響が全く違うものになります。
そのためのブランディングやプロモーションなど戦略を考え実践しましょう!
今回のテーマも「ものづくり企業の連携」による製品化のお話です。
中小機構やJETROなどの海外販路開拓の助成や支援を受けようと考えても、残念ながら「製品」を持っていない会社は申請しても採択される確率がほぼゼロです。
なぜかと言えば彼らは「製品」の革新性や他国の同様の製品の性能比較、マーケティングなどの情報を吟味し、商社目線で支援すべきか判断するからです。
中小機構やJETROの海外のマーケティング能力や情報量、分析能力は凄まじく、思わず尊敬しちゃいます(笑)
そんな無敵な分析能力の彼らでも「製品」以外はちょっと苦手で、高度な加工技術があるが「製品」を持っていない会社の「加工技術」が海外に「売れる?」かどうかの判断は苦手なのです。彼ら職員や海外担当の専門家は技術屋ではないからです。
そんなわけで1社ではなかなか自社製品を持つことが難しいが、数社で連携して製品を作って販路開拓しよう!というのがこの章のテーマで、だらだらと書いていたら、もう7回目となってしまいましたので、今回でまとめる予定です(笑)
魔法の箱の製品化への道
男も女も政治家も「ブレ」てしまうと、失敗するケースが多いと思います。だからブレないように製品の骨格を作りましたね、弊社の骨格はこんな感じでした。
1.短時間で製品化するためシンプルな製品
2.量産は考えず、競争は避けつつ利益を確保するニッチな製品
3.売りやすく代理店の利益を確保する価格設定:生産原価15万円、売価30-50万円
4.納期2周間程度を想定すると3-4社で生産
5.販路開拓助成金を見据えてちょっとハイテク系(笑)
そして高価な金型も使用しない方向で考えていくと、どうしてもシンプルな製品となります、だから「箱」を作ることにしました。一般的なアルミ製の板金ケースの売価が約3000-5000円だと思います。弊社の骨格では売価が30-50万円なので100倍の金額の「箱」を販売する計画となります。
それこそ詐欺じゃなければ魔法が必要です。だから魔法の箱を製品化することに決定しました。
魔法=機能性
本当のことを言うと私は魔法を信じていないのです。ビスケットを箱に入れてふたを開けたら2個に増えていた的な、本物の魔法の箱は作ることができないので、工業系らしく機能性のある箱を製品化しました。
箱に求める機能性って何だろうか?と少し考えてみました。
- A.保温性:お弁当箱 魔法瓶、クーラーボックス
- B.遮音性:スピーカー、防音室、ヘッドフォンマッフル、自動車、産業機器
- C.制振性:スピーカー、精密機器保護、精密工作機械、旋盤、検査機器
- D.耐熱性:金庫、地震計、地球工学、プラズマ関連、レーザー加工機
- E.電気遮断性:キュービクル、発電所、カミナリ?、2次電池、キャパシター
- F.磁気遮断性:画像センサー、医療用センサー、通信機器
- G.電磁波遮断:電磁波からの回路の保護、
- H.放射線遮断性:原発関連の検査機器、放射線測定器
機能性を持つ箱って意外に多いものですね、それこそみんなが持っているクーラーボックスだって「機能性」をもった箱なのです。
「どんな機能の箱を作ろうかな?」と考えながら絞り込んでいきました。A.保温性,B.遮音性,E.電気遮断性は安そうだからいきなり却下(笑)
G.電磁波遮断.H.放射線遮断性はハードル高すぎというか、性能の検証ができないから却下
C.制振性.D.耐熱性もいいんだけど、最終的には消去法でF.磁気遮断性の磁気シールドケースを製品化することに決定!
磁気シールド性は「パーマロイ」という磁性材料を使用するのが、最も磁気シールド性能に優れるとのことなので、サクッと材質を決定しました。そして金型を使わないので短期間でプロトタイプが完成!同時に中小企業団体中央会に中小製造業の連携支援の依頼も同時進行です(笑)
簡単に書きましたが、というわけで最初の自社ブランド製品を持つことが出来ました。こんな単純な製品でも、製品化までにはそれなりに作業があったので、複雑な製品なんて自分には無理ですね、でも自社製品を持てるということはうれしいものです。
さいごに
というわけでだらだらと7回にわたって連携によるものづくりのお話をしました。
やり方に確固たる自信があったわけでもないし、もっと他にも方法や考え方ってあると思うのでこれが最高!とは言えませんが、何かの参考になれば幸いです。
日本の中小製造業の海外販路開拓に少しでもお役に立てればと思いブログを書かせていただきました。何かの参考になれば幸いです。
次回もまたよろしくお願いいたします。