IoTの波が中小製造業に与える影響とは

ものづくり経革広場の徳山です。

最近よく聞かれるようになった「IoT(アイオーティー)」という言葉。その意味は何となく分かっているけど、具体的にどのような変化がこの業界に訪れるのか知りたい、というお話をよく聞くようになりました。

IoT(Internet of Things)とは

そもそも言葉の意味が分からないという方もいらっしゃると思うので、概要だけ触れてみたいと思います。

IoTは「モノのインターネット化」と表現され、今まではパソコンやスマートフォンといった機器がインターネットに繋がっていましたが、これからは様々な「モノ」がインターネットに繋がっていくことを意味します。

家電、自動車、工作機械など様々な「モノ」がインターネットと繋がっていくことによって、多くの「便利なこと」が生まれてきます。外から遠隔でエアコンを操作したり、自動車に乗っている時にオススメのレストランをカーナビが教えてくれたり、建設機械が自動的に燃料の残量を教えてくれたり…といった具体です。

「そんなの昔からあるじゃないか」と思われる方もいるかと思いますが、最近この言葉が騒がれているのは本格的な普及段階に入ってきたからだと思います。普及の背景として、主に下記の要因が挙げられます。

センサー技術の発展

様々なセンサーが開発され、それを安価に調達できるようになってきた、というのが一つ目の要因です。

一概にセンサーと言っても様々な種類があります。温度、湿度、騒音、衝撃、振動、転倒、存在検知など…。数え上げればきりがないのですが、このセンサーから得られる情報を処理して何らかの価値のある情報へ変換することこそがIoTの原点となりますので、センサー技術が発展したことはIoT普及の主要因と言えます。

インターネットの普及

「モノ」がインターネットと繋がり様々な情報を我々に提供してくれるのは確かに素晴らしいですが、前提としてその情報がどこにいてもリアルタイムに伝わってこなければ意味がありません(便利とはいえません)。

そういった意味ではインターネットが使えるインフラが整備され、どこにいてもインターネットに繋がっていられる環境が普及したことも大きな普及要因と言えます。

データ処理能力の上昇

センサーから得られたデータをそのまま受け取ってもあまり便利な情報とはいえません。得られた情報を解析し価値ある情報に変換されることで初めて便利な情報といえます。

その情報を自動的に解析し瞬時に我々のもとへ届けるには、膨大なデータを処理する技術が必要です。随分前からクラウドコンピューティングという言葉が流行りだし、それに伴いサーバの処理能力は著しく上昇しています。こちらも普及するための要因の一つと言えるでしょう。

IoTが引き起こす第4次産業革命

ものづくり経革広場でも何度か取上げたドイツの国策「インダストリー4.0」もIoTの力によって成し遂げられようとしています。また、IoTが「第4次産業革命」を引き起こすと言われています。

蒸気機関の活用で繊維産業が発展したのが第1次産業革命、電気エネルギーの力であらゆる産業が大量生産できるようになったのが第2次産業革命、ITの力で製造業の生産効率を高めたのが第3次産業革命と言われています。

よく第3次と第4次とは何が違うのかと言われますが、大きな違いはインターネットを活用した”繋がり”があるかないかです。今まではあくまで自社内の生産効率をITの力によってどう高めていくか、といった話でありトヨタ生産方式をはじめ日本も世界で大きくリードすることができていました。

第4次産業革命ではインターネットの力を使って、工場と工場が繋がったり、ついには工場と消費者が繋がったり、という現象が起きてきます。消費者のニーズがリアルタイムで工場に伝わり、それに応じた生産を工場間が自動で連携し進める。それによりカスタムメイドを大量生産(マスカスタマイゼーション)できるようになると言われています。

こうなってくると市場のルールが変わってきます。品質の良いものを大量生産できる会社よりも、消費者のニーズを的確に掴み、それぞれのニーズに合わせたカスタムメイドの製品をスピーディに生産し提供できる会社が勝者となります。製造業ではないGoogleやAmazonがものづくりに参入し始めているのは、市場のルールが変わろうとしている変化を見抜いてのことです。

中小製造業に与える影響を考えてみる

最近GoogleやAmazonがものづくり系のベンチャー企業を買収しまくっています。「インターネット業界」を土壌としていた彼らがIoTの波を受け、どんどん「製造業界」へ近づいてきています。こういった潮流を見ていると、これからの世の中を考えていく上で「業界」という枠にとらわれて考えること自体がナンセンスな気がします。まずは頭を柔らかくすることが求められているのかもしれません。

「モノ」から「コト」思考へ、という言葉をよく耳にしますが、今までの常識にとらわれず消費者の求めるコトに真摯に向き合える企業がこれからの勝ち組になるのではないでしょうか。

こういった状況を踏まえつつ、IoT普及における我々の「機会(チャンス)」について考えていきたいと思います。

スマート工場を創り上げる

IoTの波に乗り自社の工場をスマート化していく、というと少しハードルの高い話に聞こえるかも知れませんが、これからは生産力やコストで勝負する時代ではありません。マスカスタマイゼーションを可能にするための小さくても賢い工場を創っていくことを目指すのも面白いかもしれません。

プロトラブズ」という会社が、Web上で試作品の製造をすべて完結させるという仕組を作り上げています。まるでネット通販でモノを購入するように試作品の製造依頼ができてしまうのです。市場のルールが変わりつつある今、先見性をもってこういった仕組に投資できる会社は少しずつ競争力を高めていくのではないでしょうか。

新しいチャレンジができる

最近ものづくり系ベンチャーが増え、VCからの資金調達、IPO、M&Aなどが増えてきています。今まではベンチャー企業といえばIT系が中心でしたが、ものづくりに関しても「参入障壁の低下」や「市場拡大の期待感」から多くのベンチャー企業が生まれています。

これは経営資源が少なく新製品開発や新事業などに踏み切れなかった中小製造業にとっても同様の理屈でチャレンジできる土壌が整ったといえます。これを機会に新しいチャレンジがたくさん生まれるかも知れません。

今までとは違う商売相手が現れる

様々な業界のプレイヤーが参入してくることによって、これまでは考えられなかった相手との商売が生まれるかも知れません。例えば、ものづくりベンチャーはアイディアや技術に自信はあっても「ものづくり」に関しては素人です。長年製造業を行っている方からのアドバイスやコラボレーションを欲しているはずです。

GoogleやAmazonといった新たなプレイヤーが日本の中小企業の尖った技術を本気で探している、という情報も耳にするようになりました。こういった会社との今までになかったような取引が生まれるかも知れません。

これらの機会がどれだけ現実的なものなのか、果たしてどのタイミングで本格的に押し寄せてくるのか、知る由はありません。しかし、少なくともこういった情報にアンテナを立て、将来的にどのような打ち手を用意しておくべきなのか、ぼんやりでも良いので考えていくことが必要ではないでしょうか。

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