中小企業のオープンイノベーション

ものづくり経革広場の徳山です。

オープンイノベーションという言葉がニュースでも多く取上げられるようになりました。しかし、皆さんの周りで何か具体的な変化があったかと聞かれるとまだ実感はないレベルかと思います。

オープンイノベーションと言われると大層なことに感じますが、自社の技術に拘らず他社の技術を積極的に取り入れるという意味で、昔から似たような取組みを行っている会社は多数いたのではないでしょうか。

しかし、消費者ニーズの多様化に合わせた製品開発が求められ、自社にはない技術が求められたり、プロダクトライフサイクルが早まり、自社で技術を開発し続けるよりも外部から調達した方が開発コストが安くなったり、などといった外部環境の変化がありオープンイノベーションの必要性がより高まったと考えられます。

そんなオープンイノベーションですが、製品開発を行う際に、自社技術だけでは不足してしまう一欠片の技術を外部から調達するといった「インバウンド型」が中心で、その活動は情報をオープンにせず、自社もしくは技術仲介業者などを使って水面下で行われることがほとんどでした。

最近では、製造業に限らず様々な業界の企業がオープンイノベーションに取り組んでおり、その方法も「インバウンド型」から少しずつ変化してきているようです。

情報のオープン化(インバウンド型からアウトバウンド型へ)

今までは水面下で必要な欠片を探索する活動が中心でしたが、一昔前から少しずつ情報を積極的にオープンにする「アウトバウンド型」が増えていきました。

アウトバウンド型では自社の技術を積極的にオープンにして、「この技術を使って一緒に何か製品開発や事業開発をしませんか」と問いかけていきます。

インバウンド型の場合、課題と解決手段が明確な場合が多く、製品開発に必要な技術を見つけるという目的を達成できる可能性が高いものの、大きなイノベーションには繋がらないことが多いのが特徴でした。しかし、アウトバウンド型の場合は、不特定多数に問いかけることで思いもよらぬ分野の人や企業からの提案を集めることができ、結果として大きなイノベーションに繋がる可能性を秘めているのが特徴です。

事例:TOYOTA NEXT

トヨタ自動車が自社のオープンイノベーションを推進するために運営しているメディアです。

このWebサイトでは、トヨタが所有している技術だけでなく、ビッグデータ、販売チャネル(ディーラーネットワーク)、オウンドメディアなども紹介されています。

メーカーが行うオープンイノベーションというと、技術イノベーションが中心だと思われがちですが、世界のTOYOTAが持つ資産は技術だけには留まらないので、様々な資産を活用したオープンイノベーションが可能と考えているようです。

事例:大阪ガス

大阪ガスがコーポレートサイトの一角に掲載しているオープンイノベーションの特設ページがあります。

ここには自社が開発した技術(シーズ情報)が具体的に掲載されており、この技術を使って何かできる人は連絡して下さい、という窓口になっています。また、大阪ガスが欲しいと考えている技術情報(ニーズ情報)も掲載されているのが特徴です。

1対1から不特定多数へ(連携型へと変化)

更にオープンイノベーションを進化させた形が連携型と言われています。大きなイノベーションを起すには様々な分野の人間が入り混じること、そしてイノベーションを起し続けるには1対1の関係ではなく、エコシステムやコミュニティの中で対話し続ける環境づくりが必要となります。

事例:OPC HACK&MAKE

オリンパスが行っている「OPC HACK&MAKE」ではカメラの交換レンズ、アクセサリー、カメラを操作するハードウェアやUI(ユーザー・インターフェース)をユーザーが自由にカスタマイズできる、という新しいコンセプトのカメラを使って、貴方ならどのような製品やサービスを開発しますか?というお題を参加者に与えています。

Webサイトでお題を与えるだけでなく、イベントやSNSなどで参加者同士がコミュニケーションする場を提供し、相互コミュニケーションを行いながら進めていくのが特徴です。スマートウォッチと連動するカメラ、星座早見表と一体化したカメラなど、短時間で多くのアイディアを試作段階まで創り上げられました。このプロジェクトは今後も継続していくようです。

オープンイノベーション2.0の時代へ

このようにオープンイノベーションは「インバウンド型」から「アウトバウンド型」へ、そして「連携型」へと時代の変化とともに変わりつつあるようです。上図にあるように、今後は主役が企業から個人へと変わっていきます。

様々な企業で副業やパラレルワークが浸透していく中で、個人の考えやアイディアが大手企業の製品開発に影響を与えられる時代へと変わっていきます。自前主義を脱し、1対1の関係ではなく、エコシステムやコミュニティといった「場」をユーザに提供することで、常に新しいアイディアを調達できる仕組みを創り上げる必要がありそうです。

日本でのオープンイノベーション

日本でも上記のようなな事例が出てきているものの、欧米と比べるとまだまだ進行は鈍いようです。出遅れる要因は様々なありますが、大企業と中小企業がコミュニケーションする機会が欧米に比べ圧倒的に不足していることが挙げられます。

  • 大企業は自社の開発情報を表に出したがらない
  • 中小企業は自社技術を積極的に開示できていない

現存する工場検索や製品検索サイトではあくまでも能動的に情報を取りにいかなければならず、忙しい技術者には情報を取得しづらいし、そのようなサイトは有料会員を優先的に紹介するので本当に知りたい技術情報にたどり着きづらいといった問題点があります。

また、大学や研究機関も中小企業とのマッチングを求め始めています。大学等では特許や技術を開発したものの実用化されていないものも多く、技術移転機関などを設け、民間企業へ大学が所有するライセンスをいかに転用するか、といった取組みが盛んになってきています。技術移転が進んでいる欧米の大学の多くが、大企業よりも中小・ベンチャー企業へ数多くの特許をライセンスすることで大きな実績を挙げています。日本の大学も成果を挙げようと中小企業へ技術を移転できないかと動き出しているところです。

どうすればオープンイノベーションが進むのか

それでは、どうすれば日本で大手メーカーと中小製造業のオープンイノベーションが進むのか。前述した通り、大企業か中小企業のどちらかが歩み寄らなければならないのですが、大企業では常に競合他社との激しい製品開発競争を行っており、容易に技術課題を公にすることはできません。ですので、中小企業側の情報発信が重要になってくる訳ですが、自社技術のPRが苦手な中小企業が多い日本では発信する情報量そのものが足りていない、という点があります。

また、情報の質に関しても問題点が挙げられます。大手メーカーの技術者と中小企業とで使っている「言語」に違いがが生じることが多々あります。「言語」と言ってももちろん日本語とか英語という話ではなく、どういったレイヤーの言葉を使っているかということです。以前のブログでも書いたMFTフレームワークの考え方のように、市場面、機能面、技術面のどのレイヤーの言葉を使っているかで言葉のすれ違いが生じてしまいます。

メーカーの技術者は技術課題を解決するための「機能面」に焦点を当ててものを語るに対し、中小企業側はどうしても「技術面」に焦点を当てて自社の技術を語りがちです。この両者の言語を翻訳(コーディネート)する存在もとても重要になると思います。

我々は中小企業の皆様の情報発信を手助けしながら、言語の翻訳を長年の間手伝ってきました。そこで培ったノウハウや経験をオープンイノベーションが促進するよう役立てることができればと考えております。

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